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学長室より
2022年度 第61回下関市立大学入学式 学長告辞(2022年4月5日)
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
世界中が新型コロナウイルスのパンデミックで混沌となり、もう3年目になりますが、以前と同じ生活ができるとはいえない日々が続いています。このような中、希望を胸にあきらめず勉学に励んできた皆さんを本学に迎えることができましたことを、嬉しく、同時にとても誇らしく思います。
今年度、本学には学士課程に479名、うち留学生として9名、編入学生として20名、又、大学院修士課程に14名、特別支援教育特別専攻科に3名の新入生を迎えました。私は、全学を代表して、516名の新入生の皆さんのご入学を歓迎いたしますとともに、新入生のご家族をはじめ皆さんのご入学を応援し支えて来られた方たちにも、心からお祝いを申し上げます。
ここに、第61回下関市立大学入学式を下関市長・前田 晋太郎 様にご臨席を賜り、皆さんとともに迎えられましたこと、これに勝る喜びはありません。
さて、新入生の皆さんは、これからの新しい時代を生きるための力を求めて、本学に入学されたことでしょう。そこで、私からは皆さんへのお祝いと、期待を込めて3つの話を贈りたいと思います。
一つ目、“大学4年間で自分自身をブランディングしましょう”。
正解のない社会だからこそ、自分の主体性を軸に他者と区別できる自分だけの価値、つまり社会を生き抜くための自分だけの「ブランド」を、本学での4年間で見つけ出してほしいと思います。自分をブランディングするということは、自分を信頼して、愛して、そして守ることです。これから自分自身をどのように「ブランディング」していくかを考えながら過ごすことで、皆さんの大学生活がより有意義なものとなることを望みます。
二つ目、“情報に乗ってやってくる人の欲望から自分を守りましょう”。
フランスの哲学者であるジャック・ラカンによると、人は“人の欲望”を欲望するものだそうです。あらゆる情報が氾濫している超情報化社会において、皆さんのようなSNSに慣れている世代は特に知らず知らず多くの情報にさらされ、本人の自覚のあるなしに関わらずいつの時代よりも“人の欲望”に左右されやすい存在となっています。YouTubeやInstagram、TIKTOKなど、自分の欲望を実現したような見せかけの現実にアクセスすることがとても簡単になりました。今、情報を正しく理解し、かつ正しく使いこなすことで、自分を守る力を持ってほしいと思います。
三つ目、“生きる力の土台になる社会情緒的スキルを伸ばしましょう”。
2013年に発表されたオクスフォード大学の報告書「未来の雇用」では、未来には今ある職業のうち47%が無くなると言われています。今ある職業が減る一方であるのに対して、人生100時代を生きていかなければなりません。今、人間には個々の生存能力、つまり生きる力が問われています。生存能力の高さは知識や技能だけで決まるものではなく、そのすべての土台になる重要な能力に、OECDが掲げる「社会情緒的スキル」と呼ばれる力があります。世界の先進的な教育機関ではすでにプログラムが導入されており、本学でも、皆さんの社会情緒的スキルを育成するためのカリキュラムを提供します。
最後になりますが、下関市は、地形的な特長から自然や文化の多様性に溢れ、また、ここに集う学生たちも日本全国から多様な考えを持ち寄り、学び合いながらその知見を広げています。歴史的には、この下関市に1956年下関商業短期大学を開学し、1962年に下関市立大学となってからはちょうど60年が経ちました。そして、『還暦』を迎える本学は、多様性を力に新しい時代を見据えて、今一度大きく生まれ変わろうとしています。今までのやり方が通用しない、不安定な社会が待ち受けていますが、本学は常に未来を見つめて学びを求めるみなさんのために絶えずチャレンジしていきます。
以上をもって、2022年度下関市立大学入学式の告辞といたします。
2022年4月5日
下関市立大学
学長 韓 昌完