4. 2001年全国「地域通貨」統計調査報告
    〜機能制限貨幣とコミュニティ再生〜
                    

道 盛 誠 一(下関市立大学)
三 浦 大二郎 (下関市役所)

1 は じ め に

 「地域通貨」なり、「エコ・マネー」なり、このところ話題にされ、新開やテレビで報道されること頻りである。NHK衛星放送の『エンデの遺言』が評判をとり、この種の取り組みがいやまし脚光を浴びるようになった。その続編も放送されたばかりである。「エンデ」とは、もちろん『モモ』の作者ミヒヤエル・エンデである。彼と友人たちとの談論風発を写した、記録『オリーヴの木の下で』を思い起こすひとも少なくないであろう。彼の人となりと彼の目線の有りようを窺い知るには格好の書物である。『モモ』を借りれば、彼の現代経済システム批判は、床屋のフージーさんの一節に凝縮されているといえる。市場経済のつまるところを時間節約に見定め、「人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそって、なくなってしまうのです」と結ぶ件りである。貨幣経済の姿をとった市場経済のなかで、ひとは何を得、何を失ったのか、という問いは、われわれにとって真摯に取り組むべき課題を鮮明にさせてくれる。
 「地域通貨」を主題にした、書物も記事も、そして論文も、急速に増えた。ネット上でも、同種のメイリング・リストが活発に稼動している。われわれは、この新しい現象に惹かれ、文献サーべイに取り組んできた。貨幣論の視点からこの種の試みをどのように秤量すべさか、未だ留保すべき論点を残しながらである1)が、日本の実態を知りたいと強く思うようになった。日本での取り組みは数十とも、百を超えるともいわれていたが、全貌が明らかになっているとは思えなかったからである。
 2001年に入り、本格的な統計調査のための予備調査と位置づけて準備を開始した。が、調査内容を検討するうちに、本調査として取り組むことに決し、同年5月には調査票を郵便で送付した。調査票の送付先は、各種の関連文献のほか、雑誌や新開の記事ならびにインターネットを参考にして作成したリストによっている。情報をえてリストに掲載しながら、団体名や連絡先を特定できなかったものについては、郵送を断念せざるをえなかった。実際に送付した団体数は、91団体にのぼる。
 調査にご協力くださった団体ならびに回答者の皆さまには、心から御礼を申し上げたい。自由記入欄にも積極的に書き込んでいただき、感謝にたえない。調査結果のとりまとめは当初予定を大幅に超えてこの時期となってしまった。遅れのお詫びを申し上げ、寛恕を願いあげるものである。
 なお、この報告書を関門地域共同研究会の報告集に収録して公刊することになった。本調査が関門地域におけるコミュニケーション増進になにがしかのきっかけをあたえることがでされば幸いである。
第1章の集計表の各表ならびに第2章の分析表の各表において、空白欄は回答ゼロであったことを示している。分析表の数値で、単位表記のないものは回答数である。

1)この点については、別稿を用意している。また、「地域通貨」という語彙は一般に流布しているので、われわれも慣用にしたがって用いているが、その名のもとに取り組まれているものはきわめて多様である。その多様性に鑑みて、それらに共通の呼称を与えるとすれば「機能制限貨幣」がふさわしいであろうと、われわれは考える(三浦大二郎『現代経済システム批判一機能制限貨幣の再生が問いかけているもの』2001年度下関市立大学大学院経済学研究科修士(経済学)論文)。

2 集 計 結 果

 郵送で調査票(付録2)を送付し、返送して頂くという方法で調査を行った。送付した団体数 は91。回収数は47(回収率51.6%)。このうち有効回答は39であった。地域通貨存在せずとの回答は7、存在するが開始直後の為回答できないとするところ1であった。
 回答者については下記
の通りで、「その他」の回答状況を勘案すると、ほぼ団体事務局長相当の回答者をえたことになる。

回答される方について
1.団体事務局長
2.地域通貨担当者
3.その他   
有効回答 35
18
9
8(団体事務局、運営委員会代表世話人、代表理事、全くの個人、連絡係、理事長、商工会議所専門経営指導員、代表世話人)

 回答をいただいた団体の事務局の所在地を、政令指定都市・市・町・村で分類すると次のようになる。

事務局の所在地 回答団体数
政令指定都市 13
21
11
2
合   計 47

(1)「団体について」の結果
質問1−1:団体名称について  省略(付録1.回答団体リストを参照されたい)

質問1−2:法人の形態について(有効回答 39)
  
 1. NPO法人10(26%)
 2. 任意団体25(64%)
 3. その他4(10%)
*3.「その他」の内容は、県庁の政策研究グループ、社会福祉協議会、商店街振興会、商業振興組合であった。商店街振興会、商業振興組合も任意団体と推量されるが、実際の回答通りとした。また、任意団体と回答した団体の中に、自治体設置と思われる任意団体もあった。

質問1−3:団体発足年月日(有効回答28)
  有効回答28団体のうち、25団体は1994年〜2001年間に発足したものであった。これ以前は、2ケ所の商店街振興組合の1970年と1981年、ならびにNPO法人の1991年である。1994年〜2001年の間に設立された25団体に関して設立年毎にまとめてみると次のようになる。

Ql-3発足年別団体数

西 暦 団体数 うちNPO法人
1994 3 2
1995 1  
1996 1 1
1997 1  
1998    
1999 6 1
2000 9  
2001 4 1
合 計 25 5

質問1−4:団体設立の主な目的(有効回答 39 うち複数回答1計40)
 
 1. 地域通貨16(40.0%)
 2. 地域振興5(12.5%)
 3. 環境保護2(5.0%)
 4. ボランティア5(12.5%)
 5. その他12(30.0%)
 *5.「その他」の内容:野宿生活者の自立支援;まちづくり活動に関するもの(4団体);交流;中間支援;市民活動センターの運営;商店街振興;地域通貨の研究;市民型社会の実現;地域活性化・コミュニティ

質問1−5:現在の総会員数(有効回答 36)
 時間貯蓄制度を実施している団体は、その内容から会員数の意味合いを異にしているが、1団体は1,650人、残りの2団体は1万人を超えている。
 単位として、店舗、家族、店舗・NPO・グループ・個人を用いる団体がそれぞれ1団体づつあったが、ここでは便宜上、1単位を1人に読み替えて掲出した。

Ql−5 人数階級別団体数

人  数 団体数
1〜 20 6
21〜 50 11
51〜100 10
101〜 500 5
501〜1000 1
1001〜 3
合   計 36

質問1−6:自治体との関わり(有効回答 39)
 
 1. 自治体である2(5%)
 2. 自治体の関連団体である3(8%)
 3. 公設民営であり、支援をもらっている1(3%)
 4. 公設民営であるが、現在は支援なし0(0%)
 5. 民設民営であるが、支援をもらっている5(13%)
 6. 完全に独立した機関である27(71%)
その他として、自治体・NPO・民間が共同設置という例もあった。
  
質問1−7:地域通貨取扱いに関する事務局の有無(有効回答 39)

 有 29(74%)
 無 10(26%)

質問1−8:地域通貨事務に関する専従者の数(有効回答 28)

 事務局が存在する場合、それに従事する人員が存在することが想定される。ここでは、上記質問1−7に“有”と回答していただいた団体をまとめてみた。回答された数値をそのまま掲出している。ちなみに、8人以上の3団体は、いずれも時間貯蓄制度である。

Ql−8 地域通貨事務に関する専従者の数

人  数  団体数
0 15
0.5 1
1 6
2 3
8 1
13 1
140 1
合   計 28

質問1−9:団体業務全体における地域通貨業務の割合(有効回答 34)

地域通貨を目的として設立された15団体のうち13団体は、その団体業務全体における地域通貨業務の割合が100%である。

Ql−9 団体業務全体における地域通貨業務の割合

割 合(%) 団体数 地域通貨を
目的に設立
10未満 8 2
10以上30未満 7  
30以上50未満 2  
50以上70未満 3  
70以上100未満 1  
100 13 13
合 計 34 15

