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理事長室より

平成26年度卒業式祝辞(2015年3月25日)

  下関市立大学の平成26年度卒業式にあたり、理事長として祝辞を申し上げます。卒業生並びに修了生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。また、これまで皆さんを支え、励ましてこられたご家族・保護者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。

 多くの皆さんが本学で過ごした4年間は、日本にとっても世界にとっても激しい変化の時代でした。何よりも思い起こされるのは、皆さんの入学直前に発生した東日本大震災のことです。国を挙げて復興に取り組んできていますが、真の復興は未だしの感があります。とくに福島第一原子力発電所の事故はまだまだ深刻な影響を与え続けています。関連して再生可能エネルギーの開発もまだまだ不十分です。
 また、少子高齢化が進行する中で、日本は2008年をピークに人口減少社会に突入しました。現在、政府・自治体をあげて地方創生に取り組み、地域においてもまち・むらづくりに取り組んでいるところです。これらの取り組みが実を結ぶのはこれからのことだと思われます。
 目を世界に転じてみると、4年前には「アラブの春」が希望をもって語られていました。その後、多くのアラブ社会では内戦が続き、また、テロが世界的に頻発するようになっています。そして、国境・国土や国益をめぐる対立・紛争・衝突も生じてきています。他方で、グローバル経済社会はますます深化して、地球はひとつとなり、あらゆる面でグローバルな競争が激化しつつあります。

 皆さんを待ち受けているのは、このような社会であります。不透明な未来に向かって、皆さんが頼りにするのは、勉学やサークル活動など本学での学生生活で得たものだと思います。そこで、私からは、卒業生、修了生の皆さんの新しい門出にあたって、はなむけの言葉を贈ります。

 一つ目は「学の鉄鎖」という言葉です。中村草田男に「卒業す学の鉄鎖の重かりしよ」という句があるそうです。この句を下関在住の直木賞作家の古川薫さんの文章で知りました。古川さんは第2次大戦後に山口大学に学びましたが、大学には重厚な個性を帯びた「学の鉄鎖」が残存しており、キャンパス生活の収穫は知識の吸収とは別に、この「学の鉄鎖」を体感することだと僕は思っている、と回顧しています(古川薫「わが青春のケイセン講堂」『「志」つなぎ伝える二百年 山口大学創基200年誌』2014年12月所収)。
ここでいう「学の鉄鎖」とは、大学における真理探究の歴史の中で築き上げられてきた、容易に振りほどくことのできない「学問の重み」だと言えます。大学を卒業するにあたって、皆さんが大学時代にどんな「学問の重み」に触れ、何を学んだのかを見つめ直してみることは、今後の人生にとって意味のあることだと思います。

 二つ目は「自利利他」という言葉です。自己の利益が先か、他者の利益が先かなどとよく議論されることがあります。この言葉は仏教用語で、伝教大師最澄の教えだとされています。TKC全国会の創設者である飯塚毅(たけし)氏は、この言葉を「自利トハ利他ヲイフ」と解し、「世のため人のため、社会のために精進努力の生活に徹すること、それがそのまま自利すなわち本当の自分の喜びであり幸福なのだ」と説いています(TKC全国会のホームページ)。昨今の競争社会のなかで、噛みしめるに値する言葉だといえます。

 三つ目は、私のモットーのひとつとしている「逆境鍛性格、順境伸才能」(「逆境は性格を鍛え、順境は才能を伸ばす」)という言葉です。人生には逆境のときもあれば、順境のときもある、その時々の状況にあわせて能力の開発や人格の陶冶に心掛けなさい、という意味です。皆さんの将来には幾多の山と谷が待っていることでしょう。困難の中で自らを鍛え、将来の飛躍の時に備えることが大切です。そしてそのような潜在能力を皆さんはこれまでの大学生活のなかで身につけてきたはずです。

 卒業生と修了生の皆さん、本学で学んだことに自信と誇りを持って、それぞれの道で高い志を持ち、目標の実現にチャレンジしてください。努力の汗は正直です。必ずや報われるはずです。皆さんのこれからのご活躍を期待するとともに、将来が実り多きことを願って、祝辞といたします。

平成27年3月25日          
公立大学法人 下関市立大学   
理事長 荻野 喜弘