館長コラム 図書館の諸問題
附属図書館長 西田雅弘

 現在、図書館にはおよそ19万冊余りの図書があります。このうちおよそ9万冊が「社会科学」の図書です。日本十進分類(NDC)で言えば300番台。これに対して、100番台の「哲学」、700番台の「芸術」は2桁少なく、1万冊にもほど遠いのが実情です。
 
 経済学部だけの単科大学の図書館として当然とも言えますが、その評価は分かれます。バランスよく図書を保有することが大切という視点から見れば、これは異常な事態です。しかし、特定分野に特化した図書構成にも重要な意味があると見ることもできます。市大の図書館にはとりわけ社会科学関係が充実している、という具合です。ただし、バランスを欠いた他の分野をどうするかという問題は残ります。
 
  この問題に応えるのが、新たに始まっている下関市内四大学間の図書館相互利用です。梅光学院大学図書館には日英米の文学・語学関係、東亜大学図書館には芸術や工学関係、水産大学校図書館には水産・海事の自然科学関係、がそれぞれ充実しています。これによって、より広範な分野を網羅する蔵書総数70万冊の大図書館が出現したことになります。学生証さえあれば、相互に他大学の図書館を利用することができます。
 
 およそ19万冊余りの図書があると言いましたが、開架書架にはそのうち比較的新しいものを中心におよそ6万冊が配架されています。残りの13万冊は主に閉架書架、つまり書庫に収められています。1年間におよそ1万冊の新しい図書を購入していますから、書庫には毎年1万冊の図書が増え続けていることになります。書庫のスペースは有限です。したがって、いつかは必ず満杯になるときがきます。現在、書庫の収容能力はあと2万冊余り。つまり、2年後にはパンクしてしまう計算になります。実はこれは、図書館にとってまさに切迫した緊急の問題なのです。
 
 この書庫問題を打開するために、目下、具体的な方策を検討しています。利用者の利便性、実務上の効率性、工事による図書館への影響、予算額などから総合的に判断すると、学術センター地階の電子計算機実習室を集密書庫化する案が最も有力です。しかし、そのためには電子計算機実習室をどこかに移設しなければなりません。これはもはや図書館だけでは解決できない問題です。こうして書庫問題は大学全体に波及し、全学的な取り組みが求められる事態に至っています。(2004/3/23)