質問1−10:地域通貨事務を専従で行う人の報酬形態(有効回答 20 うち複数回答2 計22)
 この質問にたいしても、事務局があることが前提である為、質問1−7に“有”と回答していただいた団体をまとめてみた。

Ql−10 地域通貨事務を専従で行う人の報酬形態

報酬形態  人数
雇     用 4
有償ボランティア 2
無償ボランティア 11
地域通貨での支払 5
合   計 22

※「その他」という回答はなし

(2)「地域通貨の発足について」の結果
質問2−1:きっかけ(有効回答 38 うち3項目回答団体 2 計 42)  
 1. 不  況0(0%)
 2. 地域振興6(15%)
 3. 環境保護6(15%)
 4. コミュニティ再生21(49%)
 5. その他9(21%)
*5.「その他」は、団体目的(まちづくり活動への市民参加促進)達成のツールとして;助け合い;NPOの中間支援;市民活動センターの運営についての労力提供;地域内住民助け合い;「エンデの遺言」;貨幣の尺度機能のゆがみ;ボランティアを等しく維持するためのツール;まちづくり全般、という回答であった。

質問2−2:発足年(有効回答 37)
  ボランティア労力ネットワークの1973年が最古であり、日本ケアシステム協会の1991年がこれに続く。1995年〜1998年間に発足したものはない。 1994年以前の地域通貨は、すべて時間貯蓄制度である。なお、2001 年は本調査年で、調査実施は年央である。

Q2−2 発足年

西  暦 発足数
1973−1994 4
1999 5
2000 20
2001 8
合   計 37

質問2−3:発足時参加人数(有効回答 36)
 単位として店舗、家族、店舗・NPO・グループ・個人を用いる 団体がそれぞれ1団体づつあったが、ここでは便宜上、1単位を1 人に読み替えて掲出した。 1000人、100人、80人の各1団体があり、いずれも時間貯蓄制度。186人、88人の各1団体があり、エコ・マネー団体。別に80人の1団体があり、商店街振興組合であった。

Q2−3 発足時参加人数

人  数  団体数
1〜20 17
21〜50 12
51〜100 5
101〜500 1
501〜1000 1
1001〜  
合   計 36

質問2−4:地域通貨の今後の存続について(有効回答 38)
 1. 実験運用につき現在休止中9(22%)
 2. 実験運用につき休止予定0(0%)
 3. 実験運用であるが当面存続予定8(22%)
 4. 本格運用である21(56%)

(3)「地域通貨実施による効果について」の結果

質問3−1:不況への効果(有効回答 25)
小 ← 効   果 → 大
効    果 1 2 3 4 5
回 答 数 6 3 10 4 2
24% 12% 40% 16% 8%

質問3−2:地域振興への効果(有効回答 25)

  小 ← 効   果 → 大
効    果 1 2 3 4 5
回 答 数 4 3 8 7 3
16% 12% 32% 28% 12%

質問3−3:環境保護への効果(有効回答 26)

  小 ← 効   果 → 大
効    果 1 2 3 4 5
回 答 数 3 4 10 8 1
12% 15% 38% 31% 4%

質問3−4:コミュニティ再生への効果(有効回答 30)

  小 ← 効   果 → 大
効    果 1 2 3 4 5
回 答 数 1   6 13 10
3% 0% 20% 43% 33%

「その他」効果があったとされる事項については、仲間つくり(2団体が効果5)、低所得生活への実利(効果4)、ささえあい精神の育成(効果4)、不特定多数市民のまちづくり活動への参加(効果5)、助け合い(1団体が効果4、1団体が効果5)、センターの運営への参画(効果5)、コミュニケーションの手段(効果5)、遠隔地域間の助け合い(効果5)、ボランティア活動が拡大(効果5)、平和運動の一環として(効果5)、共同事業のきっかけ(効果5)となっている。

(4)「地域通貨について」の結果
質問4−1:地域通貨の名称  省略(付録1.回答団体リストを参照されたい)

質問4−2:地域通貨の方式(有効回答 39 2種併用団体3 計42)
 
 1. 紙幣方式16(38.1%)
 2. 通帳方式17(40.5%)
 3. 小切手方式2(4.8%)
 4. その他7(16.7%)
 *4.「その他」の内容:コイン;石;バーチャル型;借用証書方式(2団体);1時間1点;
 オリジナルチップ

質問4−2−ア:発行にかかる費用の負担主体(有効回答 33)
 A.一般からの寄付でまかなう
 B.自治体からの補助金
 C.会費で補う
 上記の内容で占める割合の高い順に記入していただく形式であったが、どの団体も3種の予算を持っているわけではないため、回答数に差が出ている。

Q4−2−ア 発行にかかる乗用の負担主体

  大 ← 依 存 度 → 小  合  計
A
5 7 3
15
B
7 2 5
14
C
21 6 0
27
回 答 数
33 15 8
56

その他、センター運営経費で支払うという例もあった。

 なお、33団体中19団体が、単独の財源に依存しており、5団体が2種類を財源に、9団体が3種もしくはそれ以上の財源をもっている。

質問4−2−イ:発行にかかる費用についての負担度(有効回答 34)

Q4−2−イ 発行にかかる責用についての負担度

  回答数
負担になっている 3 8%
将来的に負担になるかもしれない 7 21%
賄えると思われる 24 71%

質問4−2−ウ:現在使用している方式の使い勝手(有効回答 34 ただし、選択肢外の回答3を含む)

Q4−2−ウ 現在使用している方式の使い勝手

  回答数
使いにくい 4 12%
使いやすい 27 79%

 現行のものが使いやすいという意見が8割を超えた。“両方”という項目は設けていなかったが、使いにくいところもあり、使いやすいところもあるという意見が3箇所からあった。
 「使いにくい」理由:偽造対策や半券方式が面倒;その都度記帳するのが面倒;時代と共に変化するがその対応が難しい;取引の度に記載する方法は個人間の取引ならあまり問題ないが商店では活用しづらい;取引記録の報告もしない人が多い「使いやすい」理由:単純だから;1カ年の試験期間で問題を解決;常に活動履歴が確認できる;現在のところセンター内のみで使用するだけのものであるから;残高を気にしないで使えるし発行管理がいらない;ゲーム感覚なところ;チップ20枚をセットにしコンパクトな袋にいれている為利用しよい;取引の際に記入等は必要ない;お金と同じように使える;楽しい;手伝ってもらった人が手伝ってくれた人に手渡すだけ;お金の感覚に近いが但し流通状況が把握しにくい;すべてマニュアルにもとづき事務局が管理し本人にも通帳渡す;シンプルで事務局の手間が最小限になる;チケット制度として扱っているのでやりやすい;通帳をいつももっているわけではない;2つのタイプを使い分けているから、個人会員の記録等の軽減とわかりやすい

質問4−3:質問4−3−1〜質問4−3−3は、質問4−2で“1.紙幣方式”と回答した団体のみ回答を依頼した。

質問4−3−1:加入者に対する最初の紙幣の発行方法(有効回答15)

Q4−3−1加入者に対する最初の紙幣の発行方法

  回答数
無償で配布することにしている 9 60%
会費と引き換えで発行している 4 34%
加入の事実だけでは発行しない 2 13%

 紙幣無償配布団体の配布内容(記入分のみ):受けたいサービスの2倍;紙幣を10枚発行;1回のボランティア作業に村し1単位支払う;第1次実験時は一律に20000で、第2次実験時は一律に5000
 会費引換団体の配布内容:紙幣を20枚発行;入会金3000円のうち2000円分を発行;有償で行なうボランティア活動した人がチケットをもらう;支払った金額分だけ
 加入の事実だけで発行しない団体:最初の取引成立まで発行せず(もう一つの団体は、記入がなかったが、時間貯蓄制度採用団体のため、最初の取引まで発行しないと思われる)

質問4−3−2:紙幣の劣化と交挨(有効回答15)

