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大学財政 &

2001/06/12 更新
 下関市立大学の研究と教育を支える大学財政の構造と現状について、Q&A形式で大まかに記述しています。根拠となるデータ、用語の正確な意味などについては、「データで見る下関市立大学の財政構造と現状」、および関連法令のページをご覧下さい。このQ&Aは、適宜追加更新されることによって徐々に修正・充実されます。
 
 Q1 下関市立大学は、下関市民の税金で運営されているのですよね。
 
 A1 いいえ、必ずしもそうとは言えません。下関市立大学は下関市が設置した公立大学です。したがって、その運営は下関市の一般会計で賄われています。しかし、必ずしもすべてが税金で賄われていると考えることはできません。公立の義務教育は基本的に無償ですが、市立大学では入学金授業料が必要です。つまり、下関市立大学の学生たちは、入学金や授業料を下関市の一般会計に納入しているわけで、その一般会計から大学運営に必要なお金が支出されているのです。下関市立大学の学生たちは、大学に必要なお金のある部分を自ら負担していることになります。
 

 
 
 Q2 下関市立大学の学生は、通常大学に必要なお金をどの程度負担していることになるのですか。
 
 A2 ほぼ100%です。入学金や授業料、入学試験の受験料など、大学収入として下関市の一般会計に納入されるお金のことを、大学の自主財源と言います。下関市の一般会計から大学に支出されるお金のうち、この自主財源の占める割合のことを、大学の自主財源率と言います。下関市立大学の自主財源率は、平素大学に必要なお金について、例年ほぼ100%と見ることができます。
 
 もちろん大学の自主財源率は、年度によって差があります。学友会館建設など、大きな出費が必要な年度には、それを授業料などの自主財源だけで賄うことはできません。したがって、自主財源額以上のお金が下関市の一般会計から大学に回されることになり、当然、自主財源率は下がります。逆に、そのような臨時の出費のない年度には、自主財源率は高くなります。平素大学に必要な人件費物件費だけを見れば、一般会計から大学に支出されるお金よりも、入学金や授業料として一般会計に納入されるお金の方が多くなることもあります。
 

 
 
 Q3 下関市立大学に、大学独自の金庫のようなものはないのですか。
 
 A3 ありません。たとえば、下関市立大学では、毎年大学入試センター試験を実施していますが、これを実施するためには、試験監督者の人件費や臨時設備などの物件費が必要です。これらの経費のある部分は、大学入試センターから配分されることになっています。しかし、大学入試センター試験の実施のために配分されるお金は、下関市立大学が受け取っているわけではありません。それはすべて下関市の出納長名義の銀行口座に振り込まれます。大学独自の金庫は存在しません。
 
 大学入試センター試験については、試験当日の試験監督以外にも、日本の各大学の先生方が日頃から協力して準備作業をすすめています。1年間に延べ数十日も、東京の大学入試センターに出張することになります。当然、自分の所属する大学での授業等にも影響が及ぶことになります。そこで大学入試センターでは、そのような場合の補償として、授業が休講にならないように非常勤講師を手配するための経費を各大学に支払っています。しかし、下関市立大学では、その経費を受け取ることができません。そのお金は、その他の大学入試センターからの経費と同様に、すべて下関市の一般会計に振り込まれてしまうからです。
 
 下関市の一般会計に振り込まれる大学関連のお金をどのように使うか、ということについて、当事者の下関市立大学に決定権はありません。すべて下関市の財政当局者の考え方次第です。下関市立大学の運営が下関市の一般会計で賄われている、というのはこういうことなのです。
 

 
 
 Q4 自主財源率が高いことは、大学経営として歓迎すべきではありませんか。何か問題点がありますか。
 
 A4 問題点があります。自主財源率が高いということは、設置者である下関市からの持ち出しが少なく、その点で、もし設置者が大学にお金を回したくないと考えるなら、設置者には歓迎されます。しかし、大学にとっては、平素基本的に必要な経常費(人件費と物件費)が学生数に比べてきわめて低い、という事態を引き起こします。大学として、学生1人あたりにかけるお金が少なくなってしまいます。なかでも人件費は、教員の人数に関係します。教員の人数が少ないと、教員1人あたりの学生数が増えることになります。ゼミを受講する学生の人数が多すぎて十分な指導ができない、という事態も生じます。
 
