3 財務状況から見た関門都市圏「信用金庫」の実態
〜北九州市4信用金庫を中心として〜
関門海峡を挟んだここ北九州市と下関市には2002年3月現在、地域金融を担う信用金庫が5金庫集積している 。北九州市側から数えると、福岡ひびき信用金庫・新北九州信用金庫・門司信用金庫の3金庫、そして下関市側には下関信用金庫・豊浦信用金庫の2金庫がある。このうち“福岡ひびき信用金庫”は、周知のように、昨年11月に旧北九州八幡信用金庫と同若松信用金庫が合併して出来た新金庫であるから、つい先頃までには6金庫が在ったことになる1)。これらの金庫は、両市の産業の基盤である中小商工業を金融面から支える重要な働きを創業以来続けてきているが、それぞれの歴史は決して一様なものではない。
上記各金庫は「その名」に至るそれぞれの経過を持ち、旧くは1951(昭和26年)の信用金庫法制定に溯るもの、さらには市街地信用組合という形で明治・大正・昭和の歴史を刻んできているものもある。近年においてもこの歴史を引き継ぎながら、各自各様の変転を見せながら新しい世紀を跨ぎ21世紀初頭の現在に至っている。
ところでこれまで「信用金庫の実態は、上記の様な一般的な制度の解説や各信用金庫の歴史等が多く紹介され、地域金融機関としての信用金庫の意義や重要性を大いに広めてきたところではあるが、財務や経営内容等の解説や紹介は概略的なのもの2)はともかくとして、特定の地域や個々の信用金庫の実態分析は殆ど見当たらなかったと言ってよい3)。それは一つには信用金庫が基本的に「協同金融」制度に由来するところから、株式会社形態の都銀・地銀とは異なり、自ら対外的に自身の財務内容を公表する義務と必要とに迫られていなかったところにあったように思う。しかしながら、近年の「金融ビッグバン」に伴なう企業の「情報公開」の大きな流れは、各金庫においても、漸次、公開の姿勢を自ら強めていこうとする空気を生み出してきたものと思われる。
今回のこの関門地域の信用金庫「財務分析」がそれなりに可能になったのも、過去4〜5年前からの各信用金庫による「ディスクロージャー誌」等の対外広報活動強化に依るこが大さかったことと4)、当該各金庫関係者の協力のおかげである。いずれにせよ、この様な形での信用金庫「財務分析」の試みは、筆者の知る限り全国的に見ても皆無のものと言える。そのため分析自体が不十分な面をどうしても持たざるを得ない点や、資料等の制約による問題解明の不足等が多々あるものと思われるので、この点の御理解をいただきたい。なお、分析資料は出来るだけ最近のものを活用したが、各金庫の「ディスクロージャー誌」については2001年版(平成13年3月末)、その他の経営指標については2000年度(平成12年度)がその最新のものとなる。それから、冒頭で紹介した“福岡ひびき信用金庫”はこの段階においては合併以前であるから、旧「北九州八幡信用金庫」と同「若松信用金庫」との、それぞれ単体としての分析対象としている。
2 北九州市4金庫・下関市2金庫の「全国」比等から見た実態
金融機関各業態にはそれぞれの経営実態を把握する上で適合な指標を持っている。例えば株式形態をとる都市銀行・地方銀行・第二地方銀行等は、はぼ共通する指標をもって判断の基準としている(例えば、第2部IIの西田論文を参照)。これに対して協同金融組織形態をとる信用金庫は会員組織の協同金融機関であるから、既記のような独自の法律と経過とを踏まえながら、自らの経営形態に適合した各種経営指標によってその判断基準としている。
信用金庫業界はこれを以って全国的基準としており、地区別、個別金庫において相互比較が可能なものとしている。今回、本稿において採用しているのは、その内のいくつかである。具体的は、成長性(預金伸長率・貸出金伸長率)、生産性(パーヘッド預金量・一店舗当たり預金量)、効率性(業務収支率・業務利益率・一人当たり業務利益)、収益性(預金利回り・経費率・人件費率・資金運用利回り・預金貸出金利鞘・総資金利鞘)、安全性(一人当たり無コスト資金・ 自己資本比率・延滞率)といったものである。
以下の分析は、この手法を援用しながら、その他の各種データーを織り込む形で関門地域の信用金庫の財務から見たその実態を分析したものである(尚、北九州・下関両市のそれぞれの金庫については、両市信用金庫の“全体的傾向”を見ることに今回は重点を置いているので、両市信用金庫のそれぞれの平均値で示している)。
(1)「成長性」指標から見た財務実態
まず、「成長性」の項目を構成する預金伸長率と貸出金伸長率から見ていくと、近年の傾向は図1・2に見るとうりである。両伸長率は、言うまでもなく金融機関における預金と貸出金 との成長性を示しており、ともども信用金庫の「量」による成長性を意味している。同図によれば、「全国」と各地域の1996年以降の傾向は必ずしも一様なものではない。すなわち、預金伸長率1%の後半から2%後半を比較的安定的に上下している北部九州(福岡・佐賀・長崎の三県平均値)に対して、北九州市4金庫の平均値は96年の0%から翌年に急伸した後は、前者に0.7%平均で下回りながら2000年に至っている。これに対し首都圏・関西圏・名古屋圏等の大都市の傾向を強くあらわす「全国」は、同年に至り急激な落ち込みを示し、北九州市4金庫とは逆に0%に急落している。また、これらとは全くベクトルを異にしているのが下関市2金庫(平均値)で、96年の4.06%から0.5%ポイントづつ右下がりに1.31%まで低下してきている。