Q4−3−2 紙幣の劣化と交換についての方針

  回答数
まだ考えていない  3 20%
劣化があり交換を行っている 1 7%
劣化はみられず交挽の必要は現在ない 4 27%
将来的には必要であると思われる 4 27%
その他  3 20%

「その他」の内容:有効期限が1年;3回交換すると新しいものに交換といった手段をとっているので、結果的に劣化の問題をクリアしている;3ケ月間と期間を限定している実験の為、考慮しなくてもよい

質問4−3−3:発行額総量に対する制限設定の有無(有効回答15)

Q4−3−3 発行額総量に対する制限設定の有無

  回答数
制限をしていない 12 80%
制限をしている 3 20%

「制限をしている」内容(記入分のみ):年間一人当たり20枚;年間一人50点

質問4−4:報告方法について(有効回答 37 うち2種回答団体2 計39)

Q4−4 報告方法

  回答数
交換ごとに知らせてもらっている 5 12%
一定期間ごとに提出を求めている 13 33%
とくに記録の提出を求めていない 16 41%
通帳方式の為、記述がいっぱいになった時点で提出してもらう 3 8%
その他 2 5%

「その他」:紙幣の真に日付と名前を記入し実験終了後商店から回収;紙幣方式であるが、3回交換しか使用できず、それを提出

質問4−5:発行単位について(有効回答 37 ただし、選択肢外の回答3を含む)

Q4−5 発行単位

  回答数
日本円準拠(例1000円=1000下関) 8 22%
日本円準拠だが時間に換算した目安が有る 10 27%
時間準拠 (例1時間=1下関)  10 27%
時間準拠だが日本円に換算した目安が有る 6 16%

その他:運営にかかわる労力などに応じて発行単位を決める;円準拠であるが、“パン本位制”;基準は全くナシ

質問4−6:サービスと物の取引全体にしめる交換の割合(有効回答 37)

Q4−6 発行単位

  回答数
サービスははとんど交換されていない 2 5%
サービスも交換されているが、主に物の交換である 5 14%
サービスも物も同様に交換されている 14 38%
サービスの方がよく交換されている 5 14%
ほとんどがサービスの交換である 11 30%

「サービスははとんど交換されていない」理由:通貨の使途を協賛企業サービスに限定しているため(企業は広告費の充当にあてる);1回目の実験ではイベント内の物品交換媒体としたから

「ほとんどがサービスの交換である」理由:基本的には1時間活動すれば1点というシステムでの変換が基本であるから;会員の様々な能力の交換を目的としたため;ボランティによる助け合いを基本にしているから;物の交換を想定していない;タイムダラー方式をとっているから;環境保護の観点から物の交換は対象にしない;コミュニティの再構築を目的としたエコマネーなので、物一円とはリンクさせない;サービス以外の交換は、現在のところ取り入れていない

質問4−7:交換時の参考価格の例示(有効回答 36)

 Q4−7 参考価格の例示

  回答数
例示している 16 44%
例示はなく当事者が決定 20 56%

「例示している」団体へは、つづけて参考価格での取引について質問した。

質問4−7−1:参考価格での取引(有効回答14)

Q4−7−1参考価格での取引割合

  回答数
ほとんどが参考価格での取引 6 43%
そうでない場合もある 5 36%
参考価格での取引は少ない 3 21%

例示せず取引価格を当事者が決定している団体へは次のような質問を行なった。

質問4−7−2:値付の仕方についての相談を会員から(有効回答 20)

Q4−7−2 値付の仕方についての相談

  回答数
もとめられる 4 20%
あまりもとめられない 11 55%
全くもとめられていない 5 25%

質問4−8:お礼(上乗せ支払い)について(有効回答 26)

Q−8 お礼(上乗せ支払い)ついての奨励度

  回答数
奨励しているがほとんどない 1 4%
奨励しているし、実際多くある 2 8%
奨励していないし、ほとんどない 19 73%
奨励していないが、実際多くある 1 4%
その他 3 12%

「その他」の内容:奨励していないが多少ある;把握できない;奨励していない

質問4−9:課税に対する対策(有効回答 37)

Q4−9 課税に対する対策の実施

  回答数
対策をしていない 32 86%
対策をしている 5 14%

具体的な対策の内容としては下記の通りであった。

1. 発行起源はまちづくり活動への奉仕に限定(対物ではない)。したがって通貨は参加の証明に過ぎない。交換は企業サービスとの交換に限定されており、企業ごとに消費税の扱い方を決定している。

2 円との交換はしていない。円で売られているものは買えない。

3 7軒の商店が参加しているが、地域通貨による取引部分も売上げとして計上するように指導しています。個人間取引については今のところ全く考慮していません。

4 所得税提出(原文どおり:申告のことか)。

5 課税された場合は、地域通貨を含めた売上額の中から円貨で税を支払うように事前に商店や専業者には説明している。

(5)自由記入欄について
1.「これはよかった」と思う点(以下団体単位に箇条書き)
・使いながら、経験しながら、納得したり話し合って変えていけるものであるとわかった。
 人の眠っている才能や能力が自然に引き出せる。市民レベルの様々な団体・NPOとの交流ができる。
・意外な情報の交換が有意義である。
・これまでとは全く違う人のつながりができる。知人の意外な特技、側面がわかっておもしろい。
・人の輪が広がった。自分の能力の再発見の場となった。URL上のGIVEME,GIVEYOUが好評。
・地域通貨を縁に新たなネットワークが広がったこと。
・地域通貨を介在させることにより、「してもらった」「してあげた」という関係ではなく、対等性ができた。制度のはざまのニーズの掘り起こしができる。
・今まで関係がなかった地域、分野、業種の人と知り合いになった。環境問題と経済をからめて考えられる人が増えた。
・コミュニケーションの手段としては有効である。
・ただの知り合いだった人が親兄弟のように思える様になった。
・1時間1点という自分の時間を他人に使い、他人の時間を使って助けていただくという関係は、おごりもへりくだりもない、平等な相互扶助ができる。28年前に得た愛の通貨は今も1時間1点で目減りしない。東京で親が病気になった時、近くの会員が助けて下さった。技術の伝播が世代を越えてできた。同時の2つの手が要る時、このカードで自分にかわって一つをやって貰えた。
・話題になることの少なかった商店街が注目された。それにともない商店街活動へ参加していただくきっかけとなった。地域通貨というものとその活動の告知になった。
・全国ネットの時間預託制度なので転宅しても使える。離れて故郷で暮らす親にも使える。時間をお金に変えないとしているため税金等の負担はなく、寄付もできる。無償ボランティアを継続して楽しくやるためのツールとしたこと。各人と組織全体のボランティアした時間の記録と自己評価。
・家族会員制ですので気軽に家族ぐるみ参加し、家族同士の付き合いが新しく始まるなど、人間関係の広がり、深まりをみせている。
・善意を形にできた点。安心の仲間づくりの一助に貢献。
・世代間の交互に必要。
・メンバー同士のつながりが強くなった。
・会員同士の会話増ヘコミュニケーションがとれるようになり仲良くなった(地域コミュニティの構築ができつつある)。
・たくさんの新しい出会いがあり、多くの人とつながりを作れた。今のお金や社会の問題点と地域通貨の持つ重要性を、まだ少数の人ながら理解してもらえた。人に感謝されることや、心配される=大切に思ってもらうことが多くなった。人間の暖かさに触れることができた。
・「未来に希望が持てた」と感謝された。
・人間的に少し成長できた気がする。

