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理事長室より

「金子みすゞのこと」(2015年2月16日)

 先日ある会合で、金子みすゞ記念館・矢崎節夫館長の「みんなちがって、みんないい。~金子みすゞさんのうれしいまなざし~」という講演を聞く機会があった。
 矢崎館長は、童謡・童話などの作家であるが、学生時代に出会った一編の詩に衝撃を受け、その作者である童謡詩人金子みすゞの作品を探し続け、『金子みすゞ全集』(JULA出版局)を出版した。その後もみすゞの作品集の編集・出版に携わり、2003年に金子みすゞ記念館(山口県長門市)の館長に就任した。
 金子みすゞは1903年に山口県大津郡仙崎村(現長門市仙崎)で生まれ、1930年死去した。満26歳であった。みすゞは、大津高等女学校卒業後しばらくして、下関に移り住み、義父の営む上山文英堂書店の出店で店番をしながら詩作に励んだ。
 矢崎館長の講演では、最初に衝撃を受けた「大漁」をはじめ、「こだまでしょうか」「私と小鳥と鈴と」「つもった雪」など、みすゞのよく知られた詩を読み語って、金子みすゞの詩の世界、その思想を解き明かした。この講演から私なりに受け止めたことを紹介する。なお、詩のなかの/は改行を示す。
 まず講演では、金子みすゞの考え方を示すキーワードとして、「私とあなた」と「あなたと私」という対照的な2つの言葉を取り上げた。「私とあなた」では、私が主役であり、どうしても上から目線であなたを見ることになる。これに対して、「あなたと私」では、あなたが主役であり、私は立つ位置を下げて、understandできる、理解しあえる、あなたに寄り添うことができることになる。これがみすゞの根本思想であるとされた。
  大漁
  朝焼け小焼けだ/大漁だ/大羽鰮(いわし)の/大漁だ。/浜は祭の/ようだけど/
  海のなかでは/何万の/鰮のとむらい/するだろう。
 この詩では、私=人間の立場でみた大漁は、あなた=いわしの立場からはとむらいになるという、私からあなたへの立場の移行がみられる。
 「私と小鳥と鈴と」という作品では、私と小鳥、鈴と比較して、できることとできないことが私=人間との違いとして語られるが、最後に順序が逆転して「鈴と、小鳥と、それから私、/みんかちがって、みんないい。」と結ばれる。鈴=もの、小鳥=動物、私=人間はそれぞれ違っているが、みんな仲間で、人間が優位ということはない、と語っているのである。
 東日本大震災後に、ACジャパンのCMとしてテレビでよく流れた「こだまでしょうか」では、返ってくる言葉は、「こだまでしょうか、/いいえ、だれでも。」と結んでいる。私の問いかけに応えているのはこだまではなく、みすゞの心のいのりなのだ、という解釈をされた。
 また、矢崎館長は、父親や母親という存在は、赤ちゃんが生まれてはじめてこの世に生まれるのであり、赤ちゃんがさき、父母はあとだ、だから人間は生まれたままで100点だという。金子みすゞの詩は、このようにあなた=子供を大切な仲間とする人間讃歌であるといえよう。矢崎館長は、阪神淡路大震災で生き残った少年や東日本大震災で家族を失ったひとについて語られたが、残された人々の言葉には、みすゞと同じような人に対する思いやりの心を感じる、としている。
 メモと記憶を頼りに講演内容の再現に努めたが、到底直話には及ばない。関心をもたれた方は、矢崎節夫『童謡詩人金子みすゞの生涯』(JULA出版局)などをお読みいただきたい。