く資料)北九州市各信用金庫rディスクローシーャー誌」等より作成
一方、図2にみる貸出金伸長率は比較的まとまった右下がりの傾向をみせているが、ひとり北九州市4金庫が平行移動しながら最終的には歩留まり△1.43%をキープしている。これに対して「全国」は同年において△5.59%という大幅な落ち込みを見せている。また、北部九州各県と下関市2金庫とは、はぼ同様の下げを見せ4%前後から△3%近くまで落ちてきている。北部九州平均と北九州市4金庫平均の相対比で見ると、1999年に伸長率が逆転し、僅かながら後者が貸出で上回っている。
これらの指数の変化と筆者のヒアリング等を重ねあわせて北九州4信用金庫の「成長性」を観てみると、次の様な推定が可能ではないかと思う。すなわち、同4金庫の預金伸長率が相対的に低いのは、収益性確保のため4金庫のうち特に2金庫(新北九州・若松)の店舗の統廃合と北九州八幡信用金庫も含む出張所の廃止等によるところが大きいように思える(図3参照)。店舗(出張所)は預金獲得のための最前線基地であり、地域情報集積の拠点でもあるから、それらの統廃合はストレートに預金の減少に繋がる。一般的に地方の店舗配置は地縁・血縁等の関係で統廃合は非常に難しいが、それを圧しての合理化は近年の信用金庫経営に強く求められて来ていると見てよい。北九州市4金庫のこのトレンドが北部九州3県の平均値にはぼ等距離で下回っているのは、この様な形での合理化が更に地縁・血縁関係が濃い3県よりは多少とも実行し易いことの反映かもしれない。同時にこのことは、地方中核都市としての北九州・下関両市よりも更に大都市部の傾向を映す「全国」についても言え、各種金融機関間競争のための統廃合等による合理化は、競争そのものによる集客減とも相伴って、この預金伸長率の急激な低下につながっているように思える。
一方、収益力の要である貸出金が低調な理由は、基本的には長期不況による貸出需要の低迷
図3北九州4金庫の店舗変遷
図3を見る
(資料)図1に同じ
や担保価値の下落等にあろうが、金融監督当局の早期是正措置・金融検査マニュアル導入などによる動きに対して、信用金庫側が過度に萎縮していることも大いにあるように思われる。勿論、だからと言って信用金庫はそのための自己資本比率対策のため、いわゆる「貸し渋り」や「貸し剥がし」などの措置は行っているわけではないが、金融当局のこの様な措置が間接的かつ実態的に地域中小企業に甚大な影響を及ぼしていることは確かにある。
このような中で北九州市4金庫の貸出伸長率が、「全国」や北部九州地区平均を1999年以降、逆転して上回っているのは、4金庫が相対的に地域密着型の融資態度を維持してきている為と思われる。その意味で、逆に、「全国」の99年以降の激しい落ち込みは、大都市部信用金庫が想像以上の環境に追込まれ、「不良債権償却」等をも含む、なり振り構わぬ自己資本比率対策を行なわざるを得なくなっている為のように見える。
(2)「生産性」指標から見た財務実態
上記の預金・貸出金伸長率が「量」による成長を計る指標であるのに対して、生産性の向上により経営効率を高める、いうなれば「質」の指標として一人当たり預金・−店舗当たり預金量などが使われている。これらは俗に「パーヘッド」、「パーブランチ」とも言われており、金融機関における基本的な指標の一つである。
具体的には、前者は「預金積金(平残)+譲渡性預金(平残)/常勤役職員(期中平均)」で算出され、常勤役職員一人当たりの生産性を意味し、数値が高いほど望ましい。後者は預金積金(平残)+譲渡性預金(平残)/店舗数(CDコーナー無人化店舗を除く)」の式により導き出され一店舗当たりの生産性を示し、数値の高いほど良いことになる。1996年以降の動向は図4・5に見るとうりである。
図4バーヘッド預金(平残)(百万円)
図4を見る
(資料)図1に同じ
図51店舗当たり預金量(平残)(百万円)
図5を見る
(資料)図1に同じ
図4を見ると、北九州市4金庫のパーヘッドは全体的な上昇傾向には沿っているものの、「全国」レベルと約120〜160万円の差があり、年を重ねるごとに開いてきている。この傾向は下関2金庫においても同様で、僅かながら北九州市よりも低いレベルで推移してきている。一方、図5のパーブランチにおいては下関側が北九州側を1億円ほど常時上回っいるが、「全国」との比較では、両者とも二分の一弱の圧倒的な“格差”をつけられているのが観察できる。
この際立った特徴をどう読むのか。一つには両市、とりわけ北九州市4金庫の預金規模は「全国」に比べて見劣りはするものの、それなりの水準を維持しているのであるが、店舗数が相対的に多いために固定費等が高くなり、結果、一店舗当たりの生産性が悪くなっていると読むことが出来るのではないであろうか。仮にそう読めるなら、今後の課題としては店舗の整理・統廃合を「全国」(=東京等の大都市)レベルまでは無理(であり好ましくも無い)としても、先の「成長性」を損なわない範囲での合理化は避けて通れないのではないか。表1は図3を各金庫の「新設・移転」、「昇格・降格」、「廃止・統合・営業譲渡」別に出張所を含めて整理したものであるが、これまでの出張所中心の廃止・統合等から、預金集中カベースでの再点検によっ