2.「これはしまった」と思う点(以下団体単位に箇条書き)
・任意の団体なのでコアの人間関係がとても大切で、その中で何度かしまったと反省することがあります。
・本当に熱意がある人、世話好きな人がいないとむずかしい。
・一人で極端に多くGIVEME,GIVEYOUを出す人が出てきて、URL上も処理上の問題がでてきた。
・試行中なのでまだ何でもありの段階。3ケ月程度思考をする中ででてくると思う。
・やや排他的な感がある。取引の多い人と少ない人の開きが大きすぎる。
・いざ始めて見て当初の目的を達成するには、案外事務局の手がかかるということに気がついた。コミュニケーション手段としては有効であるが、反面、コミュニケーションが良くなってくると通帳をあまり使わず取引するようになり通帳が形骸化する。
・あまり見当たりません。キャンセルを急にしないことを心がける(他人のもてる時間を大切にする為に)。
・使用の際裏に名前を書いていないだろうと思われるものがあり流通経路がわからなかった。商店ごとで活動に対する理解度に差がある。
・準備期間が短く一人ですべてを準備した為、通帳のデザインが悪い。一周年を迎えてデザインを一新したい。
・当初会員相互の通貨交換を意識しすぎた(最近は公共のボランティアには事務局から通貨を発行している)。
・考える人同志の集まりとなり新たな加入者が増えない。
・通帳をもっていなかった、紛失した、誤記入したに対する対策を考えているところ。
・運営がこんなに大変だとは思わなかった。IT化やICカード化が必要だと思うが予算がない。行政もしくは志のあるスポンサーの支援を期待したい。会員を増やしたいばっかりに地域通貨の意義を理解していない人も引き入れてしまった。(地域通貨は今の時点ではメリツトが少ないため、円貨と同じ感覚のまま入って来られると不満がでるし、それに対応するため、有志が苦労してしまう。)

3. その他あればご自由に(以下団体単位に箇条書き)
・いわゆる相互扶助方式の地域通貨ではないので、どこまで参考になるか・・・。
・むずかしい定義や理論を抜きにして楽しめるしくみをめざした方がよいと思う。
・地域的にかなり広がり(現在50名)、今後分離してそれぞれが独立しそれを有機的に結び付けていきたい。
・福祉系ボランティアから出発した。1時間活動すれば1点とし時間預託をしておき必要なときに引き出して同時間のサービスを受ける仕組み。現在40団体センターとネット化。
・会報などの情報発信だけでは行動に結びつきにくい点もある。月1度位は会員間の直接対話ができる場面設定が必要。
・現在、当方のコミュニティ通貨は休止中である。次のステップを研究中:1.ネット通貨の方向性 2.目的別通貨の方向性(福祉通貨、農産通貨など)3.融資機能を備えたコミュニティバンクの方向性(新規就農者の支援策、市民事業の支援策)
・マネーシステムのマジックに気がついた。
・生きていく上で、お金がそれはど重要でないとわかった。
・少子化、核家族の現在、血縁に関係ない家族のような関係ができる。1人娘が他の会員の子の勉強をみているうちに弟の出来たような喜びを感じた。
・よその老人のお世話を実数でしているうちに介護勉強ができ、自分の親の介護に役立った。自分の老後にも役立つ。年代をこえた人の輪が出来る。物質主義でなく、こころの暖かさを知る。
・ラオスの小学校建設を支援していた商業高校は昨年から商店街振興組合と交流している。より関係を深めるためのツールとしてエコマネーの検討をしている。
・コーデネーターと会計と事務をすべてボランティアでやっているが、事務局体制がしっかりしていてマニュアルを持っていることが大切である(全国ネットなので尚更必要)。
・地域通貨はそこに参加する人々の信頼関係で成り立つものですし、永続性を維持する為にも事務局に負担がかかるようなシステム設計すべきではないと思います。マイナスの限度額を決める。
・取引の内容を事務局に報告させるなどは信頼で成り立つ地域通貨にふさわしくありません。
・地域通貨の取り組みは日本では始まったばかり。まだまだこれから皆で作り上げていくものです。しかし、その可能性は無限大です。早計な判断はするべきではないと思いますし、気長に長い目で育てていってほしいと思います。

3 分   析

(1)団体についての分析
 1) 日本に地域通貨が入ってきた時期〜1999年
 質問1−2を見ると、有効回答26団体のうち、18団体が1999年以降の設立であり、1999年以降に設立された団体が圧倒的に多い。この1999年という年には、わが国固有の背景事情を見てとることができよう。
 まずは、集計結果をふりかえってみよう。第一に、地域通貨を実施していると回答した団体のうち3割がNPO法人であった。第二に、有効回答団体の4割弱が地域通貨を実施することを目的に設立されている。
 さらに、地域通貨を目的とした団体の設立年を調べてみると、設立年月日と目的の両方に記入があった団体は、9団体であるが、1999年に2団体、2000年に5団体、2001年に2団体と、どれも最近の設立であることがわかる。
 ただし、地域通貨の中でも、時間貯蓄制度のような形態をとるものは、より以前から存在している。日本における地域通貨の取り組みにおいて先駆をなすのはこの種の形態である。最も早いものは、約30年にわたる歴史を刻んでいる。当時の新聞報道が鮮やかによみがえる。
  なお、地域通貨を目的とするもの以外では、地域振興があげられる。その他に回答のあった、まちづくりや商店街振興会、地域活性化もそれに類するものと考えると加えると11団体がこれを目的にしている。

2)人数的な広がり〜団体の規模の拡大
 団体の規模が小さいことに気がつく。始まって間もないこともあるであろうが、イギリスのLETSと称される形式の地域通貨では250人を超えるグループが存在しているのと比べるとまだまだ小さい。2)
 時間貯蓄制度を実施している団体は、その内容から会員数の意味合いを異にしているが、1団体は1650人、残りの2団体は1万人を超えており、こちらはしっかり根付いてきている感がある。

 Ql−3とQ2−2を合成すると次のようになる。
 ほとんどの団体が3年以内に地域通貨を実施したことを考慮すれば、急激に団体が大きくなってきていることがわかる。なお、外国の調査において、地域通貨は時間の経過と共に大きくなっていく(古いグループはど多くの人数が参加する)傾向があると指摘されているが、日本の地域通貨は前述の様に1999年以降に設立されたものが多いため、この点に関しては今後の追加調査において明らかにするつもりである。

表1 発足時と現在の人数階級別団体数比較

人  数 発足時参加人数 現在参加人数
1〜20 17 6
21〜50 12 11
51〜100 5 11
101〜500 1 4
500〜1000 1 1
1001〜   3
合  計 36 36

3)地域通貨の事務局と職員〜事務局の必要性と無償ボランティアの協力
 地域通貨取扱いに関する事務局を設けているところが多い。個人と個人の取引を中心とする制度が基本であるが、おそらく存続していく為、あるいは立ち上げ時の牽引力として事務局の必要性がある為にこのような結果が出たのではないだろうか。NPO法人や地域通貨を目的に設立された団体が多いことも事務局の設置有の回答数を増やしている一因と思われる。
質問1−8と質問1−10の結果を基に再集計してみた。

表2 地域通貨事務専従者人数別給与形悪

人  数 団体数 雇  用 有償ボ 無償ボ 地域通貨
0 15     4 3
0.5 1     1  
1 6 2 1 3  
2 3 2   1  
8 1       1
13 1   1    
140 1     1 1
合  計 28 3 2 10 5

(0人と140人の欄で“無償ボランティア、地域通貨”と複数回答した団体あり)

 専従をおいていない団体(0人と回答した団体)では、地域通貨に関する事務局労働は、無償あるいは地域通貨で対価が支払われている。一方、専従の人員を配置しているところはやはり、何らかの形で支払っているようである。
 一方、事務局無と回答した団体のうち3つが、“無償ボランティア”と回答している。事務局はなくとも、事務局に相当する業務が発生し、それを無償ボランティアに依存しているものと考えられる。
 また、地域通貨を実施している団体はその団体内で通用する地域通貨で対価を支払っているだろうとわれわれは想定していたが、実際には無償ボランティアに頼っていることが分る。
結論としては、地域通貨には少なくとも初期の段階では事務局が必要であり、その労働力は無償ボランティアの労力に頼らざるを得ないという現状が見て取れる。

