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下関市立大学
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#プレスリリース【研究成果】本学教員の論文が国際ジャーナルに掲載されました ― 動画の「見たい!」を引き出す感情とは?日本とシンガポールの比較分析 ―
この度、本学データサイエンス学部の白濵成希教授の論文が、計算知能と知能情報学に関する国際ジャーナル『Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics』に掲載されました。
本研究は、多くの人々が日常的に利用する動画配信サービスに着目し、AI技術を用いてプロモーションビデオ(PV)に対する視聴者の感情がどのように視聴意図に結びつくのかを分析したものです。特に、日本とシンガポールの視聴者を比較することで、文化的な背景が感情の受け止め方に与える影響を明らかにしました。
研究のポイント
1. AIによる視聴者のタイプ分類
AI技術の一つであるファジィc-meansクラスタリングを用いて、PVに対する視聴者の複雑な感情反応を分析しました。その結果、視聴者は「高評価」「中評価」「混合評価」「低評価」という特徴の異なる4つのグループに分類できることが分かりました。この分析により、どのような感情を持つ人が視聴につながりやすいかを特定できます。
2. 視聴意欲の鍵は「喜び」と「興奮」
統計分析の結果、視聴者が感じる「喜び(Joy)」と「興奮(Excitement)」という2つのポジティブな感情が、その後の「見たい」という意欲に極めて強く影響していることが明らかになりました。特に「喜び」の影響は大きく、これらの感情が視聴意図の変動の約54%を説明できることが示されました。
3. 感情の受け止め方に文化差を発見
日本の学生71名とシンガポールの学生27名の回答を比較したところ、感情の反応に文化的な違いが見られました。特に「喜び」の項目では、シンガポールの学生の方が日本の学生よりも統計的に有意に高い評価を示し (p < 0.05)、文化背景を考慮したプロモーションの重要性が示唆されました。
4. 研究の意義と今後の展望
本研究の成果は、より効果的な動画プロモーション戦略を立てるための実践的な示唆を与えます。例えば、ターゲットとする国や文化圏に合わせて「喜び」や「興奮」といった感情を戦略的に引き出す映像を制作することで、視聴意欲を最大化できる可能性があります。
今後は、より多様な国や年齢層、ジャンルの動画で調査を行い、さらに汎用性の高い知見を得ることを目指します。本学では、データサイエンスの力で人間社会の様々な課題を解決する研究を、今後も推進してまいります。
著者からのコメント
「YouTubeやNetflixなど、今や動画コンテンツは私たちの生活に欠かせないものとなっています。その中で、制作者が届けたい作品の魅力が、どうすれば視聴者に響くのか。そのメカニズムをデータサイエンスの力で解明したいという思いから、この研究はスタートしました。今回の成果が、国境を越えて人々の心を動かすコンテンツ制作の一助となれば幸いです。本論文は誰でも無料で閲覧できますので、ぜひご覧ください。」
論文情報
- 論文タイトル: An Analysis of Viewing Intentions for Promotional Videos Using Fuzzy c-Means Clustering: A Comparative Study Between Japan and Singapore
(和訳:ファジィc-meansクラスタリングを用いたプロモーションビデオの視聴意図の分析:日本とシンガポールの比較研究) - 著者: Naruki Shirahama, Naofumi Nakaya, Kenji Moriya, Kazuhiro Koshi, Keiji Matsumoto, and Satoshi Watanabe
- 掲載誌: Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics, Vol. 29, No.4, pp.847-856
- 発行日: 2025年7月20日
- DOI (論文へのリンク): https://doi.org/10.20965/jaciii.2025.p0847
本論文が掲載された『JACIII』は、AI・計算知能分野の国際的な英文学術誌で、世界最大級の抄録・引用文献データベース「Scopus」にも収録されています。また、学術誌の影響度を示す指標の一つであるジャーナルインパクトファクターは0.8(2024年)と評価されています。本論文はオープンアクセス(CC BY-ND 4.0)で公開されており、どなたでも無料で全文をお読みいただけます。
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経営企画部広報ブランド戦略課
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