て、各支店レベルのそれも視野に入れることが必要になっているのかもしれない。もっとも、先に延べたように地方の地域金融機関にとっては地縁・血縁等の地域ネットワーク無くして維持・発展は有り得ないわけであるから、この両者のバランスが極めて重要な判断基準となろう。
表1挿入北九州市4金庫の店舗数とその異動状況
表1を見る
(資料)図1に同じ
(3)「効率性」指標から見た財務実態
信用金庫の「効率性」をみる指標としては、主に業務収支率と業務利益率があり、それに一人当たり業務利益も加わって多角的に見られるようになっている。業務収支率は業務収益に対する業務費用の比率を見る指標(業務費用一金銭信託等運用見合膏用/業務収益×100)で、これにより収益力の大小を総括的に把握できる。この比率が低いほど単位当たり収益に対して費用が少なくて利益を生んだことになり、損益収支の状態が良好ということになる5)。業務利益率は、業務純益={業務収益一(業務費用一金銭信託等運用見合費用)}/(預金積金+譲渡性預金+借用金)平残×100という式からも判るように、逆に業務根益が分子にくることによって運用勘定の資金源である調達資金に対して、どの程度の収益を上げることができたかを計る指標である。したがって上記とは逆にこの比率が高いことが資金の運用効率の良さを示すことになっている6)。
図6・7はこの両者を並べてみたものであるが、例えば1999年の下関市2金庫の平均値は、前者において103.09%という極めて高い数値が出ているのに対して、後者では逆に△0.09%というこれまた急激な落ち込みを示している。これらは2000年において北部九州や北九州市4金庫の水準に回復しているので、単年度だけの特殊要因によって引き起こされたという『事情』が容易に推察できるが、いずれにせよこの表裏の関係は興味深いところである。
この特殊事情を除いて関門の両者を見ると、下関市2金庫が「業務収益に対する業務費用の比率」が傾向的に高く(つまり損益収支状況が悪く)、「運用勘定の資金源である調達資金に対しての収益」が低い(つまり資金運用効率が悪い)という実態にあるのに対して、北九州市4金庫は「全国」に絡み付く形で推移し、はぼ大都市に引っ張られた「全国」の平均値にあるといっていいであろう。但し、2000年には北部九州、下関2金庫と同様「全国」に比べ事業運営コストが高く、資金運用効率も悪いことは注意を要する点といえよう。これについては、一つには後に見る「経費率」や「人件費率」等が恒常的に「全国」比で高めであることなどが起因してのではないかと堆定される。
図6 業務収支率(%)
図6を見る
(資料)図1に同じ
図7 業務利益率(%)
図7を見る
(資料)図1に同じ
また、図8に見る−人当たり業務利益も同じく収益力を表す指標であるが、これは先に見た常勤役職員一人当たりの「預金」に見合う生産性(パーヘッド預金)を見るのに加え、それ以外の国債や安定株の運用それに信金中央金庫の「定期性預金」運用などを含めた“一人当たりの収益力”を見る指標である。
そこで、業務純益/常勤役職員(期中平均)×100で算出された同図と先の図4とを比較しながら観察すると、パーヘッドの方は既記の様に跛行性はあるものの全体的にそれなりの伸び方を各々しているのに対して、「一人当たり業務利益」は1997年以降一様でない下がり方を示している。すなわち北九州市4金庫は「全国」ベースとほぼ同一の歩調を取ってきたが、2000年には、急激な下げと若干の揺り戻しをしてきた下関市2金庫と同一の水準に落ち、「全国」に約200万円という大差をつけられてしまっている。
これについては先ず、96年以降の「超低金利」などの大枠での金融環境の悪化による融資業務等の運用の行き詰まりがその理由に挙げられようが、それに加え、もともと大都市に比べ大口融資先が少なく、いわゆる一先当たり融資額の小さい地方都市では、どうしてもコスト高の融資になってしまうことがその背景としてあるように思える。加えて、同時期、北九州・下関両市の製造業・小売・流通等の各業種において、事業所などの撤収、閉店が相次いで起こっている。この様な各種事情がこれらの指標の背景として見えてくる。
図8 1人当たり業務利益 (千円)
図8を見る
(資料)図1に同じ
(4)「利回り」指標から見た財務実態
「利回り」を見る指標については、それが信用金庫経営の基礎を形成するという意味からも特に重要であるから、多くの関連指標がある。先ずは、預金調達に直接要した費用(利息)の割合を示した預金利回り(預金利息+譲渡性預金利息+給付補てん金繰入/(預金積金+譲渡性預金)平残×100)がある。この利回りの変動は、信用金庫の預金利息が資金コストの相当部分を占めているため利鞘や損益益収支に大きく影響する。
金利自由化以前の「規制金利」時代には預金金利の全てが公定歩合に沿った形で整然と位置づけられいたために、この利回りも単純に金融機関間の預金「量」獲得競争によって決まっていた。しかし1985年以降の「自由金利」時代からは7)、漸次、各種市場金利連動型預金が登場し、今日の預金利回りはこれら変動する金利と預金の構成比(内訳科目別構成、定期預金の期間構成比別構成等)によって大きく変動することになった。この自由化の流れは、一般的には信用金庫の預金調達ココスの上昇や利鞘の縮小などをもたらし、金利リスクの増大等を招来しているわけであるから、信用金庫の経営効率や利益にとってこの指標は非常に重要なものである。