 他方で、下関市立大学が、学術研究高等教育の場として、下関市に及ぼしている影響には計り知れないものがあります。大学で開催される勉強会公開講座に下関市民が参加するとか、図書館の公開というレベルだけでなく、大学のある街には、それなりの文化的な雰囲気がともなっています。これは市民生活の「生活の質」にかかわっています。また、2000人規模の若い学生たちが市民生活を共にしていることの意味はとりわけ重要です。下関市の活性を支える1つの柱になっていることを看過してはいけません。下宿やアパートの利用、生活必需品の購入、あるいは、アルバイトによる労働力の提供などを通して、下関市の経済に及ぼしている影響を過小評価してはいけません。
 
 これらの下関市立大学の役割や意味は、現状では、おそらくほとんど意識されることがないのでしょう。実際に大学がなくなってみて初めて気付かれることかもしれません。大学があった頃には、街にもっと活気があったのになあ、という具合です。このような事態が、近い将来、下関市に現実にやってくる可能性があります。
 

 
 
 Q5 下関市立大学に対して、からの財政支援はないのですか。
 
 A5 あります。ただしそれは、国立大学や私立大学のように文部科学省からの財政支援ではありません。公立大学は、国の地方自治政策の中に位置づけられ、したがって自治省から財政支援が行われます。しかもそれは、とても分かりにくい仕組みになっています。
 
 国立大学は、「国立学校特別会計」によって賄われ、この特別会計には、学生の授業料などに加えて、国の一般会計からの繰入金が算入されます。「国立」である所以です。また、私立大学は、経費の大部分を授業料や入学金などの学生納付金で賄っていますが、「私立学校振興助成法」に基づいて、国による私学助成が行われます。これに対して、公立大学への財政支援は、「地方交付税交付金」の制度の中に組み込まれています。
 

 
 
 Q6 地方交付税交付金の制度で、公立大学への財政支援はどのようになっているのですか。
 
 A6 とても複雑で分かりにくい仕組みです。それを説明するためには、まず地方交付税交付金の仕組みを説明しなければなりません。地方交付税交付金とは、各地方自治体の行政サービスをある一定の水準に確保するための制度です。同じ日本国内でありながら、地方によって行政サービスに格差が生じるのは、不公平で好ましくありません。そこで、その水準を確保できるように、その地方自治体固有の収入が十分でない場合には国税の一定部分を地方に配分するわけです。
 
 その大まかな仕組みはこうです。各地方自治体ごとに、まず「基準財政需要額」を算定します。つまり、この程度の人口規模で、道路や橋や学校などがこれくらいあれば、一定水準の行政サービスを行うには、基本的にこのくらいのお金が必要だろう、という額を算定するわけです。次に「基準財政収入額」を算定します。つまり、市民税や固定資産税などの税額を根拠にして、その地方自治体固有の収入がいくらになるか、という額を算定するわけです。そして、後者の「収入額」が前者の「需要額」に達しない場合に、その不足額に応じたお金を地方交付税交付金として、国税の一定部分から、当該の地方自治体に配分するのです。東京都を除く、日本の地方自治体のすべてがこの地方交付税交付金の対象になっていることは、よく知られています。
 
 公立大学への財政支援は、この地方自治体の「需要額」の算定に算入されています。
  

 
 
 Q7 下関市立大学があることによって、下関市の「基準財政需要額」はどれくらい増額されているのですか。
 
 A7 平成12年度で、およそ8億円です。下関市立大学のような経済学部の公立大学では、基準財政需要額の算定のあたって、学生1人あたり 374,000円(平成12年度)が算入されていると考えられます。平成12年度の下関市立大学の学生数は、2,291人ですから、複雑な計算を度外視して単純に考えれば、その算入額は、374,000×2,291=856,834,000 となり、少なく見積もっても、およそ8億円です。
 
 ただし、この額のお金が下関市立大学への財政支援として、そのまま下関市に配分されているわけではありません。ここが地方交付税交付金の仕組みの分かりにくいところです。配分される地方交付税交付金の額は、あくまでも「需要額」に対する「収入額」の不足額に応じたものだからです。また、国が用意する交付税の総額が各地方自治体の需要額の総額に満たない場合は、用意された交付税の総額の範囲内で、合理的に配分されることになります。したがって、実際に各地方自治体が受け取る交付税交付金の金額は、需要額の金額よりも少なくなることもあります。
 
 しかし、少なくとも、下関市立大学がこの下関市に存在しなければ、下関市の「需要額」から公立大学算入分の8億円が減額になることは明らかです。
 

 
 
