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下関市立大学

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お知らせ

#研究

【研究成果】本学教員が国際学術会議で最優秀論文賞を受賞しました!

AIの「心の個性」を解明!36種類のAIの感情理解能力を科学的に比較

この度、本学データサイエンス学部の白濵教授が、2025年10月15日から17日にかけて台湾・台中市で開催されたThe 21st International Conference on Intelligent Information Hiding and Multimedia Signal Processing (IIHMSP 2025)において、「Best Paper Award」(最優秀論文賞)を受賞しました。この受賞は、世界をリードする7社36種類のAIモデルの「感情理解の個性」を大規模かつ統一的な手法で科学的に解明した画期的な研究が高く評価されたものです。

なお、本研究は特別セッション「AI-Enhanced QoL, Economics, Affective Computing and Modern Technology」における発表であり、会議全体の採択率約60%(投稿143件中86件採択)の中から、特別セッション内の最優秀論文として選出されました。

❓ なぜこの研究が必要だったの?

ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)は、私たちの生活に急速に浸透していますが、「どのAIが人間の感情をより正確に理解できるのか?」という疑問は、まだ十分に解明されていませんでした。

これまでの研究では、特定のAIモデルを個別に評価することが主流で、異なる会社が提供する複数のAIを同じ基準で公平に比較することが困難でした。その理由は、各社のAPIの仕様が異なり、統一的な評価が技術的に難しかったからです。

さらに、AIに「大学生」「詩人」「研究者」といった異なる「人格(ペルソナ)」を与えた場合、感情の評価がどう変化するのかも未解明でした。

白濵教授らは、これらの課題を解決するため、異なる会社のAIを同じ土俵で公平に比較できる標準化された実験基盤を開発し、大規模のAI感情理解能力の比較研究を実施しました。

💡 どのように研究を進めたの?

この研究では、世界をリードする7社(OpenAI, Google, Anthropic, xAI, DeepSeek, Meta, Alibaba)のAIモデル36種類を対象に、大規模な比較実験を実施しました。

実験では、AIに日本の文学作品(夢野久作の「お金とピストル」、高村光太郎の「ぼろぼろな駝鳥」など)を読ませ、「面白さ」「驚き」「悲しみ」「怒り」の4つの感情をどの程度感じるかを100点満点で評価させました。

さらに、「大学生」「文芸研究者」「詩人」「ロボット」という4つの異なる「人格(ペルソナ)」をAIに与え、それぞれの視点から感情を分析させるという、ユニークな手法も取り入れました。

この大規模実験により収集された4,067件のデータポイントを、二元配置分散分析(ANOVA)やクラスカル・ウォリス検定などの厳密な統計手法で分析しました。

🔍 驚きの発見!

この大規模な実験から、以下の重要な事実が科学的に実証されました。

1. AIにも「感情的個性」がある!

統計的検証により、AIの開発会社(ベンダー)ごとに、感情の評価傾向が大きく異なることが明らかになりました(全ての感情次元でp < 0.05)。

さらに興味深いことに、一部のモデルは「固定的個性」を持ち、どんなペルソナを与えられても評価があまり変わりませんでした。一方、他のモデルは「ペルソナカメレオン」として、与えられた人格に応じて柔軟に評価を変化させることがわかりました。

2. テキストの内容が感情評価を大きく左右する!

統計的エビデンスとして(全てp < 0.001)により、テキストの内容が感情評価の50%以上の変動を説明することが実証されました。

これは、多くのAIモデルが、文学作品の微妙な感情的ニュアンスを捉え、適切に反映できることを示しています。たとえば、興味深い「お金とピストル」と、哀愁を帯びた「ぼろぼろな駝鳥」では、AIの評価が明確に異なりました。

3. 信頼性の高いAI、発展途上のAI

今回の実験では、Anthropic社、xAI社、DeepSeek社のモデルが、一度も評価に失敗することなく完璧な信頼性を示しました。一方で、一部のモデルは数値評価を返せず、まだ発展途上の部分があることも判明しました。

これは、ビジネスやサービスでAIを活用する際に、どのモデルを選択すべきかの重要な指標となります。

🌍 この研究の社会的意義と未来

この研究で実証された知見は、感情に敏感なAIアプリケーションを開発する際のモデル選択に実践的なガイドラインを提供します。
将来的には、この成果を応用して、以下のようなサービスの開発に繋がっていくことが期待されます。

また、本学の学生は、このような最先端の研究に触れ、次世代のAI技術を自ら創造する力を身につけることができます。データサイエンス学部では、単なる技術の習得にとどまらず、AIと人間のより良い共生を実現するための研究に取り組んでいます。

👤 白濵教授からのコメント

「この度、このような素晴らしい賞をいただき、大変光栄に思います。今回の研究は、AIが単なる道具ではなく、人間の感情を理解し、より豊かなコミュニケーションを可能にするパートナーになるための重要な一歩です。
特に、36種類ものAIモデルを統一的な基準で比較評価できたことは、これまでの研究では困難だった課題を克服できたという点で、大きな意義があると考えています。各AIが持つ『感情的個性』を科学的に明らかにすることで、用途に応じた最適なAI選択が可能になります。
研究を支えてくれた共著者の中谷先生、渡邉先生、そして日々探求心を持って学び続ける学生たちに心から感謝します。データサイエンスは、AIの力を社会の未来のためにどう活かすかを考える学問です。この研究成果が、未来のデータサイエンティストを目指す皆さんの心に響き、本学での学びのきっかけになれば幸いです。」

📄 論文情報

Click here for the English version.



【お問合せ先】
公立大学法人下関市立大学
経営企画部広報ブランド戦略課
TEL. 083-253-8967