図9によれば1996年以降、それぞれの信用金庫の預金利回り格差はあまり見られない。この期間の「超低金利」を反映し、凡そ0.1%強の幅の範囲内できれいに並んで右下がりに低下している。もともと預金市場は金融業態間でも貸出金市場と比べて棲み分けが出来ていないため、同一の市場間競争の預金利回りもあまり大差の無いものになっている。それが信用金庫内各レベルのそれともなると、初めから大さな違いがあるはずのものでもなく、北九州市4金庫も、そのわずかの差ながら最低の利回りを示しながら推移している。
最低の利回りを維持しているということは、上記の算式からも判るように金庫経営にとってはコストを削減しているという意味であり、その継続性は北九州4金庫の明確な政策的意思を感じる。すなわち、運用難のこの時期にそれに見合う以上の預金積金等を集めるということは、金庫経営にとって相当の重荷になることであるから、他地域(他業態)よりも低めの金利設定を政策的に「工夫」することによって、必要以上のコスト圧力を避けているようである。金利設定は、今日、各金庫ごとのみならず各店舗ごとで設定が可能である訳であるから、この様な推定は十分可能であるように思われる。先の「預金伸長率」指標の個所で店舗展開がらみで北九州4金庫の相対的に低い伸びのトレンドを解説したが、ここでの推定は図1におけるそれをも同時に解説できるものと考える。
預金利回りに次いで重要な指標としては、経費率(人件費+物件費+税金/(預金積金+譲渡性預金)平残×I00)が挙げられる。
図9 預金利回り
図9を見る
(%)
(資料)図1に同じ。
これは上の式からも判るように、資金調達に必要な支払利息以外の人件費、物件費、税金などの経費の割合を示し、ここでは預金と対比させて資金調達に要した経費割合とされている8)。したがって経費率が高いほど資金コストが嵩んでおり、低いほど経費効率が良いということになる。現在のような「超低金利」下はともかくとして、一般的には金利自由化時代の金利選好の高まりによって、預金金利の低下は困難な状況にあるために経費率の引き下げは今後の信用金庫経営にとって特に重要なことになっている。
図10によれば、関門両市6金庫と北部九州各県信金は緩やかな右下がりの経費率引き下げ努力が見られるが、「全国」に比較して見るとに恒常的にそれを上回っている「高コスト構造」になっており、その要因解明は今後の同地区信用金庫経営の大きな課題として挙げられよう。もっとも、その要因分析においても上記経費率の算式を見るまでもなく、分母の預金量の多寡に大きく影響を受けるわけであるから、この点の配意の必要は言うまでもないところである。事実、先の図1「預金伸長率」を参照すると、特に北九州4金庫のその伸びがこれまで述べてきた理由等から相対的に低い訳であるから、全てを分子のせいにすることは出来ない。また2000年において急激な経費率低下を示した北部九州についても、図1の伸長率の相対的高さから(部分的には)解説できなくも無い。いずれにせよ、これらに加えて経費区分(人件費率・物件費率・税金率)とを重ねあわせた複眼的アプローチも求められよう。特に各比率を地区別平均や規模別平均等と比較して相対的な高低をみるとともに、図4に見た「パーヘッド」等についても併せて検討される必要があろう。
ところで上記の経費区分のうち人件費率は費用項目が大きく、固定費として損益収支に与える影響が大きい。
それ自身は調達した預金(平残)に対する人件費(報酬給料手当・賞与引当金純繰入額・退職給与引当金繰入額・適確退職年金拠出金・社会保険料等)の割合を示し、比率が低いほど経営効率が良いことになっている。計算式は人件費/(預金積金+譲渡性預金)平残×100であるが、これをさらに分解すると役職員一人当たり人件費÷同預金量となり、結局は「一人当たり人件費」と「預金パーヘッド」であることに行き着く。したがって人件費率の低下を図るには、パーヘッドの増加率が一人当たりの人件費の増加率を上回ることが必要になる。
図11から関門両市6金庫の人件費率を見ると、「全国」が1.15%(96年)から0.99%(2000年)へと0.16%引下げているのに対して、それぞれ0.09%(北九州4金庫)と0.14%(下関2金庫)と僅かではあるが引き下げの率が少ないように思える(4金庫は下げ率“1/2弱”にとどまっている)。これは上述のように預金パーヘッドとの関係でもあるから一概には結論づけられないが、図4の棒グラフの図形が殆ど同じに推移している事などを勘案すると、総じて人件費内訳の内容にも問題があるのかもしれない。
ちなみに、図12・13は北九州4金庫の1991年3月から2000年3月の役職員の総数と異動等を見たものである。
これによると総役職員は男女合計と役員とを含めて、この10年間に981名から836名へと145名の減員になっており、一金庫単純平均で約30名の人員合理化を進めてきていることがわかる。その内訳を図13に見ると、職員が150名(男105名、女45)の減員を見ているのに対して、逆に、役員5名の増員になっている。役員数は一金庫単純平均で1.25人の増加である。個々の金庫の事情は詳らかでないが、少なくとも全体的に総人数が減少している中での僅かながらの増員ではあるが、目立つところである。
