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理事長室より

朴成日先生(2014年7月1日)

 朴成日先生は青島大学法学院副教授で、昨年(2013年)10月から本年3月末まで本学の客員研究員として研究に従事された。また青島大学図書館勤務の朱蓮花夫人も1月から来関され、ご夫婦での下関滞在となった。この間、先生は精力的に研究に取り組み、関係学会に参加するとともに、論考「中国における老人扶養と法整備について」(『下関市立大学論集』第57巻第3号、2014年1月)を発表した。また論考「中国東北の新たな経済発展拠点づくりと延龍図市―吉林省延辺朝鮮族自治州における都市再編をめぐって―」(藤井勝・高井康弘・小林和美編著『東アジア「地方的世界」の社会学』晃洋書房、2013年6月)も公表している。朴先生との下関での友好関係の証としてこの2つの論考を紹介することにしたい。
 朴先生が着任の際に、私のところにも挨拶に来られた。いろいろなお話をしたが、中国の高齢者問題についてもお尋ねした。それに対する朴先生の回答が前掲の「中国における老人扶養と法整備について」である。このテーマは先生の専門ではないが、私の質問に触発され、先生自身のご両親の扶養問題、また深刻さをます中国の老人扶養問題への関心から短期間に集中して取り組んだ研究成果であり、本学地域共創センターの「共創サロン」(2014年1月29日開催)においても報告された。本論文の概要は次の通りである。
 中国における従来の老人扶養は、都市部では国家・企業による退職金・離職金(養老金)、農村部では土地を財源とする家庭扶助、子女による老後の介護が基本であった。その後、市場経済の進展にともなって、1990年代から「老人扶養問題」が重要な社会問題となってきた。その要因は、(1)「老人」(60歳以上の定年退職者)の増加、(2)「独立企業」の退職金の減額、(3)「4・2・1」型家庭(「一人っ子同士夫婦」が四人の高齢者の扶養と自分たちの一人っ子の子育てに当たる家庭)の急増などである。
 このような状況に対応するために老人扶養の社会化が推進された。基本養老保険において、財政補助の増加、投資主体の多元化(従来の国家、集体に加えて企業、個人に拡大)、扶養対象の拡大、助成金と募金の多様化などに取り組んだ。さらに、扶養義務の違反者に対する罰則を強化した。なかでも老人扶養施設の整備に努めているが、朴先生の調査によれば、入所費用の自己負担が重く、空室もある状況である。また、老人に対する生活費の支給もなされているが、必ずしも十分ではなく、親族内で金銭を媒介にした老人扶養を行うケースも多いという。朴先生は、今後も市場化した家庭・親族による扶養と扶養に係る罰則規定との組み合わせによる対応がいっそう重要になろう、としている。
 つぎは、「中国東北の新たな経済発展拠点づくりと延龍図市」である。この論文が収録されている『東アジア「地方的世界」の社会学』を朴先生より恵与された。この本は神戸大学を中心とした研究チームが、東アジアの地方社会を、村落―町(小都市)関係を基軸とした、一つの独自な「世界性」をもつ「地方的世界」として捉え直して、10の調査地点の事例研究及びその前提となる認識・課題の解明に取り組んだ研究成果である。朴論文は10の事例研究のうち吉林省延辺朝鮮族自治州を対象として都市再編を分析したものである。論文タイトルにある「延龍図市」とは、現在の延吉・龍井・図們3市の合併により実現予定の「延龍図市」のことである。本論文は、この「延龍図市」に近隣の県を統合して「大延辺」を実現し、延辺地域の民族経済の発展、生活環境の改善、朝鮮民族人口の回流を目指すという大構想計画について、この地域の現状を踏まえて検討している。
 本計画は2006年から始まり、交通・通信建設は順調に進んでおり、金融では延龍図地域金融同行化が基本的に実現し、また合弁・外資企業の開業も進んでいる。これに対して行政改革に関しては、「延龍図」市党委員会が成立し、党と行政の連立政府が実現しているが、「延龍図」市は正式には発足していない。今後は延龍図一体化都市建設により、工業集中地区と開発区を延吉市に集中させ、延龍図市の求心力を高め、新科学技術産業及び貿易促進基地としての国際競争力を高めようとしている。課題としては、本計画発足の要因のひとつでもある自治州における朝鮮民族の流出状況には歯止めがかかっていないこと、日本海を活用した貿易の拡大、中国・日本・ロシア・北朝鮮・韓国・モンゴルなど多国間の活発な交流などをあげている。最後に「新たに発展した自治州の出現を、朝鮮民族の大勢の人々が期待し、願っていることは間違いない」と論文を結んでいる。
 なお、本書には、現代中国における「地方的世界」との比較参照軸として青島市の「社区」(communityの訳語)を取り上げた論文、佐々木衛「現代中国の地域社会をどの様に捉えるか」も収録されている。

 帰国直前に朴先生ご夫妻と送別の宴を設け歓談することができた。また返礼ともいえる朱夫人手作りの水餃子をいただき、美味しく賞味させていただいた。
 本年は下関・青島友好都市締結35周年にあたっており、その記念行事が青島において7月11日、12日に開催される。私も下関市行政訪問団の一員として参加することにしている。12日は下関・青島ゆかりの会が催されることになっており、朴先生はじめ本学との学術交流に尽力された青島大学の先生方との再会を楽しみにしている。
 なお、本学と青島大学とは1989年10月に友好交流協定を締結しており、ちょうど25周年を迎えることになる。今後ますます両大学の交流関係が深まることを願っている。