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理事長室より

「何をつくる会社ですか」(2015年11月23日)

 「松下電器は何をつくるところかと尋ねられたら、松下電器は人をつくるところです。併せて電気器具もつくっております。こうお答しなさい」。松下幸之助は、会社創業間もないころから、事あるごとに、従業員にそう話していた、という。この言葉は松下幸之助の名言としてよく知られている。後年、幸之助は、「当時、私の心境は“事業は人にあり”、つまり人がまず養成されなければ、人として成長しない人をもってして事業は成功するものではないという感じがいたしました。したがいまして、電気器具そのものをつくることは、まことにきわめて重大な使命ではございまするが、それをなすにはそれに先んじて人を養成するということでなくてはならない」と語っている。ここでいう人材の育成とは、産業人、社会人としての自覚をもち、経営の分かった人間を育てる、ということだとされる(「PHP人材開発」HPより)。松下のひとづくりは、あくまで社員教育にあったといえる。
 企業間競争が厳しい現代にあって、すぐれた社員がいたとしても、経営者に恵まれなければ社業が傾くという事例は多い。いわく、東芝、シャープ。
 このような日本経営の問題点は、日本式社員教育の限界ともいえる。株式会社ミスミグループ本社の三枝匡取締役会議長は、「業績で追い詰められた企業には、受け身で、改革意欲のない社員がたくさんいるわけです。・・・・日本企業が元気を失った最大の理由として、社内で経営者人材の育成が遅れている問題を痛感する場面が繰り返されたのです。ダメになる企業は、とどのつまり経営リーダーの力量が足りないことが最大の原因であるということが見えたわけです」。そこで、「次世代の経営者人材を育てることが私の人生の役割だと思うようになりました」。三枝は「社長になると、普通の経営者はまず「業績向上」を語り、その手段としての人材育成です。ところが私は(ミスミの)社長になった時、社内外にまず一番目に「経営者人材育成」を語り、その結果として業績向上があるという順番で語りました」(三枝匡・蓼沼宏一(一橋大学長)「対談“経営者人材”の育成とは」“Hitotsubashi Quarterly”October 2015 Vol.48)。
 企業の人材育成について、松下幸之助は社員の人材育成を重視したのに対して、三枝匡は経営者人材の重要性を強調したのである。この間には、日本企業を巡る経営環境と経営トップの役割に大きな変化があったことを指摘することができる。
 日本の大学においても、学長のリーダーシップと経営組織の改革の重要性が強調されている。とはいえ、日本の大学では、真にリーダーシップを発揮している学長はまだまだ少なく、加えて経営者人材を育成するシステムを持っている大学は少ないようである。日本の大学を巡る環境は非常に厳しく、大学運営の巧拙が大学の将来を左右する時代となっている。大学経営者の育成は喫緊の課題である。文部科学省は「国立大学改革プラン」(平成25年12月)では、「ガバナンス機能の強化」の一環として「学長のリーダーシップの確立」を打ち出し、そのための制度改正が行われた。「国立大学経営力戦略」(平成27年6月)では、「経営を担う人材、経営を支える人材の育成確保」をあげている。大学経営の強化は国立大学に止まらず、公立大学でも同様の課題である。しかしながら、日本の大学では、経営者人材の育成はシステムとしてはまだ確立されているとはいえず、管理運営者の選抜は、管理運営に関わる大学のポストに就いて実績を積み重ねることによって、経営者に相応しい能力と経験を鍛えるほかはないのが実状である。かつてある経営学者が企業を経営して会社を破綻させた事例があったが、学問として経営管理を研究しても、畳の上の水練よろしく、真の経営能力を身につけることはできないのである。大学経営に携わるひとりとして、大学経営者を育成する制度が定着していくことを期待したい。

注:三枝匡の略歴とミスミグループ本社の概要は次の通りである(前掲「対談“経営者人材”の育成とは」及び株式会社ミスミグループ本社HPによる)。
三枝匡は、1967年一橋大学卒業後に三井石油化学に就職し、その後ボストン・コンサルティング・グループに加わり、また日本企業3社の経営トップとして企業再生に当たった。41歳の時に株式会社三枝匡事務所を設立し、経営不振に陥った日本企業の事業再生を引き受けた。そして、2002年株式会社ミスミグループ本社の社長COEに就任し、同社を国際企業に変身させ、2014年ミスミグループ本社の取締役会議長となった。
 ミスミグループ本社の事業概要は、FAなどの自動機の標準部品を主に扱うFA事業、自動車や電子・電気機器などの金型部品を主に扱う金型部品事業、新たな流通事業としてミスミブランド以外の他社商品も販売するVONA(中央案内軌条式の新交通システム)事業で構成されている。2014年度の財務内容は、売上高2,085億円、営業利益237億円、当期純利益142億円である。