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理事長室より

「読書週間」(2017年11月2日)

 読書の秋といわれる。第71回読書週間が10月27日から11月9日まで、標語「本に恋する季節です!」で展開されている。これに合わせて、全国的に読書をすすめる仕掛けやイベントが催されている。この読書週間に因んだ識者の推薦本のうち、識者ごとに1冊だけを紹介してみよう。大崎梢推薦:小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫、出口治郎推薦:吉野源三郎『君たちはどう生きるか』岩波文庫、辻仁成推薦:サン=テグジュペリ作内藤濯訳『星の王子さま』岩波書店、小林聡美推薦:遠藤周作『眠れぬ夜に読む本』光文社文庫(「本がひらく、人生の扉 読書週間」朝日新聞2017年10月27日)。皆さんはこのうち何冊かは読んだことがありますか。

 「最近の学生は本を読まなくなった」と言われて久しい。実態はどの程度なのだろうか。全国大学生活協同組合連合会が2016年10月~11月に実施した全国国公私立大学30校の学生10,155人(回収率33.1%)に対する調査結果によれば、1日の読書時間は平均24.4分、前年より4.4分減、1日の読書時間が「0」は49.1%で、前年より3.9ポイント増、予習・復習・論文など大学の勉強時間は1日52.8分で、前年より2.3分減であった。これに対して、スマホの1日平均利用時間は161.5分(前年より3.6分増)であった。スマホの利用時間(161.5分)は、読書時間+勉強時間(77.2分)よりも2倍以上になり、約半数の学生が読書していないということになる。(第52回学生生活実態調査の概要報告)

 このような結果を踏まえて、スマホの利用が読書離れの原因とする意見も多い。スマホ利用に関しては、平成27年度信州大学入学式の挨拶のなかで、当時の学長が「スマホをやめますか、それとも信大生やめますか」と問いかけ、「スイッチを切って、本を読みましょう」と呼びかけ、話題になったことが思い出される。学長の真意は、挨拶の中で触れているように、「自ら探求的に考える能力を育てること」が個性や創造的な発想を生み出すのであり、そのためには、「自らで考えることにじっくり時間をかけること、そして時間的にも心理的にもゆったりとすることが最も大切にな」るということにあったといえます。確かにデータを見る限り、スマホの利用が読書の減少につながっているようにみえるが、スマホが学生の勉学にとって有害であると直ちに断定することはできない。

 立花隆は、「スマホの向こうに、ネットを通して、ほとんど人類が持っている知識全体があ」り、「引き出し方いかんで、どんな情報でも取れるんです」。今、「知的環境そのものの変化の中で、むしろこの変化を利用して、どんどん自分の知的能力を膨らましていっている、そういう若い人たちが一方でものすごくいる」としている。そのうえで、「ネットだけだと、やっぱりどうしても掘り方が浅くなる」ので、「もうちょっと深い情報を得たいと思ったら、本なり、あるいはその他もろもろ、ほかの手段・・・・を通して、より深い情報を得るってことが必ず必要なステージに行く」とした。さらに「読むだけじゃなくて、その次のステージとして、アウトプット、つまりなんかをまとめて書くっていうね、その体験に行かないと、・・・・より読書が深められない」とした。立花は、「自身の思考力を培ううえで、どんな経験が役立ったか」という問いに対して、「それは、圧倒的に本を読む体験です」と答えている。以上、「広がる“読書ゼロ”~日本人に何が~」(NHKクローズアップ現代2014年12月10日放送)による。
 つまりネット(考えること)→読書(読むこと)→書くこと、という思考のステージを提示している。とすれば、読書は思考を深めるうえでは、きわめて枢要な位置を占めているといえる。

 このようなことは、実はインターネットが始まるずっと以前、1970年代から指摘されていたことである。経済学が専門の大内力教授は、「昔の学生・今の学生―学問に未来はあるか?」(『学士会会報』1979年6月号)と題するエッセーで、「最近の学生が一般にいって、いちじるしく学力が低下して」おり、「本を読めない、文が書けない、ものを考えない」という学生が多く、「10年、20年先の日本の学問はどうやら絶望的」だと指摘していた。泉下の大内先生は、現代の学生や学問の状況を見て、私の予言は当たっていたとするか、それとも学生や学問もまだまだ捨てたものではないな、考え直しているか、どう思っているのだろうか。

 本学は、教育の目的として「 バランスのとれた教養豊かな高度職業人を養成すること」を掲げている。「教養豊かな高度職業人を養成する」ためには、「読むこと」はかかせない。さまざまな読むことがあるが、私としては、この読書週間をきっかけに「本を読むこと」をおすすめする。「本に恋してほしい!」