また、男女別で見てみると男が625名から520名へ105名、女が332名から287名へ45名減員となり、それぞれ△16.8%(男)、△13.6%(女)の減少率となっている。男女別の定員や減員率については、個々の金庫の事情によってかなり異なり一般的な傾向を見つけることは極めて難しい。一般的に都銀や地銀ベースでは、現金自動受払機(CD)等の導入と女性職員の減員が同時進行しているが、4金庫に関して言えばその強い傾向性は見られない。
「利回り」指標のうちの資金運用利回りは、資金運用の太宗を占める貸出金及び余裕金等の運用収益力を表している。算式は資金運用収益/資金運用勘定計平残×100であるが、この比率が高ければ高いほど効率運用が図られていることになる。分子となる資金運用収益には、貸出金利息、預け金利息、金融機関貸付等利息、有価証券利息配当金、金利スワップ受け入れ利息、その他の受入れ利息などがあり、分母となる資金運用勘定計平残には、預け金(無利息分を除く)、金融機関貸付金等、買入金銭債券、金銭の信託、有価証券、貸出金、外国為替(資産)、その他の各平残などがある。
上記の様な多数の項目からなる算式を要素別に整理すると、資金運用収益/資金運用勘定計平残=貸出金平残/資産運用勘定計平残×貸出金利息/貸出金平残+余裕金延平残/資産運用勘定計平残×余裕金利息/余裕金平残=(貸出金構成比)×(貸出金利回り)十(余裕金構成比)×(余裕金利回り)という分解式に導ける。
図12 役員、職員(男女)合計
図12を見る
(資料)図1に同じ
図13 4信金役職員総数の推移
図13を見る
(資料)図1に同じ
この分解式により資金運用利回りの変動要因は、資産運用の科目別構成比の変動からくる影響と金利情勢等からくる各利回りの変動による影響を受けることがわかる。余裕金においても効率運用による資金運用利回りの上昇も図れるので、この面での運用能力が問われることになる。
この両者を念頭に置きながら金庫経営の根幹である資金運用を見てみると、一般的には預金の約60%を(1)貸出(融資)運用に回され、その他いわゆる余裕金を(2)国債と事業債(政府保証債)運用、また(3)信用金庫独特の運用法である信金中央金庫への定期預金(中央一括運用)と決済性預金への運用、そして残りを(4)比較的安全な株への運用というようになっているようである。それぞれ資産運用の項目別構成比は当然異なるが、一般的には預貸比率60%台の「健全型」信用金庫の会裕金運用派は、(2)と(3)が主流であり、預貸比率の非常に低い信用金庫の場合は(4)等の相対的ハイリターン型運用構成比が大きくなるようである9)。
図14は同期間の北九州市4金庫をはじめとする各地域信用金庫の資金運用利回りの推移であるが、「超低金利」下の運用利回りの低さを反映して3.5%以下の水準から更に2.5%以下の水準へと下降している。それでも関門両市6金庫は「全国」よりも僅かながら高い水準で堆移している。
図14挿入 資金運用利回り (%)
図14を見る
(資料)図1に同じ
利鞘はあらゆる利回りの基本(ベース)の指標であるが、預金貸出金利鞘と総資金利鞘とは両者を併せて見てみることによって、集めた資金の基本的な収益性・効率性の実態と全般的それとが実際的に理解できる。前者は貸出金利回り−預金原価率で算出され10)、資金を貸出金として運用した場合の利益(及び資金単位当たりの利益)を示すもので、収益力を見る基本的指標として重視されている。特に営業店(支店)においては、余裕金の運用はあり得ないから営業店単位の資金の収益力を見るものとして非常に重要なものである。言うまでもなく利鞘は厚いほど資金の収益力と効率性が良いが、この場合の利鞘は調達資金を100パーセント「貸出」運用した場合の利益であるから、あくまでも集めた資金の基本的収益性(効率性)を確認する指標として活用されるものである。したがって経営全般から収益性を見るには、後者の総資金利鞘(資金運用利回り−資金調達原価率)を押さえなくてはならない。この利鞘は資金単位当たりの利益を示すものでもあるが、当然貸出金以外の先に見た余裕金として運用されている有価証券等への運用も含めて計算される。
したがって、「余裕金運用利回>貸出金利回り」の場合は預金貸出金利鞘より高くなり、逆に「会裕金運用利回(貸出金利回り」の場合は総資金利鞘が低くなる。このように経営の実際的な面から資金の収益力を明確に見ることが出来るから、資金運用の成果を示す指標として非常に重要なものとされている。
図15・16はこれらの動向を見たものであるが、預金貸出金利鞘において、北九州4金庫の右下がりの姿が一人目立っている。特に1998年以降、「全国」と北部九州および下関2金庫が利鞘を伸ばしたり横這いで推移しているの比べ、単独で0.7%ライン以下に落している。預金貸出金利鞘は言うまでもなく預金と貸出金の利回りという変動要因に大きく作用されるが、実は「預貸率」にも密接な関係を持ちその高低に大きく影響されるのである。
それも一般的には、預貸率で50%のレベルを割り込むと、この預金貸出金利鞘に相当程度影響を及ぼし“下方向”に引下げることになる。北九州市4金庫も現実問題として預貸率に高低の差があり、それがこの利鞘の割合(平均)に反映しているように思われる。その一方で、下関市2金庫は97年から反転し右上がりの緩やかな上昇を示しているが、これについては一般論としては良い貸出先と平均的預貸率とによってもたらされたものと推定される。
