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理事長室より

「スマホか本か・読書再論」(2014年12月15日)

 前回の「理事長室より」では、「書を捨てよ」と題して、寺山修司の『書を捨てよ、町に出よう』を取り上げた。今回は、ご覧になった方も多いと思うが、NHKのクローズアップ現代「広がる“読書ゼロ”~日本人に何が~」(2014年12月10日放送)を取り上げる。

 番組では、まず1か月に1冊も本を読まない人が2人に1人であり、本を読まない大学生が4割を超えたことを確認する。帝京大学図書館では4年前には約17万冊あった図書の貸出数が毎年1万冊ずつ減少しているが、その原因にはスマホの普及があるのではないかと関係者は指摘する。
 ついで、筑波大学図書館で行った実験が紹介された。対象学生は1日の読書時間がゼロの学生4人と本を読む学生2人で、学生にテーマを出してレポートを作成するという実験だ。テーマは「英語の早期教育」で、トピックを箇条書きにし、論旨と意見を明記して、1時間で1500字以内にまとめる、図書館内の書籍やインターネットを使用してもよいというレポートである。読書ゼロ派のレポートは、テーマに関連する情報をネットで検索し、様々な情報を整理・収集し、それらを手際よくまとめてレポートを作成した。そのレポートは、論点が多様であり、意見も簡潔にまとめられているが、多様な論点と意見の関連性はなく、意見の論理的展開が弱く、自分の意見が見えなくなっている、という評価を受けた。他方、読書派は、ネットの検索も活用したうえで、テーマに関係が深いとみられる本を図書館で読んでテーマを絞り込み、本も参考に情報を収集して、自分の意見をまとめた。その評価は、ネットの膨大な情報のなかから、文献をたどって考えを深め、自分なりの意見を展開しており、テーマの掘り下げもできている、というものだった。実験の結果、読書の効用は、テーマに関して新たな話に展開していく、新たな知識を発見することにある、と結論づけられた。
 最後に、ジャーナリストの立花隆の「読書論」が展開された。立花は、スマホの向こうにネットを通して、ほとんど人類が持っている知識の全体があり、引き出し方いかんでどんな情報でも取れるとして、スマホが問題だという議論はなりたたない、そこからどういう情報を拾い上げて、どういう自分なりの脳を創り上げていくかが大事だ、と主張する。その上で、ネットだけでは掘り方が浅くなる、もっと深く掘りたいと思うときは、本や他の手段を通して、より深い情報が必要になるステージがくる、と指摘する。
 また、立花自身の若い時の知的形成にとって、何が役立ったかという、司会の国谷裕子の問いかけに対して、立花隆は、間髪をいれずに、それは圧倒的に本を読む経験であると応じた。そして、本はひとまとまりの知識であり、本を読むことによって、本に封じ込められていた知識を獲得できる。人間の頭脳は「知情意」の総合的な構成物であり、本は「知情意」を追体験でき、そこから学習することができる総合メディアである、とする。その上で、思考力を鍛えるには、本を読むだけではなく、書くことが一番役に立つ、と断言した。

 さて、本を読まない学生諸君に読書の楽しみを感じてもらうために、各大学では様々な試みを行っている。そのひとつに大学図書館で学生に読書を勧める「学生選書」がある。学生選書の方法にはいろいろあるが、例えば大型書店で図書館に置いてほしい本を学生が選び、大学に持ち帰り、あるいは運んでもらい、一定の手続きを経て購入し、「学生選書コーナー」に配架するという「学生選書ツアー」がよく知られている。
 本学でもいくつかの選書方式があるが、学生に関しては専門演習での研究・卒論作成に必要な書籍の購入希望を申し込む方法を採っている。また、とくに専門演習に限らず、学生が希望する本の購入を申し込むことができるが、まだまだ十分に活用されていないようである。
 また、教員や図書館運営委員会による推薦方式もある。教員による推薦図書は、往々にして「学生目線」というよりは、「教員目線」になりがちで、学生として当然読んでおくべき本を推薦することが多い。「学生が本を読まない」と嘆く現状にマッチした選書と言い難いケースもある。私がかつて勤務した大学では、「学生に薦める本」という小冊子を毎年学生に配布していたが、薦める本は「学生として当然読んでおくべき本」がほとんどであり、学生にはあまり響かなかったように思う。本学の図書館運営委員会による選定では、教員だけでなく、図書館職員による推薦も行われている。現場の力の活用といってよい。図書館職員による推薦図書も、選書コーナーに並べられ、学生によってよく借り出されているという。

 最後に、読書とは直接関係はないが、マンガの神様・手塚治虫の言葉を学生諸君に届けることにしたい。手塚治虫は、なくなる3か月間に、ある中学校で行った「3つの贈り物」と題する講演で、中学生に3つのメッセージを贈った。「1つ 皆さんはやじ馬になって欲しい。何でもかんでも好きなことを全部とにかくかじって欲しいんです」「2つめは 皆さんが今までにうけた あるいは これからうけるであろう 一番大きなショックな出来事を一生大事に持っていただきたい。きっと役に立つ」「3つめに 命を大事にしましょう」の3つである。大学生にとっても参考になる手塚治虫からの贈り物といえよう。なお、この手塚治虫の講演については、ザ・プロファイラー「手塚治虫 マンガの神様は究極の欲ばり」(NHK BSプレミアム、2014年11月12日放送)による。