 Q8 下関市立大学の場合、経常費に占める自主財源率はほぼ100%でした。地方交付税交付金の制度に基づく下関市立大学への財政支援はいったいどうなっているのですか。
 
 A8 少なくとも、下関市立大学の経常費には使われていない、と見ることができます。しかし、経常費以外の臨時費などに向けられている、と見ることも困難です。
 
 地方交付税交付金は、一般財源に充当されるものとして、使途を特定せずに、地方自治体の一般会計に繰り入れられます。地方交付税法第三条の2には、「国は、交付税の交付に当っては、地方自治の本旨を尊重し、条件をつけ、又はその使途を制限してはならない。」と規定されています。要するに、地方交付税交付金の制度では、国側は公立大学の学生1人あたりいくらという算入をして基準財政需要額を算定しますが、交付金として地方自治体の一般会計に繰り入れられた後は、それをどのように予算化しようと、まったくその地方自治体の考え方次第、というわけなのです。
 
 したがって、上のQ7のように「需要額」の試算をしてみたところで、もし設置者の下関市が大学にお金を回したくないと考えるなら、地方交付税交付金の制度の中では、このような試算はまったく意味を持たないわけです。
 

 
 
 Q9 下関市立大学の財源のために地方交付税交付金をあてにすることは、本当にできない相談なのですか。
 
 A9 もし設置者の下関市が「使途を制限してはならない」ことを根拠に、地方交付税交付金のうちの大学相当分すら下関市立大学に回そうとしないのであれば、それは、地方交付税法の根本精神に応える姿勢とは言えません。
 
 地方交付税法第二条では、基準財政需要額の算定の「単位費用」について、「合理的かつ妥当な水準」において地方行政を行うための経費、または「標準的な施設を維持」するための経費を基準にする、と説明されています。また、第三条では、国は交付税の交付に際して「使途を制限してはならない」と規定されていますが、これに続いて、地方自治体はその行政について「合理的かつ妥当な水準を維持」するように努めなければならない、とも規定されています。地方交付税法のねらいは、「財源の均衡化」によって各地方自治体の行政サービスを「合理的かつ妥当な水準」に維持しようとするところにある、と見ることができます。それゆえ、「地方行政の水準を低下」させていると認められる場合には、交付金を減額したり、返還させたりすることもできるわけです(第二十条の二)
 
 学生1人あたりの経常費が、毎年のように、全国公立大学の中で最低という状況や、教員1人あたりの学生数が、同様に全国公立大学の中で最多のレベルという状況は、地方交付税法でいう「合理的かつ妥当な水準」なのでしょうか。地盤沈下を起こして雨漏りしている体育館が、はたして「標準的な施設」と言えるのでしょうか。これらの点について、設置者の下関市が「合理的かつ妥当な水準」を維持しようと努力しているようには思われません。
 

 
 
 Q10 下関市立大学の教員も下関市役所の職員なのだから、地方交付税交付金の使途について、下関市の行政姿勢をとやかく言うべきではない、という声に対して、どのように反論できますか。
 
 A10 発言するしないは、最終的には個人の問題です。つまり、その人がどういう生き方を選択しているか、ということです。ところで、大学教員も市役所の職員だ、とするこの声の主は、大学というものの特性、および大学の教員の特殊な立場について、正しく理解しているとは言えません。
 
 下関市役所の職員は、法的には、地方公務員法の下で職務を行っています。しかし、下関市立大学の教員は、事情が複雑です。国立学校および公立学校の教員には、教育公務員特例法が適用されます。この法律は、「教育公務員の職務とその責任の特殊性」に基づいて制定されているもので、その中で、公立学校の教員は、「地方公務員としての身分を有する」と規定されているわけです。
 
 したがって、同じ地方公務員であっても、下関市役所の職員と下関市立大学の教員では、いくつかの点でまったく様子が違います。たとえば、任用については、市役所の職員は「受験成績」などに基づいて行われますが、大学の教員は「選考」によって行われ、その選考は教授会の議に基づき学長が行うものとされています。
 
 また、服務に関しても、たとえば、地方公務員法では、職員は特定の地方公共団体の執行機関を支持したり、反対する目的をもって政治的行為をしてはならないことになっています。しかし、教育公務員特例法で、公立学校の教育公務員は、このような地方公務員法の規定にかかわらず、国立学校の教育公務員の例による、とされています(第二十一条の四)。つまり、大学の教員の場合は事情が違うというわけです。
 
 これらの点は、通常「大学の自治」とか「学問の自由」と言われているもののある側面を示している、と見ることができます。