ところで図16の総資金利鞘を見ると、関門両市の6金庫は共に大きく下降している。既記の様に、この指標は貸出金に余裕金を含めた資金運用全体の利回りを表すから、有価証券等への運用がとりわけ下関市2金庫において芳しくなかったと言える。たしかに、この「超低金利」時代では、安全運用を前提に運用すれば年利0.02〜0.03%の世界である(しかもこれに伴なう保険料等を支払えば実質赤字の場合もある)わけであるから、厳しいなかでも相対的に有利な余資運用を出来る「全国」(=大都会)との同図に見る格差は、単に運用ノウハウの不足によって説明しきれない状況なのかもしれない。いずれにせよ、総資金利鞘の算出にあたっては、出資金・各種引当金・諸内部留保積立金などのいわゆる「無コスト資金」の運用も無視しがたい大きなウェイトを占め、その運用益の割合等も併せて計算されるから、北九州4金庫の後述のようにな自己資本比率の高さは、総資金利鞘に相応のプラスに働いている点も留意しておくべきであろう。
図15 預金貸出金利鞘 (%)
図15を見る
(資料)図1に同じ
図16 総資金利鞘 (%)
図16を見る
(資料)図1に同じ
(5)「安全性」指標から見た財務実態
「安全性」を見る指標としては、一人当たり無コスト資金、自己資本比率、延滞率などがある。これらの指標は近年の金融機関の破綻や合併(事業譲渡等含む)等が頻発している状況下では、金庫経営を計る物差しとして極めて重要なものとなってきている。
−人当たり無コスト資金は、上記の出資金・各種引当金・諸内部留保積立金などの「無コスト資金」(正確には無コストではない)の総計を常勤役職員数で除したものである(無コスト資金/常勤役職員(期中平均))。この資金は、同じく上記のように、仮に「逆鞘」になってもその内容と総額によっては利益計上が出来る、いわば潜在的収益力を表すものと言っていいであろう。
図17に見る通り北九州4金庫は、1996年以降漸次積み上げて2000年においてはその他の地域よりも積み上がってきている(対「全国」比・約740万円、対下関2金庫比・約950万円)。この無コスト資金は次に述べる信用金庫の自己資本をを構成するものでもあるから、他勘定とのバランスを失しない範囲で大きい方が健全性(=安全性)が高いということを意味しており、北九州4金庫のこの点での証明の一指標になっているといえよう。これに対し下関2金庫は96年段階で4277万円であったものが、その後3646万円(99年)まで低下し、2000年段階では4000万円を切って「全国」比でも低い状況である。目を引く99年の落ち込みは、先の「業務収支率」と「業務利益率」との指標の個所で述べた“単年度だけの特殊要因によって引き起こされたという『事情』”と連動した引当金等の内部留保取り崩し等の措置によるものと准走される。
注目の自己資本比率は、あらためて言うまでもなく、今日、金融機関の健全性(=安全性)を見る上で最も重視されている指標である。
図17 一人当たり無コスト資金(千円)
図17を見る
(資料)図1に同じ
国内基準に順ずる信用金庫の計算式を多少詳しく紹介すると、会員勘定(外部流出分を除く)+諸引当金(債権償却特別勘定を除く)+税効果相当額+その他別に定めるもの/総資産一債務保証見返勘定のうち別に定めるもの−債権償却特別勘定相当額×100となり、「4%以上程度を目標とする」11)とされている。
金融機関の経営は基本的に「預金」という他人資本を集めることによって成り立っているから、総資金のうちに占める自己資本の割合は他の産業(企業)に比べ低いのが通常である。しかし、自己資本は企業活動の基礎的資金であり、外部負債に対する最終担保力になるものであるから、自己資本比率の高い信用金庫ほど健全性(=安全性)が高いということになっている。ただ、自己資本比率が高くても固定比率(不動産投資等への固定資産投資の比率)が高い場合は、資産があっても収益性が低く、健全性、経営効率の面から好ましくないし、今日の様な不動産関係の大幅な値下がりの状況では、土地担保等が不良債権問題化の大きな要因ともなっている訳であるから一槻に高ければ良いものとも言えない。さらに言えば、自己資本比率を引き上げるために融資の抑制(いわゆる“貸し渋り”、“貸し剥し”)が横行している今日的状況下では、その様な形での自己資本比率の高水準化が地域密着を旨とする信用金庫経営にとって、はたして健全性を示すものなのかは大いに疑問であるところである。
しかしながら「4%程度以上」どころか、国際統一基準(いわゆるBIS基準で8%以上)が「一人歩き」し、健全性の目安にされている金融業界の実態からすると、ペイオフと業界再編という自らの“存亡の危機”と言ってよい環境の下にある信用金庫にとって、経営上一定の配慮をせざるを得ない状況でもあるのかもしれない。
図18はこの様な状況下における関門両市6金庫の自己資本比率を見たものであるが、ここでは下関市2金庫の「特殊事情」を反映していると見られる1999年の僅かながらの落ち込み以外は、各地域の自己資本比率は押し並べて緩やかな右肩上がりの上昇で推移している。一面的見 方をすれば、この間のデフレ下の深刻な景況は融資(貸出)需要の極端な低迷を導き、その融資減に伴なう結果としての自己資本比率の下げ止まり効果もこれら信用金庫経営に対して間違いなくあったであろうが、トータルに見ればこの自己資本比率の上昇こそは信用金庫関係者の上記ペイオフ実施日(2002年4月1日)を睨んだ身を削る努力の成果とも言えよう。
