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理事長室より

はなちゃんのみそ汁(2014年8月5日)

 朝日新聞7月10日付「天声人語」に下関市立大学同窓会23期剣道部の安武信吾氏の事が掲載されました、との同窓生から連絡があり、私も「天声人語」を読みました。たいへん感動的な内容であり、記事のなかで紹介されていた『はなちゃんのみそ汁』を読むことにしました。安武信吾・千恵・はな『はなちゃんのみそ汁』(文藝春秋、2012年)は、下関市内の書店には在庫がなく、7月16日にアマゾンで注文しましたが、発送予定は1~2週間後とのことでした。よく売れており在庫探しに時間がかかるのかと思いましたが、7月24日の発送でした。受け取ったのは、2014年7月25日第16刷発行で、在庫切れで増刷された版でした。早速、一気に読み切りました。私の読み取ったことは次の通りです。

 2000年7月、信吾さんのフィアンセ千恵さんは乳がんの告知を受けた。千恵さんは乳がんの手術を決断し、手術、抗がん剤の治療を経て、2001年8月おふたりは結婚式をあげた。あきらめかけていた赤ちゃん、はなちゃんが2003年2月に誕生し、小春日和のような平穏な生活を送ることができた。その後、がんが肺に転移したが、代替治療などによって千恵さんの肺がんの影も消えて、玄米とみそ汁を中心とした玄米和食の食事が家族の健康を守ってくれた。がんの検診を怠っていたが、はなちゃんの保育園継続の手続きために受けた2006年10月の検査で、がんが再発し全身に転移していることが分かった。すでに手術の選択肢はなく、つらい抗がん剤治療を受け入れ、玄米生活などを継続しながら必死の闘病生活を送り、病状は一進一退を繰り返した。千恵さんは2008年2月に5歳の誕生日を迎えたはなちゃんに料理と家事を教え始めた。「はなちゃんのみそ汁」の誕生である。2008年のゴールデンウィーク明けから千恵さんの体力が急激に落ち、7月11日千恵さんはなくなった。33歳という若さだった。本書は、千恵さんの37歳の誕生日(2012年1月28日)に、信吾さんとはなちゃんは、友人、知人に支えられ、天国の千恵さんと対話しつつ、生き抜いていることを報告して結ばれている。
 私はこの本を読んで、がんに立ち向かう千恵さんと家族の姿に心打たれるとともに、がん治療の適切な選択の難しさ、代替治療の評価、定期的ながん検診の重要さ、家族・友人との絆の大切さなどいろいろと考えさせられた。

 この「はなちゃんのみそ汁」はテレビドラマ化が決まり、キャストは、安武信吾・・・大倉忠義、安武千恵・・・尾野真千子、安武はな・・・芦田愛菜ほかで、8月30日、日本テレビ系列「24時間テレビ37」の中で放映され、時間は21時頃とのことです。
 また、安武さんは、ブログ「早寝早起き玄米生活」、Facebook、Twitterをネット上で発信しています。

 安武さんは、西日本新聞社に勤務しており、本学で行っている「市大キャリアスタディ」という催しに講師として参加していただいたことがあります。この「市大キャリアスタディ」は、平成22年度に採択された、文部科学省による大学生の就業力育成支援事業の一環として始まり、現在まで継続して実施しています。安武さんには平成22年度の第2回目のキャリアスタディ(平成23年1月実施)に参加していただきました。この時のキャリアスタディについて、当時の「学長日誌」で紹介していましたので、やや長文になりますが、転載することにします。

「第2回キャリアスタディの開催」(学長日誌2011年1月31日)
 1月29日(土)に本学で12名の卒業生を招いて第2回キャリアスタディが開かれました。このキャリアスタディは、本年度採択された、大学生の就業力育成支援事業「マイスター制と共創力教育による就業力育成」の一環として、キャリアセンターが企画したものです。第1部は市大OBOGと在学生のトークセッション、第2部は会場を移しての懇親会でした。

 第1部は、まず卒業生に自己紹介、現在の仕事、就活などについて語ってもらい、後半はそれを踏まえて学生の質問に応えるという方式で、卒業生6名ずつの組で2回のトークでした。学生たちは先輩の話に熱心に聞き入り、後半では活発な質疑応答がありました。
 卒業生の「現職」は、メーカー3、金融2、アパレル2、公務員2、新聞社1、大学職員(前職航空会社グランドスタッフ)1、NPO法人・院生1に分かれますが、仕事内容は様々で、日本の職の縮図を見るようでした。

