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理事長室より

風が吹けば桶屋が儲かる?(2014年9月16日)

 「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉がある。江戸時代に由来する話で、私は落語で聞き知った。そのつながりは、風が吹く→土ほこりが立つ→目を病む人が多くなる→失明して生計のため三味線を習う人が増える→三味線の胴に張る猫の皮の需要が増える→猫が減少し、鼠が増える→鼠は桶をかじる→桶の新調や修理が増え、桶屋が儲かる、という因果関係である。現実には、風が吹いて桶屋が儲かる確率は極めて低いという結果を算出した人もいる。現在でも、〇〇→・・・・→儲かる式の政策が実施されることはよくあるが、予測が困難な 要因がからんでくるので、結果が儲かるのではなく、儲からないこともある。
 9月9日の東京外国為替市場で一時1ドル=106円39銭まで円相場が下がり、リーマン・ショック直後の2008年10月以来、約5年11か月ぶりの円安ドル高となり、その後も円安基調が続いており、今後の日本経済への影響について論議されている。
 アベノミクスの一環として、2013年4月から黒田東彦日銀総裁によって実施された異次元の金融緩和は、単純化すれば次のようなメカニズムで日本経済の再生を目指すものであった。すなわち、異次元の金融緩和→円安誘導→輸出拡大&輸入価格上昇→企業業績の回復&デフレの克服→景気回復というシナリオである。さらに、景気の回復・株高→大企業の収益増加・富裕層増加→低所得層の所得増という、いわゆる「トリクルダウン」(trickle down 徐々に流れ落ちる)現象も期待された。
 確かに異次元の金融緩和→円安→輸出拡大→大企業(とくに特定の輸出企業)の業績回復は進展したといえる。しかし、円安→輸入価格の上昇→物価上昇(とくに消費者物価)は想定どうりであったが、物価上昇は消費税率引き上げも加わって、家計圧迫→消費停滞→景気回復の遅れという逆方向のメカニズムも働いた。また、企業の業績回復は賃金上昇・雇用拡大・設備投資の増加とは必ずしも結びついておらず、「トリクルダウン」は未だしである。また円安→輸出増額<輸入増加→貿易収支悪化→景気停滞という状況も生じている。
 円安が貿易収支悪化を招いていることについて、もう少し詳しくみてみよう。円安は輸出型産業にとって円ベースで売上高の増加に寄与したが、円安効果は、海外の需要要因に規定されて輸出数量にはあまり表れておらず、輸出金額の伸びはさほど大きくはない。これに対して、輸入面では、石油をはじめエネルギー類、製造業のための生産財、輸入依存の生活消費財などの輸入数量は大きな変化はなく、輸入金額は顕著に増加した。その結果貿易収支は赤字となったのである。このような事態の背景には、製造業において、円高期にコストの低い外国に生産拠点を移したことがあり、円安効果を限定的にしている。
 今回は、異次元の金融緩和の影響について、いくつかの経路について検討したが、円安→・・・・→日本経済の再生というシナリオは、中間に様々な要因が働いており、単純に「風が吹けば・・・・」のような話は成り立たない。経済は生き物であり、予測を越えることがしばしば生じる。今後の日本経済については、経済ウオッチャーの予測も様々であるが、金融緩和も含めた経済運営が、豊かな日本経済と国民の幸せとの両立という視点に立って進められることを願うばかりである。