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理事長室より

平成29年度卒業式祝辞(2018年3月25日)

 下関市立大学の第53回卒業証書・学位記授与式にあたり、理事長として祝辞を申し上げます。卒業生並びに修了生の皆さん、本日はご卒業と修了おめでとうございます。また、これまで皆さんを支え、励ましてこられたご家族・関係者の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。

 皆さんは、卒業式という本学での最後の日を感慨深く正門を入ったことでしょう。正門右手には、昭和41年卒業の第1期生が寄贈した「陽光桜」が今年も皆さんの門出を見守っています。
 皆さんは、本学でよき友、よき師と巡り合い、多くを学び、青春を謳歌し、充実した学生生活を過ごされたことでしょう。今は、本学で過ごした日々のことが懐かしく胸中を去来していることでしょう。

 さて、多くの皆さんが本学で過ごした四年間は、日本にとっても世界にとってもまれにみる激しい変化の時期でした。例えば、世界を見渡せば、世界的規模での格差社会の顕在化、トランプ政権による政治・経済の混乱などがあり、国内に眼を転じますと、人口減少と少子高齢化、首都圏一極集中と地方再生などがあり、どれをとっても深刻な問題ばかりです。

 皆さんを待ち受けているのは、このように多くの諸課題を抱えた社会であります。この見通すことの困難な未来に向き合って、皆さんが頼りにすることができるのは、勉学やサークル活動など本学の学生生活で得たものだと思います。
卒業生アンケートの結果によれば、皆さんは、学生生活を通して、専門的知識、豊かな教養、常識的な知恵、コミュニケーションとプレゼンテーション能力など社会人としての基礎的な力を十分に身につけておられます。卒業生、修了生の皆さん、自ら選択した明日からの道を自信をもって着実に歩んでください。

 皆さんの新しい門出にあたって、私からの「はなむけ」として「初心忘るべからず」という言葉を贈ります。皆さんは、この言葉を社会人としての初心を忘れないように、と受け止めていることでしょう。しかし、この言葉に込められた本来の意味は少し違うようです。この言葉は、能の大成者である世阿弥が「花鏡(かきょう)」という論書のなかで初めて用いた言葉で、能の修業の心得を説いたものとされています。「花鏡」によれば、初心には「是非の初心 時々の初心 老後の初心」、すなわち「若い時の初心 人生の時々の初心 老後の初心」の3つがあるとされています。能の修業には、それぞれのステージごとにそのステージに相応しい初心があるということです。

 世阿弥のいう「若い時」とは、能を一通り舞うことができるようになった二十四、五歳ころを指し、「是非の初心」とは、そのころまでに稽古でつかんだ「是と非」を踏まえた「心の持ち方」のことである、と私は解釈しています。世阿弥は、一時の評判で有頂天になっていると、「誠の花」(一人前の能役者)にはなれませんよ、「是非の初心」を忘れないで稽古に励みなさい、と諭したのです。

 これを皆さんに当てはめますと、皆さんはこれからしばらくは修業の時代です。そして、独り立ちできたと自覚するときこそ、「是と非」を見つめ直して人生の方向性をうち固める時であり、その時の「心の持ち方」が「若い時の初心」となります。皆さん、初心を固めることができるように努力してみてください。
「初心忘るべからず」が私からのはなむけの言葉です。

 最後に、皆さんのこれからのご健勝とご活躍を祈念いたしますとともに、皆さんの将来が実り多きことを願って、祝辞といたします。

 

平成30年3月25日          
公立大学法人 下関市立大学   
理事長 荻野 喜弘