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理事長室より

入学式で考えたこと(2014年4月7日)

 4月は実にあわただしい季節です。「ゆく年くる年」になぞらえれば、「往く人来る人」でしょうか。先月の3月25日に卒業生を送ったばかりでしたが、4月4日の入学式で新入生を迎えました。また、3月31日に退職される教職員を送った翌日の4月1日には新任の教職員を迎えました。4月は新4年生にとっては就職内定が決まる大切な時期になります。ここでふれた多くのひとたちのご健勝とご活躍を願っています。
 さて、入学式ですが、各大学の学長による告辞等は新聞、大学HPなどで紹介されています。各学長の体験に裏づけられ、時代への洞察を踏まえた素晴らしいものばかりです。私も学長として、あるいは学部長として新入生に対してお祝いや激励の言葉を述べてきました。それらは立派とはいえないまでも、自分なりの知恵を絞ったものでした。しかし、改めて考え直してみますと、本当に新入生に対して適切な言葉だったのだろうか、自己満足ではなかったのかと反省させられます。学長としての入学式・卒業式の告辞・式辞は大学のHP上で公表しておりましたので、見ようと思えばだれでも見ることができるはずでした。大切なことであれば、繰り返し述べることもできます。ですが、どうも学生たちの心には届いていなかったように思えてなりません。なぜか。残念ながら、学生たちの心に響く言葉ではなかったからだ、としか言いようがありません。
 どうしてこんなことを考えたかというと、最近読んだ文章で気づかされたことがあるのです。先日、藤原書店編集部編『内田義彦の世界』(藤原書店、2014年)を友人からご恵与いただき、読み始めたところでした。「今、なぜ内田義彦か」という座談会で、中村桂子さんが「私が知りたいのは「生きるってどういうこと?」ということなんです。自分も生きものだから、「生きる」ということを知りたい」、「そのような疑問に対して、「こうやって考えればいいんだよ」と、この本(内田義彦『生きること 学ぶこと』藤原書店、2000年)が言ってくれたんです」と発言しているのを読んで、ああ、ぼくの言葉は「生きること」に触れていなかったのだ、とふに落ちたのです。そして、この本で最初に読んだ、プロローグ「内田義彦 「生きる」を問い深めて」に立ち返ってみると、山田鋭夫さんが「人間として生きる」ことこそが、「内田義彦の学問と思想の原点をなすもの」と書いていました。私も内田義彦はずいぶん読んだつもりでしたが、このように原点をとらえることはできませんでした。読みが浅かったということです。
 実は、私が会社を辞めて「学問」の道を志したのは、当時のいまという時代で自分とは何なのか、何をしたいのか、という自分さがしの旅でもあり、そのことは「生きること」の意味を問うていたはずでした。晩学だったので、さまざまな本をずいぶん読んだし、自分の研究の意味を考えたりしましたが、やはり本は読み漁りであり、研究の意味づけも独りよがりにすぎなかったといえます。古稀をすぎた今になって、自らの言説を「生きること」とかかわらせて考えていきたいと決意を新たにした次第です。「理事長室より」もそんなつもりで書き続けるつもりですので、遠慮のないコメントを賜ればありがたいことです。