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理事長室より

東大の教育改革(2013年8月23日)

 東京大学が提唱した秋入学や4学期制などの学部教育改革が話題を呼んでいる。東大では、「入学時期等の教育基本問題に関する検討会議」が平成25年6月13日に「学部教育の総合的改革について」と題する答申(基本検答申)を役員会に提出した。この答申は「ワールドクラスの大学教育の実現のために」というサブタイトルが示すように、東大の教育の現状では、東大が目指す「世界的な視野をもった市民的エリート」の育成とワールドクラスの大学としての地位を確保することはできない、という強い危機感を踏まえた教育改革の提言である。東大とはいえ同じ大学であり、教育上の課題は本学と重なるところも多い。本学で検討中のカリキュラム改革を軸とした教学改革の参考になることを願って、基本検答申における教育改革案の要点を紹介することにしたい。

まず「現状の教育体制の諸課題」としてあげている3分野20項目のうち主なものは次の通りである。

(a)学生をめぐる課題
・何のために学び、学んだ成果を何に活かすのかという動機付けの不足
・主体的な思考・課題発見能力・課題解決能力の不十分さ
・表現力・交渉力・討議力などの不十分さ

(b)学部教育システムをめぐる課題
・予習・復習時間の確保が難しい細切れ・詰め込みのカリキュラム
・双方向の教育・体験型学習の少なさ
・伸びる学生を十分に伸ばせない仕組み
・大学での学びの全体観の提示・主体的な学修の動機付けに係る取組の不足

(c)教員をめぐる課題
・「教え授ける」(ティーチング)から「自ら学ばせる」(ラーニング)への意識転換の不足

  とくに、授業以外での学生の学習時間が非常に少ないことを指摘し、アメリカの有力大学に比べて学習時間が少なく、「学生自らが学ぶ道を見定め、主体的・能動的に学習に取り組む学部教育への改革が求められている」とする。基本検答申があげている諸課題の多くは、本学においてもそのまま当てはまる指摘といえよう。

 つぎに教育改革をみよう。教育改革にとっては、育成すべき人材像(ディプロマ・ポリシー)及びその実現を可能にする教育カリキュラム(カリキュラム・ポリシー)を明確に定めることが必要不可欠である。基本検答申では、全学レベルでのディプロマ・ポリシーを「世界的な視野をもった市民的エリートとしての高い志」の涵養とし、「育成する能力・人材」として、A揺るぎない基礎学力、先端的知への好奇心、B公共的な責任感、巨視的な判断力、C異なる文化や価値観の理解・尊重、D課題の発見・挑戦的体験への積極的姿勢、Eグローバルな思考と行動力の5要素をあげている。そして、東大の教育体制がこうしたディプロマ・ポリシーを十全に実現しえているとは言い難いとしている。本学では、程度はあるとしても東大のディプロマ・ポリシーの5要素のいくつかを満たしてしている学生はかなりの数にのぼると思われる。
基本検答申は、望ましいカリキュラム・ポリシーとして、①学びの質の向上・量の確保に資するカリキュラム、②学生の主体的な学びを促すような構成のカリキュラム、③学生の流動性の向上と学習機会の多様化を導くようなカリキュラム、④学士課程の一体性を強化したようなカリキュラムの4つをあげている。この4つに教育制度改善を加えた5つ事項について、中期目標・計画期間中(平成27年度末まで)の取組として21のアクションリストを提示した。そのうち本学にとっても参考になると考えられるいくつかを紹介しよう。

学生の質の向上・量の確保

・学生をしっかりと学ばせる仕組みの確立(学習総量の確保、成績評価の厳格化、GPA活用による学習支援、キャップ制の導入など)

主体的な学びの促進

・「教え授ける」(ティーチング)から「自ら学ばせる」(ラーニング)への転換を目指した授業の改善(少人数チュートリアル授業の導入、アクティブラーニングの普及など)
・学生の主体的な履修を支えるカリキュラムの柔軟化(進学・卒業の要件の見直しを含む)
・習熟度別授業など能力・適正に応じた教育の普及・展開(科目ナンバリング制の導入を含む)
・eラーニングの積極的な活用による教育方法の改善

流動性の向上と学習機会の多様化

・グローバルリーダー育成プログラムの構築と展開
・学士課程全体を通じた特別休暇制度の活用
・サマープログラムの開発等による多様な学習機会の飛躍的拡充

学士課程としての一体性の強化

・大学での学びを俯瞰する全学的な導入教育の強化
・学士課程の一貫性の観点に立ったカリキュラムの順次性・体系性の見直し

 基本検答申は、さらに「学事暦の見直し」や「今後の改革の実行に向けて」について提言し、最後に、役員会に対して、提言に基づく改革を迅速かつ確実に実施していくことを強く求めて結んでいる。

 大学の教育改革に関しては、それぞれの大学がその位置と在り方、歴史と現状を踏まえて改革案を策定し、実施していくことが求められている。中教審答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」(平成24年8月28日)は、学士課程教育の質的転換への方策を示している。この中教審答申や東大の基本検答申をみても、日本の大学及び学生の現状からみて、「教育内容・方法」に関しては、程度の差こそあれ、ほぼ同じ方向を目指しているといえよう。なすべきことは、それぞれの大学が自らの教育の現状を深く分析して、実現可能な高い水準の目標を目指した改革案を策定し、それを「迅速かつ確実に実施していくこと」に尽きる。本学の教学改革が「迅速かつ確実」に実施されることを強く願っている。