4)地域通貨を実施したきっかけと地域通貨のもたらす効果〜コミュニティの再生

 他国の地域通貨が生まれるきっかけとして、高い失業率や貨幣不足などのいわゆる不況、それも急速なグローバリズムを背景にしたものがあげられることが多い。今回この点を考慮して、不況という選択肢を用意していたが、回答皆無という結果がでた。
 今回の調査において地域通貨がもたらす効果としてあげられているのが、質問2−1の集計で約5割に達したコミュニティ再生ということである。他国の例と比較してみよう。たとえば、オーストラリアにおいては、不況と失業という背景において導入されたが、LETS実施者へのアンケートの結果によると、導入の目的の69%が地域内に熱烈なコミュニティ感覚を発達させることであった。3)主として失業者と困窮の為に存在しているといわれるイギリスのLETSで は、33%がコミュニティの建設を目的として設立されている。4)
 また、さらに質問3−4の結果が示唆しているのは、コミュニティ再生への効果はあるということであろう。コミュニティ再生は何を尺度として言えるのか、論理的に詰めようとすると大変難しい話である。しかしながら、以下のことを調査結果から確認することができよう。実際に地域通貨に参加している人々の76%がコミュニティ再生へ強い影響がある(効果4 または5)としていること。また、2.(3)で触れたように、その他効果があったとされる事項の中で、仲間つくり(2団体が効果5)、ささえあい精神の育成(効果4)、不特定多数市民のまちづくり活動への参加(効果5)、助け合い(1団体が効果4、1団体が効果5)、コミュニケーションの手段(効果5)、遠隔地域間の助け合い(効果5)、会員同志あつめ(効果5)、はコミュ ニティの再生と解釈されうるものが多いこと。コミュニティ再生効果に“1”と評価した団体が1団体だけあった。しかし、同団体も、その他効果があったとされる事項を挙げていただく項目で“仲間つくり”をあげ“5”をつけている。やはり、地域通貨はコミュニティ再生能力があると結論づけてよいのではないだろうか。
 加えていえば、効果に関して質問した項目の中で、この項目がもっともはっきりした傾向をもっている。すなわち、不況の効果、地域振興の効果、環境の保護への効果といった他の3項目への回答は中位評価“3”に最多値をもつ正規分布型であるのにたいして、コミュニティ再生への効果への回答は効果大とする領域に極端に偏った分布を示している。このことからも、「コミュニティ再生への効果がある」という感触は、地域通貨を実施している現場でもっとも強く感じられていることなのである。
 これらと質問1−3の結果と合わせて考えると、日本における地域通貨の団体は、“コミュニティ再生を目指して、地域通貨を実施する団体を設立したものが多く、その効果は実際にあると考えられている”ということが浮かびあがってくる。諸外国の報告書においてもコミュニティ再生への効果が報告されている5)。しかし、振り返って見ると日本では以下のような議論がなされていたように思う。“地域通貨がコミュニティを作るという話があるが、実際にはコミュニティがあるところに地域通貨が形成されているのではないか。海外において地域通貨が急速に広まったのは、教会区の存在等がある為であり、その意味で日本においては、特に都市圏においてはコミュニティが崩壊しており地域通貨は発展しない”という議論である。
 これに対して、今回の調査で明らかになったことは示唆に富んでいるだろう。すなわち、日本という土壌において、しかも、今回の有効回答を頂いた団体のうち10箇所が政令指定都市という条件のもとにおいても、コミュニティ再生の効果があることが明らかになったのである。

(2)地域通貨の媒体と単位
1)媒体〜紙幣方式よりも通帳方式
 紙幣方式が報道ではクローズアップされがちであるが、通帳形式がもっとも多かった。ついで紙幣方式である。しかしながら、2種の方式を併用実施している団体が3団体もあった(紙幣と通帳、通帳と借用書方式、小切手とインターネット上のバーチャル型という組み合わせ)。形式に縛られずさまざまな媒体を使用している感がある。地域通貨といえば、地域振興券の影響であろうか、すぐに紙幣というイメージもあろうが、実際には各団体においてさまざまな取組をしていることがわかる。また、2割近くもの団体が形態にこだわらずさまざまなものを貨幣として使用しているのが予想外であった。コインや石、チップといったものが挙げられている。本調査と同時に行なった聞取り調査でも、陶片などを用いた事例が判明している。
 地域通貨の媒体に、これだけさまざまな媒体を使用している例は、海外においては、古の通貨は別として、近年の地域通貨の例としては報告されていない。日本特有の現象なのであろうか。
 なお、複数方式をもちいる例は、海外でも報告されている。
 小切手方式が少ないのは、一般的な日本人にとってそもそも小切手はなじみのないものだからであろう。因みに、小切手を振り出すことのできる当座預金口座の開設は、日本の場合、特に個人向けには極めて限られたものであった。
 次に質問4−2と、質問2−1を合成してみた。

表3 地域通貨の方式ときっかけの相関関係

  回答数 地域振興 環境保護 コミュニティ再生 その他
紙 幣 方 式 15.5 2.00 1.00 8.50 4.00
通 帳 方 式 16.0 2.17 3.17 7.67 3.00
小切手方式 1.5   0.50 1.00  
そ の 他  6.0 0.50 0.67 2.50 1.33
合  計 39.0 4.67 5.34 19.67 8.33

※きっかけで複数回答している団体は、きっかけを按分
※複数方式を用いている3団体は、方式ときっかけ双方で按分
※合計の相違はきっかけ未回答団体が存在するため

論理的には、目的によって通貨の方式が異なってよさそうなものである。しかし、結果としては分散していると判断できる。強いてあげると、環境保護であろう。それが地域通貨を始めるきっかけであると回答した団体の約6割が通帳方式を選択している。
 なお、借用書方式は日本特有の方式である。諸外国で採用された事例は、管見の限り見当たらない。われわれは、通帳方式と紙幣方式のメリット部分をうまく融合させた形式であると考えている。今後の動向に注目していきたい。

2)発行にかかる費用についての負担度〜負担ではない
 発行に関しては、地域通貨が発展していくにしたがって、例えば紙幣であれば偽造を防ぐ、などというような措置が必要であると考えられる。
 結果としては、楽観視している団体が多い。地域通貨発行方式による差異もあまりみられない。強いてあげれば、紙幣方式を用いている団体の方がやや危機感が強いといえようか。

3)現在使用している方式の使い勝手〜使い勝手はよい

 現行のものが使いやすいという意見が8割を超えた。当初“両方”という項目は設けていなかったが、両方、つまり、使いにくいところもあり、使いやすいところもあるという内容の意見が3箇所からあったので、付け加えた。
 地域通貨導入にあたっては、円と比べて使いにくい通貨が生き残れるはずがないという意見が聞かれる。これは地域通貨の本来の特性から考えれば論点が違うことは明白であるが、実際に使用している人々の意識の上でも使いにくいというイメージはなく、これは、地域通貨の本来の特性からいえば、逆にこの評価は高いものであるといえよう。

4)発行単位について〜モデルに影響をうける

表4 発行単位と地域通貨発行方式

  回答数 紙幣方式 通帳方式 左記以外
日本円準拠(例1000円=1000下関) 
8 24% 1 5.5 1.5
日本円準拠だが時間に挽算した目安が有る 10 29% 3 6 1
時間準拠(例1時間=1下関) 10 29% 5.5 1.5 3
時間準拠だが日本円に換算した目安が有る 6 18% 4 1 1

 質問4−5の結果と媒体(方式)を合成したものが、表4である。日本円準拠が53%と、時間準拠に比べてやや多いという結果になった。紙幣方式では時間準拠方式が、通帳方式では日本円準拠方式が主流であることがわかる。
 紙幣方式において、発行単位として時間準拠方式が多い理由は、まず一つに貨幣の発行権の問題が挙げられるであろう。円との混同を確実にさけるべきであるという認識からの時間準拠方式の採用が多いと思われる。2つ目としては、これは、通帳方式に日本円準拠方式が多い理由にも通ずるが、モデルの問題もあろう。紙幣方式として最も有名なのが、アメリカのイサカ市におけるイサカアワーであり、これは時間準拠方式である。一方、通帳方式のモデルは、おそらくはイギリスやカナダで主流のLETSであり、これは主としてその国の国家通貨に準拠している例が多い。またこれらは、地域通貨が日本に紹介された時に、大さく取り上げられたものである。
 なお、こういった目安を一切設定していない団体もみられた。市民活動センターの運営の一環として実施している団体では、運営にかかわる労力などに応じて発行単位をきめるといった方式を採用し、いっさい円とのリンクを断ち切っている。

5)課税に対する対策について〜今後議論が必要
 具体策を練っている5団体は、どれも本格運用団体である。本格運用団体においては課税問題を将来避けることのできない問題ととらえて真剣に取組んでいることがわかる。外国では国側の見解が示されつつあり、日本においても地域通貨が広がっていくと、事業者も地域通貨に参加してくることは容易に考えられることから、課税に対する国側の見解が明らかにされる必要性が生じてくるのは時間の問題であると思われる。国税当局がどのような検討を行なっているのか、注目していく必要がある。

6)地域通貨は“通貨”ではない?