図18 自己資本比率 (%)
図18を見る
(資料)図1に同じ
もっとも、「全国」の自己資本比率は2000年においても10%にあり、北部九州においても同じく10.7%にあるわけであるから、14.6%の北九州4金庫の水準はやや高目の感が否めない。資金需要低迷下と言う外的環境の問題ではあるが、健全性範囲での積極的融資の姿勢が見えて来て欲しいところでもある。
ここでの分析の最後の指標である延滞率は、貸出金に対する延滞額(=延滞元金)の割合を示したものである。この延滞率は、資産の健全性(=安全性)を見る指標であるが、収益性の良否をも見ることの出来る重要なものである。算式は、延滞額/貸出金(期末)×100で、延滞金の範囲は3カ月以上の延滞貸出金の総額と言うことになっている12)。繰り返すまでもなく、収益の柱である貸出金の運営管理は信用金庫経営上の最大とも言える重要な問題である。したがって貸出金の延滞や焦付きを発生させないため、貸出の際には徹底した審査と調査とが求められるが、現実にはその後の情勢の変化等によって回収不能の事態に至ることも避けられない。とりわけ今日のような経済社会状況では、連鎖的倒産などにより融資対象企業の問題とは別の理由で、回収不能になることはよく聞かれるところでもある。
この様なリスク管理においては時系列的にこの様な不良債権の発生時期、内容、規模等の把握を行なうことにより、出来るだけリスク回避を事前に防止することが肝要であり、不幸にして発生した場合は早急に解消する努力が求められている。
図19はこれまで見てきたデーターと同時期の延滞率を整理したものである。信用金庫レベルでは、例えば1億円の焦げ付きが発生しても致命傷に成り得る経営体の規模あるから僅かなマイナス変化も注意深く診なくてはならない。信用金庫の「延滞」に関する“健全性”を示す率は3%前後だとされているようであるが、その一般基準からすると下関市2金庫は、これ以降の動向にもよるが、多少不健全化への道筋に入りかけている様である。またこれとは反対に、やや不健全な領域から3%レベルに是正してきているのが北九州市4金庫であり、さらに引下げてきている「全国」と併せてみると、これら両者のベクトルはこの時期、興味深いところである。
筆者のヒアリングでは、これは北九州市と「全国」の各信用金庫が手持ちの不良債権(回収不能債権)を、RCC(整理回収機構)や民間の回収専門機関(例えばオリックス、三洋信販、 あおぞら銀行など)に積極的に売却し、延滞率の引下げを急いだ為のようである。事実、2002年4月1日のペイオフ解禁に向けての預金移動は、現在、都市銀行・地方銀行・郵便貯金・証券会社などに「流入超」の形で有利に働き、第二地方銀行・信用組合には一方的な「資金流出」の結果を突きつけている。信用金庫は「流入」・「流出」の二つの流れに翻弄され、未だいずれとも判明していない。個々の信用金庫の真価が、正に、今、問われているところなのである。
以上、各指標に沿って関門両都市圏の信用金庫の「財務実態」を分析してきた。指標に沿った個々の問題点、課題等についてはそれぞれの該当個所で触れてきたので、終りにあたってはやや総括的な印象を述べてみたい。
あらためて言うまでもなく信用金庫は地域の金融機関であり、そこに住む人々と中小商工業者と共に経営発展していく存在である。ところが、その金融機関にとって今日のわが国の地域経済状況は最悪のものと言える。既にバブル経済の終末から「干支」が一回りしたにもかかわらず、一向に回復の目処すら立たないこの経済社会の閉塞状態は、地域と共に“在る”信用金庫にとって「為す術も無い」と言い放っても、決して許されないことではないほどである。
しかしながら、本稿で、誠に不足ながら、分析してきた成果を踏まえて中長期的に展望すると、信用金庫は、近未来においてすら、必ずしも悲観的にのみになる必要はない様に思える。たしかに、この分析でも触れたように、経営課題としての固定費(人件費、建物等物件費)の前向きの合理化や独自の資金運用ノウハウの開発等は、地域共生とのバランスを考慮しながら進めて行かざるを得ない実に困難な作業ではあるだろう。しかも「限られた範囲」の効率化と開発であればあるほどなお更である。
だがしかし、今回の“福岡ひびき信用金庫”の誕生と、これに続くとされる北九州市都市圏信用金庫の「大合併」は、経営規模としての限界を間違いなく乗り越え13)、地方中核都市としてのこの街のこれからの金融ネットワークの中心としての活躍に繋がっている様にに思える。そして、その過程における役職員による上記諸課題等への真撃な取り組みが、この活躍に相応しい筋肉質の体力を付けさせてくれるであろう。
筆者は、今回のこの分析作業と平行して福岡・北九州市都市圏ベンチャー企業(及びベンチャーキャピタル)の実態調査(「北九州市の産業」2001年版(財)北九州都市協会・発行)を行なったが、この街には21世紀を担うIT、ロボット、バイオ、医療等々の新産業の「芽」が確実に育っている。翻って戦後の復興期を顧みれば、20世紀後半期を担ってきた電機・機械・自動車をはじ めとする先導産業群が各地域で発芽し、今日で言うベンチャー企業として発展し、世界企業へと大きく羽ばたいたのである。そして、それらの発芽と成長期に、街の金融機関「信用金庫」が常に側に在ったことを、われわれは今思い起こすべきであろう。
