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学長室より

2019年度下関市立大学春学期卒業証書・学位記授与式告辞(2019年9月30日)

 本日、下関市立大学は、経済学科12名、国際商学科12名、公共マネジメント学科2名、計26名の卒業生を社会に送り出すことができることとなりました。卒業生の皆さんの、これまでの努力と研鑽が実を結び、今日の晴れの日につながったということができます。皆さんは、これから社会に出て存分に活躍できるスタートの地点に立つことができたのですから、学士という学位を得て、責任ある社会人として様々な場面で活躍していくこととなります。私は、本学の学長として、これから人生の次のステージに進んで行かれる皆さんに対し、これまでの頑張りに敬意を表するとともに、輝かしい未来に向かって、雄々しく逞しくそしてしぶとく生き抜いて行ってほしいとの願いと期待を込めて、心からおめでとうと申し上げたいと思います。

 併せて、この卒業という栄冠は、皆さんだけの努力で成し遂げられたものではなく、多くの方々の支えがあって勝ちとられたものだということも忘れないでいただきたいと思います。これまでの大学生生活を物心両面から支えてくださったご両親をはじめご家族、日々の勉学の場で厳しく温かくご指導くださった教員の方々、教務や図書をはじめ学生生活をサポートしてくださった事務スタッフの皆さま、皆さんが関わった地域社会の多くの方々、これらの方々の支援や助言、励ましがあってはじめて可能になったものだということに思いを馳せていただきたいと思う次第であります。

 私は、皆さんの門出にあたり、二つのことをお伝えしたいと思います。
 一つは、新しい世界に飛び込んでいくにあたり、気持ちの持ちようを切り替えてほしいということであります。今この卒業という節目にあたり、高等学校を終え、この大学の門をくぐったときのことを静かに思い起こしてみてください。高等学校は、ある決められた知識の体系があり、それを懸命に吸収することによってひたすら知識の量を増やすことに主眼を置いて勉強してきた時代でありました。そこは、頑張って勉強すれば答えを見つけ出すことができる世界でもありました。受験競争を勝ち抜き、この大学に入った後は、単に知識の量を増やすというだけではなく、如何に情報を集め、どのような方法でそれらを処理し、どのような過程を経て答えを探り出すかが重要でした。そこには、決められた答えなど存在しないこともありました。しかし、この大学生という時代は、どのような結果を出すかということよりも、そこに至る過程でどのような努力をしたか、どのような考え方・行動をしたかということが大切な段階でもありました。そこは、結果よりもそれに至るプロセスが大切な段階であったということができます。しかし、これから皆さんが身を置く世界は、出てきた結果からそこに至るプロセスが逆に評価されるという厳しさを持っています。プロセスにおいて頑張ったならば、結果がどうあっても構わないという世界ではないのです。要は、過程において払ってきた努力に責任を持つことが大事だということであります。卒業というこの時期にあたり、このような気持ちの持ちようの切り替えを行っていただきたいと思う次第です。

 もう一つは、時代を読む力に磨きをかけてほしいということであります。皆さんは、この本州最西端にある下関という「点」から地域社会、日本社会さらには世界へと活躍の場を広げていくことになります。これから皆さんが遭遇する現象は、広く、深く、複雑で多様なものであります。現代は、地域社会、日本社会そして世界において、極めて大きな構造転換が行われている時代であります。先の読めない混迷の時代にあって、時代の大きな動きを読み、どのような発想をすれば良いか、常にアンテナを張って情報を集め、考えていくことが必要です。一例をあげましょう。日本および先進主要諸国ではゼロ金利の時代がほぼ20年にわたって続いています。格差や不平等が拡大する一方で膨大な金余りが存在することがゼロ金利の構造的要因であります。そのような時代にあっては、お金を借りることは比較的容易ですが、それをどこにどう投資するかは難しい問題であります。つまり、これまで長く続きこれからも当分続くと思われる低金利の時代にあっては、お金を持っていることの意味が変わってきます。お金を持っていることよりも、どこに将来性のある技術があるか、どこにすばらしいアイデアや発想があるかということ、すなわち知識や技術の方が重要だという時代に変わってきているということであります。先進国、発展途上国という区分けが意味を持たなくなり、アメリカの圧倒的な力が翳りを見せ、インドや中国のような巨大な国が台頭し、統合を目指したヨーロッパに脆さや流動化の動きが見えるなか、人口や経済規模、資金や資源の量だけでなく、知識や発想、情報、技術の力が大きな力を持つ時代が来ているのです。

 皆さんの大学生としての勉学はこれで終了しますが、先に述べた二つの意味で、社会人として生き抜くための知識やアイデアを増やし、鍛えるための勉強は今後ますます重要になって来ていると言えます。本学においてこれまで培ってきた勉学の方法にさらに磨きをかけ、時代を生き抜いていくための実践的勉強をさらに継続して行ってほしいと願う次第であります。

 最後に、社会における皆さんのさらなるご健闘を期待しまた祈念しながら、2019年度下関市立大学春学期卒業証書・学位記授与式の告辞といたします。

 

2019年9月30日
下関市立大学
学長 川波 洋一