(3)自治体と地域通貨
 報道等で自治体の肩入れや肝いりといった自治体の積極的な関与が言及されている。しかしながら、実際にはほとんどが自治体とは独立した団体として存在している。ただし、逆に、外部団体等の形態ではなく、自治体そのものが地域通貨にかかわっている例もある。
 質問4−2−アを自治体との係わり合いから分析してみる。財源としては、「C.会費で補う」が最も多く、かつ、最も依存度が高いことがわかる。昨今、市町村が地域通貨に力を入れてきているという報道もされているが、実際には数としてはもっとも低く、一般からの寄付に依存している団体の方が多い。なお、イギリスの調査では76%が地方政府から援助をうけており6)、またオーストラリアでも多くの団体が政府機関から資金を供給されている7〉。行政機関からの支援が日本では少ないことが確認できよう。
 支援の数としては少ないが、自治体から補助金を受けている団体にとっては、自治体からの補助金に対する依存度が、一般からの寄付に対する依存度よりも若干大きいようである。自治体によっては多額の補助金を出しており、受領している団体は補助金に依存しがちであるということであろうか。
 地域通貨に関しては紙幣方式を用いた場合その当初費用の負担が懸念されるところであるので、紙幣方式を用いている団体で再集計してみた。

表5 発行にかかる費用の負担主体(紙幣方式規体)

  大 ← 依 存 度 → 小  合  計
A.一般からの寄付でまかなう
2 2 -
4
B.自治体からの補助金
4 1 1
6
C.会費で補う
7 1 0
8
回  答  数
13 4 1
18

 やはり、自治体からの補助金をもっとも大きな財源とする団体の割合は、紙幣方式団体においては4/13(31%)である。回答団体全体に占める割合7/33(21%)に比べると、高いことがわかる。
 ここで、自治体の補助金がもっとも大きな財源である団体を、地域通貨の方式別に再集計してみよう。

表6 自治体から補助金を受けている団体の貨幣方式

全回答数 Bが最大  Bが2番 Bが3番 合 計
紙 幣 方 式 16 4 1 1 6
通 帳 方 式 17   1 2 3
小切手方式 2     1 1
そ の 他  7 3   1 4
合  計 420 7 2 5 14

 自治体から補助金を受けている団体は、14団体である。そのうち紙幣方式を採用している団体は6団体であり、全体のうち紙幣方式を採用している団体の割合よりも若干多い。
  さらに、自治体から補助金を受けている団体の地域通貨稼動状況を整理してみよう。

表7 自治体から補助金を受けている団体

  全回答数 被補助団体
実験運用につき現在休止中 9 5
実験運用につき休止予定    
実験運用であるが当面存続予定 8 5
本格運用である 21 10

 1団体は未回答であるが、回答をいただいた13団体のうち10団体が実験団体であることがわかる。自治体の補助金は毎年出るかどうか分からないという面があり、その意味で、自治体からの補助金で運営していく団体は、実験的に期間限定として実施しがちであるのはやむをえないと思われる。しかし、補助金の支給が、地域通貨の稼動状況を左右する影響を与えているのではないかと考えさせられる。

(4)媒体として紙幣をもちいることと“実験”
 地域通貨を実施している団体の半数近くが、実験運用を称している。地域通貨を実施することを目的として団体を設置しているところが多いが、実際には設立目的と異なり実験運用にとどまっているのである。
 また、現在実験中で、将来休止予定という団体はゼロであった。とくに作為的に団体を選出したわけではないのに、当該ケースの団体がゼロであるのは、おそらくは、地域通貨が、後述するように一定の効果を持っていることが認知された為であろうか。
 しかしながら、これだけでは説明できない。おそらくは、栗山町の実験や、三重県庁内での実験が、参加者の要望により実験期間が延長されたように、地域通貨を実施するということは、取引を行なうことであり、いったん取引を行いだし、それがある水準まで達すると、強く期間を限定するなどしないかぎり各個人に取引を止めさせるのは難しいということなのであろう。

1) 方式〜実験を称する団体は紙幣方式を採用する割合が高い

表8 地域通貨の方式

  回答数  実験終了 実験中 本格運用
紙 幣 方 式 16 6.0 3.0 6.5
通 帳 方 式 16 2.0 4.0 10.0
小切手方式 3     1.5
そ の 他  7 1.0 1.0 3.0
合  計 42 9.0 8.0 21.0

※回答数と稼動状況との差は無回答団体。複数方式を用いている団体は、運用方針で按分して集計。

 実験終了・実験中団体が紙幣方式を採用している割合が高い。自治体等からの補助金を元手に地域通貨を期間限定で行う場合には、紙幣を印刷して無料で配布する方法が成果を得る近道であると地域振興券の前例からも推測される。これが実験終了・実験中団体が紙幣方式を選択する傾向の強さを部分的に説明するものと考えられる。
 これに対し、本格運用団体は通帳方式を用いる傾向がある。また、複数方式を併用する団体は、すべて本格運用団体である。本格運用を目指す場合に紙幣方式を採用することは、通貨発行権への抵触、有価証券取引法との法的関係、紙幣の劣化の問題、偽造の問題など解決しなければならない問題が多く、これが本格運用団体に紙幣方式を選択しない傾向に追いやっている一因と考えられる。本格運用団体がコインを用いるなど自由な発想で、取引を永続的に行なっていく試みを行っていることも、ここで再確認しておこう。

2)加入者に対する最初の紙幣の発行方法〜実験を称する団体は無償配布が多い
 Q4−3−2と質問2−4の結果を合成した。

表9 加入者に対する最初の紙幣の発行方法

  回答数 実験終了 実験中 本格運用
無償で配布することにしている  9 60% 4 3 2
会費と引き換えで発行している 4 27% 1   3
加入の事実だけでは発行しない 2 13% 1    

 加入者に対する最初の紙幣を無償で配布する団体が6割を占めていた。次点が加入者に対する最初の紙幣を会費と引き換えで発行する方法であった。これはおそらく、紙幣方式は紙幣がないと取引がおこなわれず、したがって最初の紙幣をどうやって手に入れるのかがポイントであり、個人間の取引を促進するために選んだ手立てだと思われる。
 無条件に紙幣を発行するということを続けると、もちろんであるが危険である。上記のようにどこもある程度規準をもうけており、これがひいては流通量をコントロールするために重要になってくると思われる。
 加入者に対する最初の紙幣を無償で配布する団体の約半分は、期間限定の実験団体である。期間未定の団体を含めると、実質そのほとんどが実験団体だということになる。

3)紙幣の劣化と交換についての方針〜劣化についてはこれから
 Q4−3−3と質問2−4の結果を合成した。

表10 紙幣の劣化と交換についての方針

  回答数 実験終了 実験中 本格運用
まだ考えていない 3 25% 1 1 1
劣化があり交換を行っている 1 8%   1  
劣化はみられず交換の必要は現在ない 4 33%   1 3
将来的には必要であると思われる 4 33% 3   1