幸いにも信用金庫業界は、この度、新産業の育成機関として中央に「信金キャピタル」を誕生させた。地方の信用金庫のこの面でのサポート機能を強化するというこの施策は上記の流れを促進し、ひいては独自性のある力強い信用金庫経営に繋げてくれるものと期待できる。本稿がこの様な信用金庫の新しいチャレンジに多少とも寄与できれば幸いである。
(注)
1)1963年の北九州市の誕生(5市合併)から最近までの同市の金融構造と特徴については、拙稿「北九州都市圏の金融構造とその動向」北九州大学産業社会研究所「北九州産業社会研究所紀要」第40号(1999年3月)を参照ねがいたい。
2)貸借対照表を中心に信用金庫の資金運用を多業態と比較しながら分析したものとして、楠本博『信用金庫の時代』第6章「バランスシートから見た信用金庫」近代セールス社などがある。
3)特定地域の信用金庫の「営業地盤」に関する経済地理学的研究としては、堀江康熙「金融機関の収益構造に関する研究」科学研究費補助金研究成果報告書・課題番号12630104(平成14年1月)などがある。
4)信用金庫のディスクロージャー誌としては、城南信用金庫(東京)が業界では初めて平成8年から取り組み始めている。(経営内容の開示は更に早く、平成4年に「要注意貸出先」(不良債権)の残高を開示している。)
5)この比率は収益と費用の対比であるから、比率の上昇や低下については収益や費用が生じる要因となる運用資産及び調達資金、自己資本の構成比率、運用利回り、資金コスト等を検討する必要がある。検討にあたっては、○業務収益率=業務収益/資産運用勘定計平残×100、○業務費用率=業務費用一金銭信託等運用見合費用/資金調達勘定計平残
6)なお、業務利益率の変動は、資金収益率の上昇(低下)や業務収支率の改善(悪化)により影響を受ける。資金収益率を高める為には、資金内容の改善または個々の運用利回りを上昇させることが必要となり、また、業務収支率を良好にさせるためには、コストな削減が要求される。
7)1985年3月から市場金利連動型預金(大口MMC),同年10月から大口定期預金、以降大口から小ロヘ、市場金利連動型から自由金利商品へと段階的、漸進的に進められ、1993年6月には定期預金金利の完全自由化を完成した。また、流動性預金金利の自由化については、1992年6月の新型貯蓄預金(市場金利連動型、最低預入額40万円、20万円)の導入以降、1993年10月にその商品の改善がなされ、1994年10月に当座預金を除く流動性預金の自由化が完了した。
8)なお、経費率は、経費の区分によって人件費率、物件費率、税金率に分けることが出来き、検討にあたっては、これらの各比率を地区平均、同規模平均等と比較して相対的に高低を見るとともに、常勤役職員一人当たり経費、同人件費、同物件費の支出水準の高低と増加率及び預金パーヘッドについて併せて検討する必要がある。
9)此処に述べているのは、あくまでも一般的傾向であり、預貸比率の高い信用金庫においても証券運用を積極的に行っている場合も見受けられる。この場合は預証率で見ることになる。
10)より詳しい算式では、預金貸出金利鞘=貸出金利回り−(貸出金平残/預金平残×預金利息+経費/貸出金平残)=貸出金利回り−{預貸率(平残)×預金利息+経費/貸出金平残}となり、預貸率と密接な関係がある。したがって利鞘が一定であっても預貸率の変動で利益額影響を与えることになるので、預貸率の動向及びこれが業務収支に与える影響をも併せて検討されなくてはならない。
11)「4%以上」については、1993年3月31日付大蔵省告示第62号によって定められている。なお、自己資本については、信用金庫基本通達別紙8「決算経理要領」3において収益の内部留保に務め、その充実を図ることを定められている。出資金の増額による自己資本の充実については、規模的にみて出資の割合が高い場合は、出資配当率という外部流失の要素が増大することになるので、自己資本の効率運用と併せて検討されなくてはならない。
12)延滞貸出金の把握としては、3カ月以上6カ月未満の貸出金及び6カ月以上の貸出金に分けられているが、延滞率を算出する場合は3カ月以上の延滞貸出金の総額で把握し、場合によっては実質延滞率も算出される。実質延滞率の算出は、延滞額一債権償却特別勘定/貸出一債権償却特別勘定×100である。
13)「大合併」後の預金総量は、5000億円を超えることになり、現在信用金庫業界で想定している地方中核都市の理想的信用金庫規模にほぼ達することになる。同業界は大都市における同水準規模を凡そ1兆円超と想定しているようである。
(参考文献)
信金中央金庫「全国信用金庫概況」各年版
同 上 「全国信用金庫統計」各年版
金融図書コンサルタント社「全国信用金庫財務諸表」各年版
信用金庫研究会「信用金庫便覧」2001年版
数坂孝志「日米の金融再編と地域金融」大阪市立大学「季刊経済研究」第24巻1号
由里宗之『米国のコミュニティー銀行』ミネルバ書房
木村温人「北九州都市圏の金融構造とその動向」『北九州産業社会研究所紀要』第40号
その他:関係各信用金庫「ディスクロージャー誌」各年版
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