ホーム > 大学概要 > 理事長からのメッセージ > 理事長室より

学長からのメッセージ
理事長からのメッセージ
理念と歴史
3つのポリシー
教員研究業績・教員評価・授業評価
教育情報の公表(法定事項)
法人情報
シンボルマークとスローガン
教育活動
国際交流
卒業後の進路
広報
同窓会

理事長室より

「楽園のカンヴァス」(2014年9月29日)

 読書の秋である。新聞などでも読書案内がなされている。秋の夜長を読書で楽しむことは至福のひと時ともいえる。私も書店やアマゾンなどで何冊か本を購入して読んでいる。原田マハ『楽園のカンヴァス』は新潮文庫で読んだ。「理事長室より」を読んでくれている知人から、それを読んで感じたことか、「疲れた気持ち イライラした気持ちが 和らぐかもしれません」として、この本を推薦してくれた。本の帯には「これまでに書かれたどんな美術ミステリーとも違う」(高階秀爾)と紹介されている。
 この本は、アンリ・ルソーの傑作「夢」(1910年作、ニューヨーク近代美術館所蔵)を巡るミステリーである。主人公の早川織江(大原美術館の監視員)とティム・ブラウン(ニューヨーク近代美術館のアシスタント・キュレーター)はともにアンリ・ルソーの研究者である。ふたりは伝説のコレクターであるバイラーから彼のスイスの大邸宅に招かれ、「夢」に酷似した作品「夢をみた」の真贋鑑定を求められた。その方法は、作品と謎めいた古書を読み解き作品の真贋を判断し、その根拠となる作品講評をバイラーが判定し、勝者に作品の取り扱い権を譲渡するという奇妙なものであった。
 本書はミステリーであり、そのミステリアスな展開と意表をつく結末を紹介するわけにはいかないが、鑑定のキーワードは「作品に画家の情熱があるかどうか」である。興味ある方には読んでいただきたい。また、美術や美術館に関心を持っている方には一読を薦める。

  原田マハについては本書で初めて知った。公式サイトの「略歴」によれば、1962 年東京都生まれ。東京都在住。 関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。 伊藤忠商事株式会社、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターとなり、2006年より作家となる。2005年『カフーを待ちわびて』で第一回日本ラブストーリー大賞受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第二十五回山本周五郎賞受賞、とある。「自伝的プロフィール」は、暦年ごとに履歴を記載しているが、2006年に「3月、「カフーを待ちわびて」で小説家デビュー。以後、御存じの通り。ここまで書いて、わが人生のキーワードは「度胸と直感」だとわかった。」との記述で結んでいる。「以後、御存じの通り」ではないが、確かに「度胸と直感」で起伏のあるこれまでの半生を自らの手で切り開いてきたことはよくわかる。

 このような作者の経験が本書のリアリティを支えており、美術や美術館にはまったくの門外漢である私にとっても、美術評論や美術館の舞台裏の世界を垣間見るようで、興趣を持ちつつ楽しく読むことができた。そして、「疲れた気持ち イライラした気持ちが 和らぐ」ことができた。感謝申し上げる。