 古くからある日本の地域通貨は時間貯蓄銀行という形態であり、紙幣を用いるような地域通貨は、日本においては歴史がまだ浅いことから紙幣の劣化に関して質問を行うのは時期尚早であったかもしれない。また、これまでの結果から、紙幣方式の約半分が実験団体であることから、紙幣の劣化については考える必要がないのが現状であろう。
 しかしながら、そもそも地域通貨において紙幣方式を用いる場合も、国家通貨と同様に紙幣の劣化を想定しなければならないという考え方がそもそも間違っていたのかもしれない。この質問に対して「有効期限1年」「3回交換すると新しいものと交換」「3ケ月ごとに交換」と答えた団体があった。これらの団体は紙幣の劣化という問題に対して、有効期限を設定する、交換回数を制限するという方法で解決していることになる。また、回答欄にこれらが註釈型の追記として書き込まれていたことから判断すると、これらが紙幣の劣化に対して有効な解決策であると認識されているものと推測できよう。

4)発行額総量に対する制限設定の有無〜本格運用団体は考えはじめている。
  Q4−3−4と質問2−4の結果を合成した。

表11 発行額総量に対する制限設定の有無

  回答数 実験終了 実験中 本格運用
制限をしていない 12 80% 6 3 3
制限をしている 3 20%     3

 これも、紙幣方式の約半分が実験団体であることから、前掲の質問と同様に、おそらくは最初の一度限りの発行しかせず、従って発行額総量に対する制限については考える必要がないことの反映であろう。
 地域通貨を“本格運用”している団体の実情をみてみると、制限を実行している団体とそうでない団体は、半々となった。永続的な運用を考えていく上では避けられない問題だが、本格的な取り組みはこれからということである。

(5)交換に関して
 交換に関して、地域通貨単位準拠と地域通貨の方式から分析してみる。
 以下では便宜上、地域通貨単位準拠ならびに地域通貨の方式を下記の記号で表すこととする。

  記 号   記 号
日本円準拠(例1000円=1000下関) 紙幣方式
日本円準拠だが時間に換算した目安が有る 円 時 通帳方式
時間準拠(例1時間=1下関) 小切手方式
時間準拠だが日本円に換算した目安が有る 時 円 その他

1)サービスと物の交換割合と地域通貨単位準拠〜単位準拠による傾向の違い
 質問4−6の結果と地域通貨単位準拠を合成した。

表12 サービスと物の交換割合と地域通貨単位準拠・方式

      単 位 準 拠 方  式
  回答数 円時 時円
サービスはほとんど交換されていない 2 6% 1 1     2      
サービスも交換されているが、主に物の交換である 5 14%   2   2 2 3    
サービスも物も同様に交換されている 14 39% 5 4   3 3 8.5 1 1.5
サービスの方がよく交換されている 5 14% 2 1 2   1 2 0.5 1.5
ほとんどがサービスの交換である 11 28%   2 8 1 7.5 1.5   2

   ※回答数と地域通貨単位準拠と地域通貨の方式との差は無回答団体、複数回答は按分

 日本円準拠と時間準拠の団体の差がはっきり現れた。円準拠の団体では、サービスも物も同様に交換されていると回答する団体がもっとも多いのに対し、時間準拠では、ほとんどがサービスの交換であると回答している団体が最も多い。日本円準拠では、サービスの交換が促進されにくのではないかという意見もあるが、実際には地域通貨の交換メニューにあがってくるものは、やはりサービス的なものが多いことから、比較的サービスの交換が活発であることがわかる。
 また、時間準拠の団体が、ほとんどがサービスの交換になることは、その団体がそもそもボランティア活動の時間の交換や、時間貯蓄制度を目的としていることからこれも当然の結果ともいえる。

2)参考価格〜例示団体は少なく、必要ないであろう
 質問4−7の結果と地域通貨単位準拠を合成した。

表13 参考価格の例示と地域通貨単位準拠・方式

      単 位 準 拠 方  式
  回答数 円時 時円
例示している 16 44% 1 5 5 3 7.5 6.5   2
例示はなく当事者が決定 20 56% 7 5 4 3 7 8.5 1.5 3

  ※回答数と地域通貨単位準拠と地域通貨の方式との差は無回答団体、複数回答は按分

 例示の有無についての質問であるが、値付けを当事者間において決定する方式がやや例示団体を上回った。しかしながら、例示団体の中には時間預託方式が多く含まれていることから、これを考慮して考えると、円準拠ならびに円で例示している6団体のみが実質的な参考価格例示団体となる。つまり実態としては、例示団体は少ないことになる。方式別では、さほど有意な差はない。やや非例示が上回っているというところであろう。
 現代においては、日本人にとって価格とは所与のものであり、割引についても希望小売価格の何割引と言う表示に慣れ親しんでいる。オープン価格は分かりにくいという意見も多い。こういった中で、時間準拠の団体はまだしも、円準拠の団体において、値付けを人々の判断に任
せるのは大きなできごとであろう。

続いて、質問4−7−1の結果と地域通貨単位を合成した。

表14 参考価格での取引割合と単位準拠方式・地域通貨方式

      単 位 準 拠 方  式
  回答数 円時 時円
ほとんどが参考価格での取引 6 43%   1 2 1 3 2   1
そうでない場合もある 5 36% 1 1 1 2 3 2    
参考価格での取引は少ない 3 21%   2 1   1 1   1

  ※回答数と地域通貨単位準拠と地域通貨の方式との差は無回答団体、複数回答は按分

 参考価格を例示した団体では、参考価格で取引される割合が大きいことがわかる。その一方で、参考価格を例示していても、2割程度の団体では、値付けを当事者間において決定することが多い。こうした様相が単位準拠のありかたや地域通貨方式によって左右されているとは見られない。単位準拠の違いや紙幣方式か通帳方式かといった地域通貨方式の違いによる分布に有意な差異は認められないのである。

 質問4−7−2の結果と地域通貨単位を合成すると次のようになる。

表15 値付の仕方についての相談と地域通貨単位準拠・方式

      単 位 準 拠 方  式
  回答数 円時 時円
もとめられる 4 20% 1 1   1 1 2 0.5 0.5
あまりもとめられない 11 55% 4 3 3 1 2 5.5 1 2.5
全くもとめられていない 5 22% 2 1 1 1 4 1    

   ※回答数と地域通貨単位準拠と地域通貨の方式との差は無回答団体、複数回答は按分

 参考価格の例示をしないと取引の促進につながらないという議論があり、また、例示をしないと例示を求められるという話もあって、当該質問を実施した。が、およそ4分の1程度の団体で値付けの相談を求められる程度であった。
 単位準拠のありかたによっても、地域通貨の方式のいかんによっても、例示が求められるケースを特定できない。円準拠の団体でも例示を求められている団体は2団体(1団体は併用方式)であることから、結論として、参考価格は必要ないということであろう。

3)お礼(上乗せ支払い)について
 地域通貨に関する報道では、お礼(上乗せ支払い)の存在を地域通貨の特色として挙げることがある。が、現実にははとんど存在していないことがわかる。とはいえ、既述のように当事者間が価格を形成するシステムをとっているとしても、その価格内に予め形成されているのかもしれない。一般論としては、地域通貨は等価交換が主であるから、お礼(上乗せ支払い)の存在意義や奨励意義については否定されよう。

