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学長室より

平成28年度下関市立大学卒業証書・学位記授与式告辞(2017年3月25日)

 本日ここに、下関市立大学は442名の学士課程卒業生、及び4名の修士課程修了生を世に送り出すこととなりました。卒業生・修了生の皆さんには、下関市立大学の教職員を代表して心よりお祝いを申し上げます。皆さんは、これまでの4年間ないし2年間の絶え間ない勉学の証として学士・修士の学位を得、これからさらに社会の様々な場面において活躍して行かれる事になります。このような形で次のステップへ踏み出していかれる節目の時に当たり、入学以来これまでの皆さんの研鑽と活動に敬意を表し、心からおめでとうと申し上げる次第です。
 卒業生・修了生を送り出すこの式に際して、改めて思いを馳せることがあります。下関市立大学は1956年に下関商業短期大学として創立され、その後1962年の4年制大学への移行、1983年の国際商学科の開設、2000年の大学院経済学研究科の開設、さらには2011年の公共マネジメント学科の開設を経て、今日の姿に発展してまいりました。本学は、2016年を以って60周年の節目の年を迎えたことになります。その間、本学は19,336名の卒業生を世に送り出してきましたが、本日ここに446名の卒業生・修了生が加わり、合わせて19,782名の卒業生・修了生を輩出したことになります。本学は、我が国の経済社会の発展に必要な人材を世に送り出し、地域や社会、国家の発展に貢献してきたということができます。それと同時に、このように毎年卒業生・修了生の数を積み重ねていくことによって、社会における市大生のネットワークが着実に広がっていっていることを実感し、さらにこの歩みを着実に進めていかなければならないと改めて思う次第であります。
 下関市立大学を巣立つ卒業生・修了生の皆さんが飛び込んでいく現代の社会は、まさに激動の時代を迎えています。世界第二の経済大国に成長した中国がグローバル化や自由貿易を標榜する一方で、長く超大国としての地位を維持してきたアメリカでは保護主義的な考え方が台頭したり、欧州を中心に進んできた統合の動きに対してそこからの離脱決定や分離・独立の気運が高まったり、各地の民族問題や紛争は引き続き頻発しています。世の中が大きく揺れ動き、先の読めない不確実な時代だからこそ、皆さんはこれまでの勉学において蓄積した知識をさらに深め、磨きをかけ、これからの激動の時代を生き抜く知恵と力を身につけていただきたいと思います。とりわけ、これまで培ってきた専門的知識に飽き足らず、異分野の知識を増やしながら皆さんがそれぞれの場面で遭遇する現実の問題に対処していっていただきたいと願う次第であります。
 「卒業」は、決して終わりを意味するものではありません。これから社会に出るということは、そこで何かが始まる、また何かを始めなければならないということを意味します。学位記授与式は英語でCommencementと言いますが、commenceとはまさに何かを始めるということを意味します。その際、一つ頭に入れておいていただきたいことがあります。それは、大学では結果よりもそこに至る過程が大事であると言われてきたのに対し、社会では過程と同時に結果が求められるという意味で、大学時代とは異なる基準で評価される世界に入っていくのだということであります。学生時代は、どのような結果であったかというより、そこに至る過程でどのような考え方をしたか、どのような努力をしたかが大事であると思います。結果は二の次であるとも言えます。どのような結果であろうとその過程でどれだけの時間と労力が払われたか、どのように行動し、判断したかが大切であったと言えるでしょう。しかし、これから皆さんが飛び込んでいく世界は、出てきた結果から逆にそこに至る過程でどのように考え、行動したかが評価されるという厳しい側面を持っていることも肝に命じておくべきだと思います。このことは、何も、結果さえ良ければそれで良いということではありません。そこに至る過程が大事だという考え方には、過程において頑張ってさえいればそれで良いのだという考え方が潜んでいて、自分自身を甘やかしてしまう側面がないとは言えません。しかし、これからの世界はそこに至る過程と同時に得られた結果も大切にしなければならない、その意味で学生時代より厳しい世界なのだということを自覚していただきたいと願う次第であります。もちろん、結果さえ良ければ、そこに至る過程においてどのような手段を使おうとも許されるということではないということも付け加えておきたいと思います。
 もう一点お願いしたいことがあります。それは、皆さんが今日この場で卒業・修了の証書を受け取るにあたり、これまで皆さんを育て、成長を温かく見守ってくださったご両親や、在学時代に皆さん方が接した先生や職員の方々に対する感謝の気持ちを忘れないでいただきたいということであります。今、この証書を受け取る瞬間、皆さんにはこれらお世話になった方々との交わりを静かに思い出していただきたいと思います。ご両親やご家族には経済的支援も含めて大人として自立していく過程を支えてくださったと思いますし、先生方には日頃の授業やゼミでのご指導を含めて知識の習得や考え方を鍛える上で多くのことを学んだと思います。先生方から課された多くの課題や厳しい指導は皆さんの成長を助ける大きな力になったはずであります。また、職員の方々は、皆さんが日頃の勉学や学生生活を送っていく上で必要なきめ細かいサポートをしていただいたことと思います。そうした山ほどある先生や職員の方々との交わりのなかでそうした方々が語ってくれたもののなかから、一つだけでよいので皆さん方のこころに残った言葉を思い出し、それを皆さん方の胸に刻みつけていただきたいと思います。さきに、これから皆さんは答えのない厳しい世界に飛び込んでいくのだと申しましたが、迷った時、悩んだ時には、そこから立ち上がっていくためのよりどころとなる言葉をただ一つだけ皆さん方の胸に刻みつけ、これからの時代を生き抜いてほしいと願っています。
 最後に、誇りある伝統を担う下関市立大学の卒業生としての皆さんのご健闘を祈念しながら、平成28年度下関市立大学卒業証書・学位記授与式の告辞といたします。

平成29年3月25日
下関市立大学
学長 川波 洋一