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理事長室より

「判断の基準」(2015年2月12日)

 人間の人生は、様々な局面における自らの判断による意思決定の帰結するところであるといえる。おそらく多くの人が何らかの基準を設けて判断していると思われるが、私の場合はどうだろうか。自らの体験と先人の知恵を踏まえて判断してきたように思える。そこで、今回は私にとっての先人の知恵として2つの事例を紹介することにしたい。

 まず、渋沢栄一である。渋沢栄一『論語と算盤』(角川ソフイア文庫、2012年)から事柄の判断にかかわるいくつかの言葉を拾い上げてみる。渋沢は天保11年(1840)に武蔵国榛沢郡血洗島村(現 埼玉県深谷市血洗島)に生まれ、昭和6年(1931)に死去した。日本資本主義の父とも称された実業界のリーダーであり、その波乱に満ちた半生は、城山三郎『雄気堂々』(新潮文庫など)に活写されている。『論語と算盤』は、渋沢が折にふれて語り『龍門雑誌』(渋沢を慕う経営者などが明治20年頃に設立した龍門社が発行した月刊誌)に掲載された文章から91篇を選び10項目にまとめたものである。以下、事柄を判断するうえで参考になると思われるものをランダムに摘記した。
・論語=仁義道徳と算盤=利殖とは、よく対立すると考えられているが、渋沢は一致すべきものと考える。そして、真正の利殖は仁義道徳に基づかなければ、決して永続するものでないと断言している。また、曾子作の『大学』には「徳は本なり、財は末なり」とある。
・人物観察法の基準としては、行為、動機、満足の3拍子が揃って正しくなければ、正しい人であるとは言いかねる。
・事柄に対しては、まず如何にすれば道理にかなうかを考え、つぎにその道理にかなったやり方をすれば国家社会の利益になるかを考え、さらにどうすれば自己のためにもなるかを考える。自己のためというよりは、社会のためという観念の方が勝っている。
・七十の坂を越した今日といえども、私(渋沢)の信ずる所を動かしこれを覆そうとする者が現れれば、私は断乎としてその人と争うことを辞せぬ。
・人として世に処するに際し、常識が必要である。善悪是非の識別、利害得失の鑑定のためには、智情意の三者が各々権衡を保ち、平等に発達した完全な常識が必要になる。
・「事を急激に決せず、慎重の態度をもって、よく思い深く考えるならば、自ずから心眼の開くもの」がある。「この自省熟考を怠るのは、意志の鍛錬にとって、最も大敵である」。
 これらの言葉からは、幕末・維新の激動期を生き抜き、官を辞して民の商工業の発展をリードしてきたという自負と70歳を越えてますます盛んな気迫が伝わってくる。

 つぎに、国際ロータリークラブが掲げる「四つのテスト」という簡明な倫理指針を紹介する。ロータリークラブとは、1905年にアメリカのシカゴで設立された国際的な職業奉仕を目的とする団体である。各クラブでは、会員の専門分野を生かし、職業奉仕を通じて地域社会や国際社会に貢献する活動を行っている。四つのテストは、ハーバートJ.テーラーというアメリカのロータリアンが、大恐慌下で窮地にあった企業の再建を引き受けたときに考えた、企業の倫理的指針である。この四つのテストを忠実に実践し、1937年までにこの企業の再建が果たされた。1943年1月、国際ロータリークラブ理事会は四つのテストを職業奉仕プログラムの一つを構成する要素として承認した。その四つのテストは次のとおりである。(以上、ロータリージャパンのHPによる。)
 言行はこれに照らしてから
  真実かどうか
  みんなに公平か
  好意と友情を深めるか
  みんなのためになるかどうか
 私は下関のあるロータリークラブに所属しており、この四つのテストに曲をつけたロータリーソング「四つのテスト」を例会の時に皆さんと一緒に歌うことがある。そのたびに自らの言行が四つのテストに照らして適切であるかどうか反省を強いられる。すべてにわたって四つのテストに基づいて決めることはなかなか難しいことで、テーラーの企業再建の際にも周囲では実行不可能だとされたほどであった。難しいことではあるが、大事に際しては、四つのテストを参考に判断する努力をしている。

 私にも様々な局面で大事を判断しなければならないことがある。これまでも自らの体験や先人の知恵に基づいて判断してきたが、あえてそれらを整理してみると、私の心がけてきたことは次のようになる。
  ・義と道義にかなっているかどうか
  ・公正・公平かどうか
  ・大事は慎重に、無理・無駄はないように
  ・個人の利害を優先して、他に迷惑をかけていないかどうか
  ・自ら省みて恥ずることがないか
 このように整理してみると、存外に渋沢の言葉や四つのテストとも共通するものがあるように感じる。これからもさらに練り上げつつ、適切な判断の基準として生かしていきたい。