(6)日本の地域通貨
1)日本の特徴
 日本の地域通貨は1999年以降に本格的に取り組まれるようになり、無償ボランティアに大きく依拠している、と概括してよいであろう。通帳方式のほうが紙幣方式に比べて多く、現在採用している方式が「使いやすい」と感じられており、コミュニティ再生の機能を果たしていると強く意識されている。参考価格の例示が行なわれている場合でも、「参考価格での取引は少ない」という回答が5分の1を占めたことは興味深い。人と人との関係づくり、コミュニケーションの創出、もってコミュニティの再生ということであるならば、人と人との関係行為において当事者間で値決め行為が執り行われていることこそがあるべき姿にふさわしい。この方向性に沿ったものとして現状を評価できるのではないかと考えるものである。
 機能制限貨幣という観点から日本の「地域通貨」について確認しておきたい。日本における「地域通貨」は大きくわけて3つのタイプに属するものである。一つは1970年代に生まれて拡大していき、現在では地域福祉の一翼を担う部分もある時間貯蓄制度である。時間を尺度とするという着想のみならず、しっかりしたマニュアルを作成することにより、規模の拡大を続けている。しばしば「タイムダラー」とも呼ばれるようであるが、日本における取り組みの方が長い。数としては少ないようであるが、巨大な会員数を誇り、「地域通貨」への参加人数としては最も多い。
 そしてもう一つは1999年以降に日本に輸入されてきた「地域通貨」である。これらは個人間の取引を主とし、取引する個人が値決めをすることが多いこと(尺度機能に対する制限)、ごく限られた集団でしか流通しないこと(流通機能の制限)から、地域交換交易制度(LETS、イサカ・アワーズ、交換リングから成る)に分類されるものである。現在最も団体数が多いのがこのタイプである。
 最後は、若干数であるが域内振興目的通貨(スタンプ・マイレージを想定)も取り入れられている。主として商店街振興目的として取り組まれており、しっかりした成果も確認されつつある。
 日本において団体数として多数派を占めている地域交換交易制度は、人と人との繋がりを互酬性などから再度構築していくことから、「地域通貨」の中でも最もコミュニティの再生に役立つ可能性が高いものであり、今回の調査において「コミュニティの再生に効果がある」という結果がでたことも頷けるものである。
 ただし、地域交換交易制度において紙幣方式を用いるのはなかなか困難な場面が多い。世界的に見てもイサカ・アワーズなど紙幣方式による地域交換交易制度は少ない。またそのイサカ・アワーズも実際には市場価格に依存する場面も多いため、域内振興目的通貨に近い部分が大きい。
 日本においても一部地方自治体が「地域通貨」に取り組んでいるケースが存在しているが、それはトロント・ダラーのような地域限定通貨ではなく、地域交換交易制度を行政主導で行っているものと言える。わが国の取り組み事例では、個人間の交換を主体とし、尺度機能を市場から切り離すことで事業者が参加しにくくなっている。
 地方自治体が地域交換交易制度を実施した場合、個人間の取引が個人同士よりも行政への信頼によって行われる事が考えられ、この点で市民活動団体等が地方交換交易制度を実施する場合よりも、人と人との繋がりをもたらすことが難しくなることには注意を払わなければならない。従って、直接的に行政が「地域通貨」を実施するより、補助金のような形で「地域通貨」を実施する団体へ支援する方が、地域交換交易制度には良いと考えられる。
 もっとも、地域限定通貨のような「地域通貨」の実施においては、円との交換比率が不可欠であり、日本銀行との関係が生じてくるであろうし、また、国税当局の正式な見解も現時点ではないままであり、日本に於いて地域限定通貨を地方自治体が発行するのは困難であろう。
 また、“地域通貨は地域の発展に目立った効果がない”という意見が聞かれるが、日本に存在する「地域通貨」はコミュニティの再生に対して最も効果がある地域交換交易制度が多い。これは域内振興目的通貨や地域限定通貨のように事業者をも含むような「地域通貨」とは区別されるべきものであり、「事業者の参加が難しい」のは当然ともいえ、また、単純に地域振興に結び付くようなタイプの「地域通貨」ではない。従って、地域振興を目的をするのであれば、それなりの「地域通貨」を参考にすべきである。

2)日本の取引記録
 今回、取引リストを作成している団体については、アンケートと共にリストを頂くように依頼した。最後に、提供いただいたリストの分析を行ない、参加者規模とリストとの関係についてのみ示唆するところを取りまとめてみたい。
 回答状況は次のとおりである。連絡先が記入してあることによるプライバシーの問題から頂けない団体もあったが、7団体からリストを頂いた。うち2団体については、設立当初のものもあわせて頂いた。また、1団体(H)は、取引リストそのものは提供いただけなかったが、提供いただいた報告書に基づいて分析対象に加えている。

結果を表にまとめたものが、表16である。

表16 取引リスト分析表

    GIVEYOU GIVEME
  団体所属人数 総項目数 一致数 一致% 総項目数 一致数 一致%
A 13 45 8 18 23 4 17
B 73 225 63 28 121 61 50
C 28 148 21 14 99 29 29
D 41 142 81 57 109 52 48
E1 22 213 80 38 142 49 35
E2 75 381 144 38 227 104 46
F1 24 101 32 32 71 27 38
F2 80 180 51 28 130 53 41
G 230 429 183 43 193 114 59
H 186     55      

 ここで一致数とは、「GIVE YOU」であれば、「GIVE YOU」あるいは「できます」という項目に対応した項目が、「GIVE ME」あるいは「してほしい」にあるものであり、「GIVE ME」の場合はこの逆である。
 多くの団体では、「GIVE YOU」の項目の方が、「GIVE ME」よりも項目数が多くなっている。一方、一致する確率は「GIVE ME」の項目の方が、「GIVE YOU」の項目よりも高いことが分かる。
 さて、人数と一致率の相関関係であるが、この表では分かりにくいので分布図を作成すると次のようになる。

取引リストにおける取引の成立の可能性の高い項目の占める率
図を見る
団体所属人数(人)
◆GIVE YOU ■GIVE ME

 横軸は団体所属人数、縦軸は一致する%である。まず、「GIVE YOU」についてであるが、団体Bの57%が飛びぬけた数値であるが、団体の所属人数が増えると共に、一致する項目が多くなっていくことがわかる。「GIVE ME」に関しても同様に、団体の所属人数が増えると共に、一致する項目が多くなっている。
 Williams8)によると、イギリスにおける調査結果として、少なくとも50名程度の参加人数がいないと、取引の成立する確立が低くなるので、50名以上の団体所属人数が必要であるとしている。
 今回作成したグラフからも、おおよそ50前後を境に、「GIVE ME」の項目の取引が可能になる確率が5割に近くなってきている。取引過程としては、「GIVE ME」の方が主体的になって「GIVEYOU」の一致している項目を出している人間へ連絡をし、取引が行なわれると思われる。「GIVE ME」の項目に対する一致率がある程度高い水準に保たれることは、団体の存続にたいしても重要なことであろう。
 今回の調査において、Williamsの主張が日本においてもあてはまるということが言えると思われる。取引リストのサンプル数を増やして、精査する計画である。人と人とのコミュニケーションを促す道具立てとして日本の地域通貨がどのような内容を具備したものか、さらに追及していきたい。

 今後とも、この全国調査を継続的に取り組んでいくこととしたい。併せて、関連調査を鋭意追及していくことにしている。地域通貨実施団体各位には倍旧のご協力をお願いするものである。

2)C C williams,”The New Barter Economy:An Appraisal of Local Exchange and Trading Systems 
 (LETS)”Journal of Public Policy,Vol.16-1,1996

3)C C williams,”Local Exchange and Trading Systems (LETS) in Australia:a neW tool for commun-ity development”,International Journal of Community Currencies Research,Vol.1-1,1997

4)Aldridge,Lee,Leyshon,Trift,Tooke,Williams,”ESRC Project Report:Co−ordinators Survey Evaluating
 LETS as a means of tackling social exclusion and cohesion”,(http://www.geog.qmw.ac.uk/1ets/coordi-nators.htm),2000

5)主なものとしては、

 ベルナルド・A・リエター『マネー崩壊』日本経済評論札2000
 谷崎テトラ「ローカル・エナジー・トランスファー・システム」『ソトコト』No.15木楽舎,2000
 設楽清和「コミュニティ活動とLETS」『地域開発』1998.12
 M Pacione,'Debates and Reviews,'Regional Studies,Vol.33-1
6)Aldridge,Lee,Leyshon,Thrift,Tooke,Williams、ibid.
7)williams,ibid.
8)C C williams,”Local exchange and trading systems:a neW source of work and credit for the poor
 and unemployed?”,Environment and Planning A,vol.28,1996