ホーム > 大学概要 > 理事長からのメッセージ > 理事長室より

学長からのメッセージ
理事長からのメッセージ
理念と歴史
3つのポリシー
教員研究業績・教員評価・授業評価
教育情報の公表(法定事項)
法人情報
シンボルマークとスローガン
教育活動
国際交流
卒業後の進路
広報
同窓会

理事長室より

代ゼミ問題と大学入試改革(2014年9月8日)

 大手予備校「代々木ゼミナール」は8月25日に、来年度から全国27校のうち20校を閉鎖すると発表した。その背景には、代ゼミの予備校としての経営不振がある。代ゼミの職員によると、現在の学生数は、ピーク時の1割以下の数千人程度だという(朝日新聞DIGITAL2014年8月29日)。
 多くの論評によれば、代ゼミは中堅私立大学志望者、とくに文系志望者を主なターゲットとし、有名講師と駅前校舎などを売りにして、浪人生の大量獲得によって発展し、3大予備校の一角を占めてきた。ところが、この間に大学数と学生数が増加する中で、18歳人口は漸減傾向をたどり、すでに大学全入の時代となっている。また、浪人することの機会費用は高く、長く続いた経済の低迷状況の中で、高校生の現役志向が強まってきた。学校基本調査によれば、1991年度に全国で約29万4千人いた高卒浪人生が、2014年度は約8万5千人にまで減少した。現役と浪人の比率は、1991年度は75.4%と24.6%であったのが、2014年度には88.2%と11.8%となっている。高校生の現役志向が顕著に見て取れる。
 こうした受験市場の動向の中で、代ゼミのターゲット層は確実に縮小して現在に至っている。他方、3大予備校の駿台予備学校、河合塾は難関校及び理系志望者を主なターゲットとし、志願者数と学生数を維持しているという。いずれにしても代ゼミだけでなく、各予備校ともこのような状況への対応と新たな事業展開を迫られているといえる。
 さて、大学全入状況と高等教育への社会の期待は、高校教育、大学入試、大学教育などに新たな対応を迫っている。教育再生実行会議は2013年10月に「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」(第4次提言)を公表した。提言は添付された参考資料で、高校生と大学生の学習の現状について、高校生の学校外における平日の学習時間は、1990年から2006年までの偏差値別の推移をみると、ボリュームゾーンである中間層で大きく減少している。また、大学生の学修時間の日米比較では、日本は1-5時間が57.1%であるのに対して、米国は11時間以上が58.4%となっており、明らかに日本の学生の学修時間は米国に比べて少ないことを指摘した。これらのことは、多くの高卒大学生の学力・知識不足及び大学生の低い学習姿勢を示しており、大学教育にとって深刻な影を落としている。

 このような現状を踏まえて、提言は、大学入試が高校や大学の教育に大きな影響を与えており、高校教育、大学教育、大学入学者選抜の在り方について、一体的な改革を行う必要があるとした。そして、現在の入学者選抜の問題点として、知識偏重の1点刻みの試験のみによる選抜や学力不問の選抜を指摘した。また、現在の大学入試センター試験については、1点刻みの合否判定を助長しており、受験生にとっては、試験結果が志願先の選択に直結するため大きな心理的圧迫になっている。運営側では出題科目の準備、試験実施の運営負担など限界に達しているとの指摘もある、とした。
 このような状況への対応として、提言は、大学入学者選抜について、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定するものに転換するように求め、学力水準の達成度の判定とともに、面接、論文、高校の推薦書、生徒の活動、大学入学後の学修計画案等を評価するなど、多様な方法による入学者選抜を実施することを提案した。
 そして、学力判定のための新たな試験として、「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」と「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」という二つの達成度テストの導入と提言内容を発表し、具体的な実施内容については中央教育審議会等で検討するとした。これを受けて、中央教育審議会は、高大接続特別部会で検討を進め、2014年6月20日に中教審答申(案)を取りまとめ、公表した。その概要はつぎの通りである。
 「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」については、(1)目的は高校教育における基礎的な学習の達成を把握し、証明及び活用することであり、大学等が推薦・AO入試で基礎学力の証明や把握の方法の一つとして用いることを可能とする。(2)対象者は高校生で、学校単位での受験又は個人単位での受験とする。(3)内容は、実施当初は国語、数学、外国語、地理歴史、公民、理科を想定し、成績は段階で示す。(4)形態は多肢選択方式を原則とし、一部記述式も検討する。(5)実施方法は在学中に複数回(例えば年2回程度)受験機会を提供し、高校2・3年での受験を検討する。実施場所は、高校又は都道府県単位で会場を設ける。
 「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」については、(1)目的は大学教育を受けるために必要な基礎的・基本的な知識・技能を把握し、活用することである。(2)対象者は大学修学志願者を主たる対象とする。(3)内容は「教科型」「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題する。実施状況などを踏まえて、「合教科・科目型」「総合型」の部分の拡大を検討する。(4)出題・回答方式は、当面は多肢選択方式による。記述式問題の出題は、CBT方式の導入に関する研究開発と合わせて検討する。(5)実施回数は年複数回とし、当面1回の試験を1日で終えることを前提に、年2回実施が適当である。(6)成績表示は段階別表示等による。

 二つの達成度テストは、「基礎レベル」は、イメージ的には現在小中学校で行っている全国学力テストの高校版と考えられる。また、「発展レベル」は、現在の大学入試センターテストに代わるものである。達成度テストの内容はまだ固まっておらず、様々な議論がなされているところであるが、実施の時期は中教審答申(案)では、早ければ平成33(2021)年度入試から段階的実施を目指すことが適当としており、現在の小学6年生が最初の受験生となる。
 新しい大学入学者選抜が実施されれば、高校生や高校にとってはかなりの負担となる可能性が高い。大学にとっては達成度テストの活用の仕方、現行の入試センターテストとの接続のあり方を決めることになる。また、能力・意欲・適性を多面的・総合的に評価・判定する方法の研究開発も必要になる。いずれにしろ、新しい入学者選抜は、高校教育、大学教育、大学入学者選抜の在り方に極めて大きな影響を及ぼすことは間違いないところであり、十分な検討を経て、稔りある成果のあがることを願うばかりである。

 教育再生実行会議の第4次提言は、大学が養成すべき人材として、例えば、(1)グローバル人材、(2)知識基盤社会を担う人材、(3)イノベーション創出を担う人材、(4)様々な分野における専門人材、(5)地域社会の発展を担う人材をあげ、そのための教育機能の強化を図ることを求めている。各大学はそれぞれの教育理念・目標などに基づいた教学改革に取り組んでいるが、事例はいずれももっともではあるが、各大学にとっては大きく、重い課題である。このような社会的な要請に応えることが、社会的な評価につながり、それに応じて大学が選別されていくことになる。本学が社会から高く評価される大学であるためには、より一層の教学改革に取り組み、本学の存在感を高めていく必要があることを改めて痛感した。