 皆さんの話をまとめてみますと、学生時代のことでは、すべての先輩が充実した学生生活を送ったということです。留学あるいは外国体験者が多く、興味を持った授業・演習、サークルやバイトなど徹底して取り組んだ経験を持っていました。また仕事への取り組みでは、目標をもってチャレンジすることを大切にしているとのことでした。
 就活に関しては、大切なこととして、異口同音に「自信」をあげました。自分に自信をもつこと、自信の持てることを発見すること、自信のあることを的確に伝えることなどです。就活の成功要因としては、何よりも「コミュニケーション能力」だという指摘でした。円滑なコミュニケーションのためには、自分に正直であること、相手の話を素直に聞くこと、相手に関する情報を集めることなどを大切にしてほしいなどアドバイスがありました。これらは体験に裏打ちされていることで、先輩たちはいずれ劣らぬコミュニケーション能力の持ち主で、今回のトークセッションでも説得力のある発言でした。
 また就活のこつでは、必要とされる能力、例えば語学力を高めるには時間的な余裕がないので、現状の資質・能力で就活を戦う方法を編み出すしかないこと、また長所を最初から主張すると、粉砕される可能性が大きいので、もっとも打ち出したい長所は抑えておき、囲碁将棋の「嵌め手」のように、相手を長所に誘導するとよいなど、就活戦争を勝ち抜く具体的な知恵の伝授もありました。
 第1部の最後に、パナソニック電工勤務の先輩が、パナソニックの大坪文雄社長がある大学で行った学生向け講演のエッセンスを紹介してくれました。就活にとっても今後の生き方にとっても大変参考になる内容でした。
 第2部は、食事をしながら和やかな雰囲気のなかでの懇親会でした。6つの丸テーブルに卒業生、教職員が2、3名ずつ座り、学生たちは自由に場所を決め、フリーに懇談しました。学生諸君はそれぞれ話をしたい先輩を選んで席を確保し、その後も席を移動しつつ、先輩方と熱心に会話を交わしておりました。とくに希望する会社・業界勤務の先輩、公務員の先輩などをつかまえて、詳しく職務や就活方法などをめぐって「質疑応答」が繰り返されたようです。私個人に関しても、専門分野のこと、転職のことなどいろんな質問をぶつけられて、たじたじしつつも、卒業生や学生との会話を楽しみつつ、いろいろと教えられる場となりました。なお、この懇親会には本学の後援会からご支援を受けました。この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

 今回のキャリアスタディに参加の学生は、第1部約60名、第2部30名でした。参加の学生にとっては、頼りがいのある先輩から有意義なアドバイスがたくさんあり、これからの就活にとって勇気を受け取ったことでしょう。就活にとっても目標をしっかり持って、失敗を恐れず、根粘り強く努力することが肝要です。諸君の努力が実を結び、目指す企業の内定を勝ち取ることを切望しています。またキャリアセンターはこれからも学生の就活支援や就業力育成のために様々な計画をたてています。学生諸君がこれらに積極的に参加することを希望します。
 先輩方は、後輩たちの役にたてばということで、ご多忙の中にもかかわらず、この催しに各地から駆けつけてくれました。心から感謝申し上げますとともに、これからもよろしくお願い致します。

 最後になりますが、佐藤剛史編『大学では教えてくれない大学生のための22の大切なコト』(西日本新聞社、2010年、800円+税)を学生諸君に推薦します。この本は、大学生の生活にとって基本的なことをたいへん分かり易くまとめたものであり、就活に取り組んでいる学生にとっても有益だと思います。なお、この本の編集にあたったのは、本学の先輩で、今回の催しにも参加されました。

 以上が「学長日誌」ですが、最後に紹介した佐藤剛史編『大学では教えてくれない大学生のための22の大切なコト』は、安武さんが編集をされたとのことでした。この時の卒業生のうち新聞社1が安武さんで、その話は、新聞記者として、毎日、朝早くから晩は遅くまで取材などの激務が続き、ついに体調を壊して入院を余儀なくされた、ようやく現場復帰したが、規則正しい食事の大切さを痛感した、ひとり暮らしの多い学生たちも食事に気を付けるように、という内容だった、と記憶しています。今から考えれば、この時には、すでに奥様をなくされ、はなちゃんと生活がはじまっていたことになります。